軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

902話 全ては未来を掴むために

「……レイン・シュラウドか」

陣地の最奥まで強引に移動して。

そして、王……アルガス・ヴァン・ロールリーズと顔を合わせることに成功した。

その隣にユウキとサーリャさまもいて、なぜこんなことを? と混乱した様子だ。

ココロさまもいるが……

こちらは大して驚いていないように見える。

あくまでも冷静だ。

「このような蛮行、魔族側に寝返ったか?」

「蛮行はあなただ」

今更、丁寧に接するつもりはない。

敬意を払うつもりもない。

まっすぐに王を……アルガスを睨みつける。

「俺との約束は? まだ時間があったはずだ」

「魔王が覚醒したのだから、あの約束は無効だ。意味がない」

「行軍速度から考えて、魔王が覚醒する前から軍を動かしていた。そのことがわからないとでも?」

「……そうだな。認めよう」

アルガスは小さなため息と共に……開き直る。

「儂は、最初からお主のことを信じていない。魔族と戦うつもりでいた」

「……っ……」

「軍を整えるまでの時間稼ぎになるだろうと利用した。この答えで満足か?」

満足できるわけがない。

納得できるわけがない。

ただ、アルガスは約束を違えたことに、なにも罪悪感を抱いていない様子だ。

「結局、戦争を繰り返して、次の世代に火種を残して……それが正しいと?」

「思うな」

即答だ。

アルガスは、自分の考えに絶対的な自信を持っている。

「それ以上の解決方法がない。ならば、時間稼ぎにしかすぎないとしても、『魔王』という脅威を取り除くことが最優先だろう? このまま放置すれば、多大な犠牲が生まれてしまう。下手をすれば人類が終わってしまうのだからな」

「なんで、そこで思考停止するんだよ!? 解決方法ならある! 魔王を使役して、希望を示すことで……」

「確実に成功する、と断言できるか?」

「それは……」

断言することはできない。

世の中、絶対なんてものはない。

どこかしらに不確実性を孕んでいるものだ。

「なればこそ、お主の話を受け入れるわけにはいかぬ。絶対に失敗するわけにはいかないのだ」

そう言うアルガスは、強い強い覚悟を持っているようだった。

約束を違えた卑怯者と罵られても。

どれだけ小賢しい手を使おうとも。

なにがなんでも目的を達成する。

そんな意思を感じる。

「儂の行い一つ一つに人類の未来がかかっている。人類の生死の行方が左右される。信じる、などという愚かな行いで全てを託すわけにはいかぬ。絶対、という確かなものが必要なのだよ」

「……その結果が、魔族との戦争だと?」

「その通りだ。時間稼ぎではあるが、しかし、それが有効であることは歴史が証明している。今の今まで人類が生き延びていることが、その証明だ」

「勝てるという保証はないはずだ」

むしろ、負ける可能性が高い。

前回の戦争では、数々の最強種が味方をしていたはずだ。

精霊族、呀狼族、不死鳥族などは味方をしていないが……

その他の種族は味方をしてくれていた。

天族もいた。

でも、今はいない。

どの最強種も味方をしていない。

「人間だけで魔王に勝てると?」

「そのために、国の全ての戦力を動員した。全てだ」

「な……」

騎士だけではない。

おそらく、冒険者を全て駆り出したのだろう。

無茶苦茶だ。

そんなことをしたら街の治安を維持することができない。

今、こうしている間に、ありとあらゆる街で犯罪が起きている可能性が高い。

「正気か!? そんなことをしたら……」

「戦争に勝利したとしても、大きな被害が出るだろうな」

「わかっているのなら!」

「無傷で勝利できるなど、そのような甘いことは考えていない。これは必要な犠牲……いや。犠牲という言葉は、保身にしかすぎないな。儂は、この戦争に勝利するために、いくらかの者を殺すという選択をした」

犠牲という言葉で罪を覆い隠そうとする連中よりは遥かにマシかもしれないが……

これはこれで厄介だ。

繰り返しになるが、開き直りでしかない。

「そんなこと、納得できるとでも……?」

「できないだろうな」

「なら……」

「これは罪だ。儂の決断で戦争を開始して、そして、多数の民を殺すことになる。戦争が終わった後、儂は大罪人として裁かれるだろう。そうすることで、いくらか怒りは鎮まるだろう」

「あんたは……」

問題の解決に自分の身を捧げることも了承しているというのか。

最後は、自分の命を以て償いを果たそうとしているのか。

アルガスは、どこまでも現実的だった。

徹底的な合理主義者だった。

彼の行いは、全て人類のため。

少しでも可能性の高い方に賭けて動いている。

そのために生まれる犠牲はあるが……

最終的に、己を贄とすることで鎮める覚悟もある。

それが正しいかどうか、それは置いておいて。

覚悟だけは立派なもので……

あるわけがないっ!!!

「ふざけるな!」

アルガスの行いと覚悟を見せつけられて、しかし、俺は逆に怒りを覚えた。