作品タイトル不明
906話 止められる者なんていない
「うにゃにゃにゃにゃにゃーーー!!!」
「ぶっころす!!!」
カナデとミツキが先陣を切り、迎撃の魔族達を殴り飛ばしていた。
ぽーんぽーんと魔族が空を飛ぶ。
嘘みたいな光景だ。
「おー、さすがカナデーず、頼りなるで」
「なんすか? その、ーず、って」
「かわ、いい」
「ぷぷっ、後でミツキに教えてやりましょう」
場所は、魔王城の裏門の手前。
こちらにも防衛のための魔族が配置されていたが、正門に比べると圧倒的に数が少ない。
みんなの命がけの陽動のおかげだ。
突入チームは、俺達とラインハルト達。
それと……
「あはは……なんか、私達の出番はなさそうだね」
「うむ。楽できていいぞ」
「のんびりいきましょー」
シフォン達、勇者パーティーだ。
計三つのチームで攻める。
できる限りの戦力をこちらに集中させたのだけど……
ラインハルト曰く、まだ足りない、とのこと。
その懸念は正しいだろう。
なにせ、前回の戦争では多数の最強種が味方してくれた。
天族もいた。
でも、今回は……
とはいえ、現状を嘆いてなんていられない。
怯んでもいられない。
今、できることをやるだけだ。
最善の手を打ち、前に突き進んでいく。
「裏門が見えてきたぞ」
ラインハルトの言葉通り、裏門のすぐ近くまでやってくることができた。
正門に比べて防備は薄いが、それでも、たくさんの魔族がいる。
皆、瞳は紅に染まり。
殺意を剥き出しにして、獣のように襲いかかってきた。
「うにゃん!」
「しゃーっ!」
カナデとミツキが獅子奮迅の活躍を見せるものの、敵の数はなかなか減らない。
城の内部から次々と援軍が飛び出してくる。
「にゃー……なんか、一気にやりづらくなったんだけど!?」
「うっとうしいし。こいつら、ぶっころしていい?」
「ごめん。できる限り、殺しはなしで」
魔王の影響で強制的に戦わされている。
魔王の覚醒がなかったとしても、人間を敵視して、喜んで戦う者もいるだろう。
それでも。
命のやり取り……奪うことはしたくない。
これは戦争じゃなくて、互いの未来を掴むための戦いだ。
血で血を洗うような真似をすれば、必ず禍根を残す。
甘いと言われようが。
理想論だと言われようが。
絶対に殺しはなしだ。
とても困難な道だ。
みんなを巻き込むのは申しわけないと思う。
でも、こうすることが本当の平和に繋がると信じている。
理想を成し遂げるために戦うことは無駄ではないはずだ。
絶対に実現させてみせる。
ただ、無策で挑めば大きな被害が出てしまうため……
一応、それを軽減するための対策はある。
「いくでー! 特殊魔球三号ほばっくーん!」
いつものポジション……ニーナの頭の上に乗る人形バージョンのティナは、自分と同じくらいのサイズのボールを勢いよく投げた。
風を切るようにボールが飛んで、カナデとミツキの打撃を受けた魔族に当たる。
瞬間、ボールがぶわっと膨れ上がり、一瞬で数倍ものサイズに。
そして、パーンと弾けて……
「グッ!?」
赤い粘液が飛び散り、魔族に付着。
粘着性の高い液体で、魔族と地面を結びつけて固定。
さらに簡易的な結界が発動して、魔王の影響を遮断すると共に、対象の魔族を強引に眠らせてしまう。
魔王の影響を受けない護符を作り出して……
同時に、この捕縛弾も開発していた。
殺すのではなくて、生かすための兵器開発。
矛盾しているようなコンセプトだけど、そのようなものを開発するのは初めてで……そして、とても楽しいらしく、俺達も魔族も、みんなノリノリで作成に励んでいた。
結果、なんとか戦いに間に合わせることができた。
とはいえ、捕縛弾は無限にあるわけじゃない。
数が限られているため、なるべく節約していかないと。
「止まれ」
「俺に従え」
俺とラインハルトは、ビーストテイマーの力で魔族達の動きを止めて、封じる。
永遠にというわけにはいかないけれど、この戦いの間はおとなしくさせることはできるだろう。
他にも、ソラとルナが魔法で捕縛したり。
リファが血のトラップを作り、ライハが雷で痺れさせたり。
みんなのおかげで、当初の目標を達成しつつ、確実に奥へ進むことができていた。
ほどなくして裏門を守る魔族達、全てを捕らえることに成功。
裏門を完全制圧した。
「まずは一つ、成功かな?」
「油断するな。むしろ、これからが本番だ」
「大丈夫。油断はしていないさ」
ラインハルトが言うように、ここからが本番だ。
挟み撃ちを防ぐために、念の為、ここに結界を構築して……
その後、魔王城内部に突入する。
さらに激しい戦いになるだろう。
想像もできないような事態が待ち受けているかもしれない。
それでも。
「前に進むだけだ」