軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

913話 終わりを祈る者・その5

カナデ達は全力で動いた。

風のように……いや。

そのスピードは光のごとく。

覚醒状態で全力の疾走は、あまりにも速い。

まったく視認することができず、エーデルワイスの目の前に転移したかのように見えた。

カナデとミツキとライハが突撃。

ニーナとイリスとオフィーリアが後方で援護をしようとするが……

「甘いな」

突如、エーデルワイスが放つプレッシャーが何倍にも増した。

血のような赤いオーラを纏い、それを一気に放つ。

それは、彼女にとって攻撃ではない。

ただの準備運動のようなもの。

隠していた力を引っ張り出した際の余波。

……それだけで、カナデとミツキとライハが吹き飛ばされた。

「うにゃ!?」

「んー!」

即座にニーナが三人を安全な場所に転移させた。

ナイスフォロー。

「なんだ、こいつ……いきなり力が……」

ミツキは足を止めて、尻尾をへにゃりと垂れ下げていた。

暴れることが大好きで怖いものなし。

そんな彼女が、エーデルワイスを前に怯えていた。

「お前達が覚醒という切り札を隠していたように、私も、まだ本気を出していない。それだけの話だ」

「なっ……」

「今は、半分くらいだ。耐えてみせろ?」

エーデルワイスは一歩ずつ、ゆっくりと前に踏み出した。

視認できないような速度で動いているわけではない。

なにか特別な攻撃をしているわけでもない。

それなのに、大気が震えているかのような圧を感じた。

大地に足が縫い付けられたかのように、全身が重い。

「くっ……オフィーリア姉様!」

「ええ。打ち砕け、輝きの円環」

イリスとオフィーリアが同時に攻撃魔法を放つ。

天族の覚醒。

その状態で放つ、最大火力の魔法。

世界が白に塗り替えられるほどの閃光。

それと同時に、大気を震わせるほどの衝撃。

これならば、と誰もが期待しただろう。

いくら魔王だとしても無傷ではいられない。

今の一撃で倒すことはできないとしても、それなりのダメージを与えることができたはず。

そう思っていたのだけど……

「児戯だな」

光が晴れて、無傷のエーデルワイスが姿を見せた。

さすがに直撃は避けたらしい。

片手を前にして、防いだ跡が見える。

でも……

「今のを……防ぎますの!?」

「対象の脅威度判定を更新。誤差、大幅に修正します」

イリスは元より、常に冷静沈着なオフィーリアも焦りを覚えている様子だ。

みんなも唖然としている。

それはそうだ。

最強種の中でも特に優れた力を持つ天族。

その二人の覚醒状態による攻撃がまるで意味を成していないなんて、誰が想像できるだろうか?

「落ち着け」

ラインハルトの静かな声が響いた。

「ヤツの力は想定内だ。この程度で驚く必要はない」

「……これで想定内なのか?」

「むしろ、この程度で驚いていたら、先は保たないぞ。かつての戦争の話を忘れたわけではないだろう?」

そういえばそうだ。

前回の戦争では、人間とたくさんの最強種が協力して……

それと、多くの天族と勇者の犠牲によって、ようやく魔王を討伐することに成功したと聞く。

そんな相手を俺達だけで止めようというのだから、無茶苦茶な話で……

いや、ちょっと待て?

軽く情報を振り返り、そこで違和感を覚えた。

前回の戦争では、多くの天族が犠牲となった。

なら、その前の戦争は?

天族が犠牲になったなんて話は聞いていない。

犠牲にならなければいけないほど魔王が強いなんて知らない。

「力が……増している?」