軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

925話 手と手を

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

疲労困憊で、肩で息をしていた。

体力も魔力も、ほぼほぼ空っぽ。

立っているだけでも辛い。

ついでにいうと、あちらこちらに傷を負っていた。

小さな怪我なのか大きな怪我なのか、もう、よくわからない。

体を動かす度に痛みが走る。

それでも、今は止まることはできないと、無理矢理動かしていた。

現状を言葉で示すのなら、壊滅寸前、なんてものが正しい。

ただ、それは俺だけじゃない。

「ぐっ……くぅ、このような、ことが……」

エーデルワイスもまた、満身創痍の状態だった。

意識は繋ぎ止めているものの、そこが限界。

これ以上の戦闘は難しい様子で、荒い吐息をこぼしていた。

それと、もう立ち上がることができないらしい。

玉座に寄りかかり、倒れないようにするのが精一杯。

俺を含めて、みんな、戦闘継続は難しい。

しかし、エーデルワイスもまた、ほぼほぼ戦闘不能の状態に陥っていた。

体力も魔力も使い果たして。

気力も薄れている。

「私は……ここまで、なのか……? 今回もまた、失敗してしまうのか……?」

ここまで追い詰められたことで、エーデルワイスは悔しそうに奥歯を噛む。

ただ、戦意は衰えていない。

「だが……私は、不滅だ。次代が、必ずや魔族の悲願を成し遂げて……」

「……それは、本当に悲願なのか?」

「なに……?」

重い体を引きずるようにして、そんな彼女のところまで歩み寄り……そして、手を差し出した。

「ここから始めよう」

「……なんのつもりだ?」

差し出された手を見て、エーデルワイスは俺を睨む。

「哀れみのつもりか? 勝者は貴様達だ……私は、魔王。なればこそ、潔く散ろう」

「違うよ」

「なに?」

即座に彼女の言葉を否定すると、とても怪訝そうな顔をされた。

ちょっと前に、アルガス王と話をした時のことを思いだした。

あまり人の話を聞いていなくて……

人間も魔族も、こういうところは変わらないんだな、って思う。

「俺達は……俺は、キミを滅ぼすために戦っていたわけじゃない」

「……は?」

エーデルワイスが目を丸くした。

魔王の威厳なんて欠片もない、とても間の抜けた表情だ。

でも、その方がいいと思う。

まだ俺達と同じくらいの歳で……

それなのに、憎しみだけしか知らなくて……

そんなのは理不尽じゃないか。

もっともっと色々なことを知ってほしい。

そして、たくさんの顔を見せてほしい。

『魔王』っていう存在をどうにかしないといけない。

そんな当初の目的を忘れたわけじゃないんだけど……

ただ、それとは別に、エーデルワイスのことをもっと知りたいと思った。

友達になりたいと思った。

「俺は、これ以上の犠牲を……理不尽なことをなくしたいんだ。人間だけじゃなくて、魔族についても」

「戯言を」

「ああ。そう思われても仕方ない。でも、本気なんだ」

「……」

「もちろん、それを達成するために超えないといけない壁はとても大きい。簡単に成し遂げられるものじゃない。色々な問題があるけど……一番の問題は、『魔王』という存在だ」

「……その通りだ。積み重ね続けられてきた恨み、憎しみ、悲しみ……それらを消すことはできぬ。忘れることも望んでいない。私は……私達は、突き進まなければならないのだ」

「永遠に?」

「人間を滅ぼせば終わる」

「それは本当に?」

「……」

エーデルワイスは迷うように沈黙した。

全力で戦い。

想いをぶつけ合い。

そんな中で、彼女もうっすらと感じたのだろう。

自分の中にある魂を通じて、思ったのだろう。

これは本当にやらなければいけないことなのか? ……と。

復讐を否定するつもりはない。

時に必要なこともあると思う。

ただ……

それだけに囚われていたら大事なものを見失ってしまうような気がした。

前に進むのではなくて、横に逸れてしまうような気がした。

生きるために生きるのではなくて。

殺すために生きる。

それは、生物として破綻しているだろう。

「もう終わりにしないか?」