作品タイトル不明
918話 繋がる輪
「くっ……!?」
王国軍の騎士は、魔族の攻撃を受けて吹き飛ばされてしまう。
幸い、盾で致命傷を避けることはできた。
しかし、完全に体勢を崩してしまったため、次の攻撃を防ぐことはできない。
魔物のように暴れ回る魔族は、騎士の命を終わりにすべく、第二撃を……
「させるか!」
間に入ったのは同じ魔族だ。
ただ、騎士にトドメを刺すのではなくて、逆に味方をしてくれる。
「……怪我はないか?」
「あなたは……はい、ありがとう」
魔族が手を差し出して、騎士がその手を取る。
戦闘開始直後は、混成軍はバラバラに戦っていた。
人間は人間だけで。
魔族は魔族だけで。
互いを攻撃することはないけれど、サポートをすることもない。
ただ一緒にいるだけだ。
しかし、時間が経つにつれて変化が起きた。
一緒にいるだけではなくて、互いを気にするようになり。
援護をして、死角をカバーして。
かばい、かばわれ。
長年過ごした戦友のように戦うことができていた。
なにも打ち合わせはしていない。
一緒に戦うことになったものの、細かい戦術はぶっつけ本番だ。
それでも。
人間が魔族を想い。
魔族が人間を想い。
互いが互いのことを気にして、守り守られて……
力を合わせて戦いに挑むようになっていた。
「はぁあああああっ!」
その先頭に立ち、手本を示しているのはユウキ達、王族だ。
ユウキは双剣を手に敵陣に切り込んで。
ココロは魔法で後方から攻撃を撃ち。
サーリャは的確な指示を飛ばして……
それに合わせるように、穏健派の魔族達が行動をする。
足並みを揃えて戦い。
支え、支えられて、前に突き進んでいく。
彼らは出会ったばかりだ。
細かい作戦を立てている時間はないし、話をして親睦を深めることもできていない。
ただ、心を通わせているかのように、息をぴったりと合わせていた。
どうして、そのようなことができるのか?
答えは一つ。
彼らの心の根底にある想いが同じだから。
ただただ、平和が欲しい。
笑い合い、穏やかな時間を過ごしたい。
それだけを望んでいて……
その想いが共通しているからこそ、成し遂げられた奇跡と言えた。
人間も、魔族も。
争いなんて求めていない。
平穏で、笑顔があふれて……
幸せが続いていくような、明るい時間だけを求めている。
そのことを心の底で感じ取っているからこそ、人間も魔族も心を一つにして行動することができた。
出会ったばかりだとしても、背中を預けて、戦うことができた。
もう争いなんて必要ない。
憎しみなんていらない。
求めるものは平和と笑顔だけ。
夢みたいな理想論だ。
子供じみた発想だ。
しかし、それを本気で……
心の底から成し遂げようとした者がいた。
なんて言われようと。
愚か者と、現実を見ていないと、なにもわかっていないと。
そう蔑まれても、諦めず、ひたすらに自分の信じる道を突き進んできた者がいた。
誰も彼も、その者の心に惹かれていた。
憧れていた。
そして、協力するようになっていた。
彼の歩いてきた道は無駄ではない。
その生き様が証明していたのだ。
これこそが真に正しい道であることを。
どれだけの困難があろうと。
夢物語と言われようと。
それでも、達成することができたのならば、真の平和が訪れるだろうと、そう信じることができたのだ。
だからこそ、人間も魔族も戦う。
前を向いて。
未来を信じて、一生懸命に突き進んでいくことができるのだ。