軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

919話 転換点

「これで終わりだ」

エーデルワイスが右手を上に掲げた。

その先に膨大な魔力が集まる。

それを見るだけで心がへし折られてしまいそうなほど、圧倒的で、恐ろしく、震えが止まらない。

彼女が唱えようとしている魔法は、絶級魔法だ。

一度、アルさんが唱えたところを見た。

全てを破壊して、塵と化して、全てを無に帰す。

今回は、それ以上の威力を秘めているだろう。

あれを撃たせてはいけない。

そう思うものの、吹き荒れる魔力の奔流に近づくことができず、どうすればいいかわからない。

「こんなところで……!」

でも、諦めるわけにはいかない。

ここに来るまで、たくさんの人に助けてもらった。

たくさんの人に信じてもらうことができた。

ならば俺は、最後の最後まで、自分の信じた道を歩いて……絶対に成し遂げる義務がある!

「私達は……」

「絶対に諦めないよ!」

カナデとシフォンが強く叫ぶ。

それは、ここにいるみんなの気持ちを代弁したものだ。

みんなが思っている。

ラインハルトだって思っている。

魔王を止めて、この戦争を終わらせる。

理想論だとしても。

夢物語だとしても。

平和を望む心は、誰もが持っているのだから。

だから……

「終わりになんて、してやるものか!」

ふと、力が湧いてきた。

体が熱くなり、全身に魔力がみなぎる。

疲れ果てていた体が癒やされて、また、前を向いて歩く力を得る。

「これは……」

体が淡く輝いていた。

よく見てみると、魔王の魔力を遮断するための護符が光を放っていることに気がついた。

俺は魔王の影響を受けることはないけれど……

みんなの魔力を集めるため、収束器の役割を果たすために持っていたのだ。

魔力を送ってほしい、という合図は送っていない。

でも、自然とみんなの力が集まっていた。

それは、とても温かい。

笑顔にあふれたような優しい想い。

誰も彼も平和を祈っていた。

人間も、魔族も。

種族の垣根を超えて、想いが一つになっていた。

「……なんだ、それは?」

初めてエーデルワイスに動揺が見えた。

それはとても小さく、わずかに眉をしかめた程度。

その程度の動揺。

だとしても、鉄壁を誇るエーデルワイスの心に波を立てることができた。

「これは、みんなの祈りだよ」

「祈り……?」

「キミに届けたいものだ」

「……戯言を。散れ」

わずかな間が入ったのは、迷いだろうか?

エーデルワイスは絶級魔法を解き放つ。

以前、アルさんが見せたものと同じものだ。

ただ、威力と規模は桁違い。

光が世界を埋め尽くしていく。

いや……侵食する。

壊して、塗り替えて、喰らい……

全てを無に帰していく。

でも、不思議と恐怖はない。

迷いも動揺もない。

俺はクサナギを鞘に戻して、代わりにカムイを抜いた。

そして、カートリッジに貯めておいた魔力ではなくて、みんなの魔力を……想いを乗せて、解き放つ。

「なっ……」

上から下に振り下ろす、単純な斬撃。

たったそれだけで、エーデルワイスの絶級魔法を切り裂いて、無効化することに成功した。