作品タイトル不明
887話 災厄の二乗
「打ち砕け、輝きの円環」
オフィーリアは光の槍を生成した。
それを魔物群れの中心に叩き込む。
ゴォッ!!!
大地と大気が震えた。
光の本流が湧き上がり、それが竜のごとく暴れまわる。
魔物の群れの中心がごっそりと消えた。
文字通り、消滅した。
あまりにもあまりな威力に、大して知性を持たない魔物でも怯んでしまい、進軍の手を止めてしまう。
その様子をオフィーリアの隣で見ていたイリスは、ドン引きである。
「オフィーリア姉さま……いきなり最大火力を叩き込むというのは、アリなのでしょうか?」
「人間の間には、先手必勝という言葉があるようですね。なればこその一撃です」
「ちょっと違う気がいたしますが……まあ、よろしいですわ」
イリスも翼を広げて、両手に魔力を集めた。
その顔には笑み。
魔物を相手に大暴れできることが楽しい……わけではない。
姉と慕うオフィーリアと一緒に戦えることが嬉しいのだ。
自然と笑みが作られる。
ただ、それは長く続かない。
おそらく、これは一時の共闘。
魔王の問題を解決したとしても、レインとラインハルトの対立は避けられないだろう。
そうなると、当たり前のようにオフィーリアと戦うことになる。
嫌だ。
とは思うものの、しかし、どうしようもない。
オフィーリアがラインハルトを信じるように、イリスはレインを信じている。
例え姉と戦うことになったとしても……
「あら?」
ふと、妙な音が聞こえてきた。
ひゅるるるるるーーー……という、なにかが飛んでくるような音。
「オフィーリア姉さま、こちらになにか飛んでくるようですが……なんでしょうか?」
「あれは魔物ですね」
くるくると回転した魔物が飛んできた。
そのまま隕石のごとく地面に激突。
ほどなくして、その体は魔石に変わる。
「「……」」
なぜ魔物が飛んできた?
あまりに突然のことに、イリスだけではなくてオフィーリアも困惑してしまう。
魔物が飛んできた方に目を向けると……
「……にゃー!」
「……しゃー!」
なにやら猫の鳴き声のようなものが二つ、聞こえてきた。
そして再び魔物が飛んでくる。
「どうやらミツキの仕業みたいですね」
「カナデさんの仕業でもあるようですわ」
ややあって、
「「はぁ」」
二人は同時にため息をこぼす。
わりと真面目なことを考えていたというのに、そんな空気を読まず、あの二人は好き勝手に暴れて……
いや、まあ。
今は魔物の討伐が最優先なので、それは間違っていないのだけど、とても複雑な気分になるではないか。
イリスはもやもやしたものを胸に抱えて、
「こういう時は、八つ当たりに限りますわ♪」
うふふ、と笑い、魔物達を見た。
笑っているはずなのに笑っていない。
妙に凄みのある笑みを向けられて、魔物達はぎょっと一歩後ずさる。
「わたくしの前に現れたこと、泣いて喜んでくださいな?」