作品タイトル不明
912話 終わりを祈る者・その4
赤く、紅く、朱く……
紅蓮の炎が舞い上がり、ラインハルトの攻撃をかき消した。
それだけじゃない。
カウンターとして、ラインハルトを飲み込もうと……
「「来たれ、虚空の盾」」
イリスとオフィーリアの魔法が炎を受け止めて、流す。
さらに、ソラとルナ、ミルフィーユがこちらにも防御魔法を遠隔で展開してくれて、脱出の機会を作ってくれた。
感謝だ。
でも……
今は、それよりも気になることがある。
「今の炎……まさか、アルテラの?」
炎を司る四天王アルテラ。
それと酷似した炎をエーデルワイスは操っている。
「正解だ」
エーデルワイスは淡々と言う。
「アルテラの魂も捧げられていた……? それで、あいつの力を使えるように……?」
「それも正解だ。私の中に、アルテラの魂がある。ヤツの想い、憎しみを抱えている。故に、成すべきことは一つ。これらの力で人間を滅ぼす」
エーデルワイスは指先をこちらに向けた。
その指先に、チリッと紫電がまとう。
「みんな、さけ……」
「ナイトメアボルト」
漆黒の雷撃が蛇のようにうねりつつ駆けてきた。
これはアリオスの力か!
でも、その力は何倍も増しているような気がした。
漆黒の雷撃は太く速く、勢いよく俺達に喰らいついてくる。
「みなさま、わたくしの後ろへ」
コハネが前に出て、
「歪曲フィールド、展開」
その呟きに応じるかのように、漆黒の雷撃が、突然、軌道を変えた。
明後日の方向に飛び、そのまま壁に着弾。
爆発と衝撃波を撒き散らすものの、俺達に被害はない。
「今のは……」
「空間を捻じ曲げることによる防御でございます。ただ、エネルギーの消費が激しいため、何度も使えるものではありません」
「今の一発を防いだだけでも上等よ。カナデ、ニーナ、イリス! あたし達が時間を稼ぐから、本気を出しなさい! ラインハルト組も、できるんでしょ!?」
「にゃ!」
タニアの意図を瞬時に察した様子で、カナデは後退。
軽く深呼吸をして心を落ち着けて、深く集中する。
「これでも……食らいなさい!」
タニアがドラゴンブレスを放つ。
ゴゥッ! と大気が震えるほどの強烈な一撃だけど、しかし、エーデルワイスには届かない。
軽く手を払うだけで、全てかき消されてしまう。
「おまけ」
「わ、わたしもっ!」
「わふっ!」
リファが血の弾丸を連射して。
フィーニアが炎の翼を広げて。
サクラが近くに落ちていた石を猛烈な勢いで投げる。
「ちっ」
エーデルワイスはわずかに眉をしかめて、手の平を前に。
動くことはなくて、防御に専念した。
防御をするということは、まともに直撃したら、ある程度のダメージはもらってしまうのだろう。
それならば、まだやりようはある。
防げないほどの圧倒的な火力を叩き込む。
シンプルだけど、それ故に防ぎようがないはずだ。
無数の魂を吸収して、その力を己のものとしていたとしても、いけるはず。
「うー……にゃんっ!」
「んっ」
「ふふっ」
「やるっす!」
カナデの全身が輝いて、ニーナが大人の姿になり、イリスが光で編まれた大きな羽を背中につけて、ライハが雷をまとう。
覚醒だ。
「これ、疲れるんだけど」
「出し惜しみはなしですよ」
ミツキとオフィーリアも覚醒状態に移行していた。
カナデやイリス……それと同じ、いや、それ以上の力を感じる。
アリエイルとモナはそのままだけど、たぶん、力を温存しているのだろう。
一気に押し切りたいところだけど、エーデルワイスの手の内がまだわからない。
いざという時のために、全てを出すような真似はしない、というところか。
「ふむ、覚醒か。少し厄介だな」
エーデルワイスに動揺の色はない。
珍しいものを見た、という感じだ。
「ふふーん、こうなったらあなたも終わりだよ! 私がおしおきしてあげるんだから!」
「あんた、覚醒した途端、強気になるのやめなさいよ。小物みたいよ」
「にゃ!?」
タニアのツッコミに、カナデが「マジで!?」という顔になっていた。
「よーし、みんな、いくよ!」
カナデ達は息を合わせて、同時に攻撃を……
「ならば、私も、もう少し本気になるとしよう」