作品タイトル不明
911話 終わりを祈る者・その3
「魔法は私が開発したものだからな。開発者故に、誰よりも詳しく、誰よりも精密に扱う自信がある」
一瞬、驚きで思考が停止してしまう。
エーデルワイスが魔法を開発した……?
「嘘ですね。そんな話、聞いたことがありません」
「うむ。魔法は、我ら精霊族が人間に伝えたものなのだ。その手柄を横取りされては困るのだ」
「ならば、その精霊族は誰から魔法を教わった?」
「それは……」
ソラとルナが困惑した表情に。
魔法という技術を精霊族が開発したのではないとしたら?
なら、元となる力はどこから流れてきた?
「私が魔法を開発した。魔族の力を体現したもの、魔を具現化する方法。故に、『魔法』なのだ」
「「……」」
そんなこと知らない。
今、初めて知ったとばかりに、ソラとルナは唖然としてしまう。
……そして、それは大きな隙となる。
「だからこそ、このようなことが可能だ」
イクシオンブラスト、イフリートディザスター、グランドプレッシャー……さきほど、三人が見せた魔法をそっくりそのまま、エーデルワイスが使ってみせた。
暴力の嵐が吹き荒れて、ソラとルナを飲み込もうと……
「させるか!」
「むっ!」
俺とショコラが同時に前に出た。
俺はアイギスを起動して。
ショコラは自慢の大盾を使い、魔法を捌く。
重い。
大海の渦に飲み込まれたかのようで、一瞬でも気を抜くとバラバラになってしまいそうだ。
「さっきから……」
「生意気ね」
ミツキとアリエイルが動いた。
左右から挟み込むようにして、エーデルワイスに突撃。
それぞれ自慢の拳を叩き込む。
迂闊な接近は危ういかもしれないのだけど……
ラインハルトが止めていないから、なにか考えがあるかもしれない。
「……あの二人は」
いや。
ラインハルトはしかめっ面を作っていた。
どうやらミツキとアリエイルの独断らしい。
「リファ!」
「おっけー」
防御から攻撃に切り替えて、ミツキとアリエイルの援護のため、リファと一緒に駆けた。
その隣をラインハルトも走る。
「近接戦が苦手と思ったか? 甘いな」
「なっ……!?」
「こいつ……」
エーデルワイスは両手をそっとかざすだけで、ミツキとアリエイルの突撃を止めてみせた。
たぶん、あの二人は一切手加減をしていない。
ありったけの力を込めているはずだ。
そして、その力はカナデやタニアを上回るかもしれない。
そんな攻撃を、あんなにもあっさりと受け止めてしまうなんて……
「ふぎゃん!?」
「あうっ……」
エーデルワイスは踊るように回転してみせて、その勢いを乗せた蹴りを放つ。
ミツキとアリエイルはまとめて吹き飛ばされて、床の上を転がる。
「最強種といえど、人間に協力するのなら私の敵だ……死ね」
ブゥンという鈍い音。
空間を震わせつつ、エーデルワイスは一振りの剣を右手に持つ。
夜の闇よりも暗く。
果ての大地の底よりも暗く。
柄も刃も、全てが漆黒に染まる剣。
あれはまずい。
どうしようもない嫌な予感と、そして悪寒。
覚悟は決めてきたはずなのに震えが止まらない。
「止めるぞ」
「っ……ああ!」
ラインハルトの声で我に返った。
クサナギを構えて、リファと一緒に突撃する。
ひとまず、後のことは考えない。
ミツキとアリエイルを助けることだけを考えて、エーデルワイスに接近して、二人に振り下ろそうとしていた黒の剣をクサナギで受け止めた。
ギィンッ!
刃と刃が交差する音。
よかった、折れていない。
ただ……重い。
ひたすらに重く、そして、圧がすさまじい。
「やらせないよ」
まずいかもしれない、そう思ったところでリファが駆けつけてきてくれて、血の鎌で支えるのを手伝ってくれた。
一方で、ラインハルトは両手に持つ短剣を構えて、技を放つ。
「起動……三式・ダークネスバイト」
エーデルワイスの攻撃はこちらに集中しているため、ラインハルトの攻撃を防ぐ術はないはずだ。
闇を携えたニ刀がエーデルワイスに迫り……
「だから、甘い」
瞬間、エーデルワイスが全身に炎をまとう。