作品タイトル不明
933話 しばしの休憩
魔族の問題は解決した。
残りは、ラインハルトだ。
ただ、彼は姿を消したまま。
どこにいるのか?
なにをしようとしているのか?
その辺りはさっぱりだ。
今、全力で情報収集に励んでいる。
国に動いてもらうだけじゃなくて……
エーデルワイスにも協力してもらい、魔族にも動いてもらっている。
それだけじゃない。
スズさん、ミルアさん、アルさん、レゾナさん、エルフィンさん。
他の最強種にも協力をしてもらい、文字通り、世界各地を調べてもらっている。
これだけの人達に協力してもらっているんだ。
そう遠くないうちに、なにかしらの情報を得ることができるだろう。
それまでの間、俺達がやるべきことは……
――――――――――
「にゃーん」
かなり久々のホライズンの我が家。
カナデが庭に作られたベンチに寝て、尻尾をゆらゆらさせていた。
その隣に、クウとコウ。
同じく体を丸くして、ぽかぽか陽気に日向ぼっこをしている。
「はぁ……お茶が美味しいです」
コハネが縁側に座り、緑茶を飲んでいた。
俺も、その隣でのんびりしているのだけど……
「……なんか、落ち着かないな」
「こうして、のんびりしていることが、でございますか?」
「みんな、あれこれ動いてくれているのに……」
「今、わたくし達にできることは大してありません。なればこそ、今は英気を養い、最後の戦いに向けて備えましょう」
「最後の戦い……か」
ラインハルトの脅威がなくなれば、この世界から争いは消える。
小さな戦いは残るだろうけど、戦争などは起きなくなるはずだ。
だから、最後の戦い。
そう思うと、緊張を避けられず……
でも、そんな状態では万全を迎えることは難しく……
「なんか、色々と難しいな」
「先の戦いの疲れも残っています。今は、おとなしくしていましょう」
「……そうだな」
オンとオフはしっかりと切り替えていこう。
そして、ラインハルトと対峙する時は……ありったけの力を、全てをぶつけていこう。
「ところで、主さま」
「うん?」
「こちらの『よーかん』なる甘味、とても美味しいですね」
コハネはにっこり笑顔で羊羹を頬張る。
幸せそうな笑顔がさらに幸せそうに。
「それ、この前、アクスからもらったんだ」
「アクスさま……確か、主さまと同じ冒険者で、幾度か共に戦ったことがあると」
「羊羹はカグネの名産らしいけど、この前、武器の調整で立ち寄ることがあったからついでに……って、もらったんだ」
「では、アクスさまに感謝しなければなりませんね。あむ」
もう一口。
コハネは足をぱたぱたさせた。
賢くて、思慮深くて。
いつも落ち着いているコハネだけど、たまに、こうして子供っぽいところを見せる。
そのギャップを可愛く思うと同時に、嬉しく思う。
こういう姿を見せるのは俺にだけだ。
他の人に見せることはない。
それは信頼の証。
うん。
その信頼に応えられるように、主として精進していかないとな。
「あ」
ふと、なにか大事なことに気づいた様子でコハネが声をあげた。
「申しわけありません、わたくしばかり……」
「いや、俺は気にしていないけど」
「いいえ、そういうわけにはまいりません。ささ、主さまもどうぞ。あーん」
「え」
「あーん、です」
コハネが羊羹を差し出してきた。
そんなことをしなくても、自分で食べられるのだけど……
でも、ここで断れば、コハネのことだから気にしてしまいそうで……
「あ……あーん」
「はい」
恥ずかしさを我慢しつつ、羊羹を食べさせてもらう。
「いかがですか?」
「……美味しいよ」
嘘だった。
恥ずかしさで味はよくわからない。
ただ、
「……のんびりするって、大事だよな」
この心地いい時間を大事にしたい。
いつまでも、ずっと。
だから……
がんばろう。