作品タイトル不明
921話 祈りと希望・その2
「そのようなものは……存在しない!」
エーデルワイスを中心に魔力の嵐が吹き荒れた。
ゴゥッ! という轟音。
それと、実体すら伴う魔力。
近づくことすら難しい。
「私は、希望などは認めない。そのようなものが存在するのならば、なぜ、私達は殺されなければならなかった? 認めない、認められない」
「そのことに関しては、もう、頭を下げること以外はできないけど……でも、これからを考えることはできるはずだ! なくした未来を取り返すことができる!」
「それは、お前達、人間から奪う!」
「それがキミの想いなら、俺は、何度でも受け止めてみせる。でも、魔族の総意じゃないはずだ。魔族の全てが人間を滅ぼそうとしているわけじゃない、それをわかってくれ!」
「人間を滅ぼすことこそが魔族の使命なのだ!!!」
エーデルワイスが再び魔法を唱えた。
おそらく、絶級魔法。
しかも、無詠唱。
デタラメすぎる力だ。
最強種という枠を超えている。
力だけで判断するのなら、神様に一番近いところにいるかもしれない。
それだけの力をエーデルワイスが持つ理由は、ただ一つ。
憎悪だ。
今まで理不尽に殺されて、居場所を奪われてきた魔族達の憎悪。
それを背負い、己のものとして、使命と化すことで力を得ている。
それが……魔王だ。
でも。
「負けて、られるかっ!!!」
「なっ……!?」
クサナギを使い、再び絶級魔法を斬り裂いてみせた。
一度なら奇跡、偶然と言えたかもしれない。
でも、ニ度同じことが起きたのなら、それは必然だ。
「バカな……私の力が通用しない、だと?」
「通用はしているさ。ただ、俺達が追いついただけだ」
ここにいるみんなだけじゃない。
外で今も戦っているであろう人間と魔族。
みんなの想いを感じる。
魔王が憎悪を糧とするのなら。
俺は、希望と祈りを糧にする。
それを光にして、魔王に示す。
「なんだ、この力は……? 私は知らぬ、知らぬぞ……!? あるわけがないというのに……なぜなのだ!?」
「希望、っていうんだよ」
「そのようなもの……」
「知らないなら知ればいい、信じられないなら信じればいい」
前に出た。
「これから、いくらでも見せてやる!」
離れていてもみんなの想いを感じる。
穏やかな日々を望む、温かい心を感じる。
人間はどうしようもない存在かもしれない。
世界も優しくはないのかもしれない。
それでも。
意味はないと、切り捨ててしまうのは早い。
まだまだ知らないことがあるはずだ。
その中に、温かいものが残されているはずだ。
それを、この戦いで証明してみせる。
「認めるわけには……いかぬ!」
エーデルワイスは膨大な魔力を身にまとい、超級魔法をばらまいた。
炎が、風が、土が、雷が……
ありとあらゆる種類の攻撃魔法が吹き荒れて、まともに近づくことができない。
「そのようなものを認めたのなら、私の存在意義は……なんだというのだ!? 私は、全ての魔族の想いを背負い、この場にいる。恨みを晴らすために、愚かな人間を駆逐するために……それこそが私の使命だ!」
「そんな使命なんて、それこそ俺は認めない!」
「なに……?」
吹き荒れる魔法の中、無理をして前に出た。
普通に考えて、魔法に飲み込まれておしまい、なのだけど……
「「レインっ!!」」
「私達がいるからね!」
「やっちゃえ」
みんなの援護のおかげで、俺は倒れることなく、前に進むことができた。
「殺すために存在しているなんて、そんなもの、使命なものか! 呪いだ!」
「貴様……我らが魔族の想いを呪いと言うか? 虐げられて、踏みにじられて、理不尽に殺されてきた我らの悲しみと嘆きを侮辱するか!?」
「それだけじゃないだろう!? 辛いことばかりじゃなかったはずだろう!?」
「……っ……」
一瞬だけど、エーデルワイスの表情が歪んだ。