作品タイトル不明
878話 力を束ねて、絆を紡いで
カシオンの提案はシンプルなものだ。
カシオン達が持つ魔力を、一時的に俺に譲渡する。
そうすることで魔力の底上げをして、魔王を使役できるレベルに持っていく……というものだ。
「おーっ、レインのパワーアップ! にゃふー、燃える展開だね」
「カシオンでパワーアップ……確かに萌えますね」
「カナデと姉の間で、考えていることがまるで違うのだ……」
「腐っているね」
リファは、どこでそんな言葉を覚えてきたのだろう?
ぼーっとしているようで、意外とアクティブなんだよな。
「悪くないアイディアですが……」
「でしょう、ジルオールさま!」
「しかし、私達、全ての魔力を譲渡したとしても、成功率は5パーセントくらいでしょうね」
「それは……」
「それと、魔力が枯渇してしまうと、いざという時になにもできません。もしも、グルンヒルドが攻め込まれた場合、無抵抗で降伏することになるでしょうね」
「うぐ」
容赦のない指摘に、カシオンは返す言葉もないようだ。
「……ただ」
ジルオールは、さらに言葉を続ける。
「繰り返しますが、悪くないアイディアです」
「マジですか!?」
「魔力の譲渡は、私は思い浮かびませんでした。シンプルですが、それなりの効果はあるでしょう」
「でしょう! 俺もそう思って……」
「ただ、今指摘した通り、色々と課題はありますが」
「うぐ」
「問題のないように、議論と研究をする必要がありますね。他にも、私達にできることがあるのならば、協力したいと思っています。なにかアイディアがある人は、お願いします」
ジルオールは約束を違えていない。
できる限り、という言葉を、そのまま実行しようとしている。
そのことが嬉しく、疑問でもあった。
「あの……なにか思いついたわけじゃないんですけど、一つ、質問いいですか?」
「はい、なんなりと」
「どうして、そこまで協力してくれるんですか?」
ジルオールは穏健派で、魔王に従い戦争に参加することは望まないこと。
しかし、魔王が覚醒した以上、自力で事態を解決することは不可能。
だから、外部の俺に託すしかない、というのはわかるのだけど……
それにしては、思っていた以上に親身になってくれているような気がした。
裏があるとは考えていないけど……
単純に、なぜ? と思ってしまう。
「そうですね……レインさんだから、でしょうか」
「え?」
「あなたは人間、しかも勇者の資格がある。私達からしたら、これ以上ないほどの敵なのですが……不思議と信じることができる。心を許すことができる」
「……」
「あなたなら、と信じることができるのです。そこに至る経緯は、自分でもよくわからないのですが……本当、不思議な人間です」
ジルオールの視線がライハに向かう。
「普通の最強種だけではなくて、魔族とも親しくなってしまうのですから」
「アニキっすからね!」
「そうですね。その心の力こそ、あるいは希望に……いえ。根拠のない期待にすがるのはやめましょう。それよりも、今、やれるべきことを一つずつ積み重ねていくべきですね」
そう言って、ジルオールは微笑む。
優しくて。
そして、温かい笑みだ。
俺が魔族とも親しくなることができたのは、この笑みのおかげだ。
魔族といえど、人間と変わらない。
本当に、なにも変わらない。
それを知ることができたから、こうして一緒にいることができる。
言葉を交わして、手を取り合い、一緒に困難に立ち向かうことができる。
それだけだ。
「にゃー、他にも、なにかないか考えないとだね!」
「ボクも考えるよ」
「ぼくも!」
「うちも、って言いたいところやけど、あんま期待せんといてな。うち、頭使うんは苦手やねん」
みんなも気合が入っている。
最初あった暗い雰囲気は消えて、なんとかしてやろうじゃないか、という気合が満ち溢れていた。
その後も色々な話し合いが行われて……
これはいけるかも? というような案がいくつか出てきた。
ただ、これだ! というようなものはない。
「決定打に欠けるな……」
「だな。細かいアイディアは出ているが……それだけじゃなくて、もっと確実で、インパクトのある方法が欲しいぜ」
「……はい」
そこで、ニーナがちょこんと挙手をした。
「ほい、ニーナ。なんか思いついたん?」
「ん」
「あわわわ、に、ニーナしゃんが思いついているのに、ワタシはなにも……あうあう、ダメな子でごめんなさい」
「わふー、フィーニアはダメなんかじゃないぞ。よしよし」
「で、ニーナの案っていうのは?」
タニアに促されて、ニーナが小さな口を開く。
「ラインハルト、に……協力、してもらう」