作品タイトル不明
877話 妙案と堅実な案
「「「魔王を使役する!?」」」
みんなに集まってもらい、さきほど思いついたことを話してみた。
当たり前だけど驚かれてしまう。
特に、ジルオールとカシオン。
二人は、「なにを言っているんだこいつは?」というような感じで、目を大きくしていた。
「ソラとルナと話していて思いついたんだ。魔王は、魔族。人間じゃなくて、最強種。だから、使役しようと思えば使役できるはずなんだ」
「そ、それはそうだけど……」
「待ちなさい、カナデ。あのレインよ? 魔王を使役したとしても不思議じゃないわ」
「言われてみると……にゃるほど」
妙な納得のされ方をしていた。
「おいおい、魔王様を使役するとか本気か? んなこと、マジでできるとでも?」
「それはわからない。それに、これ一つに賭けるつもりはないよ。あくまでも一つの案で、思いついたから、みんなの意見を聞きたかったんだ」
「ふむ」
「……成功する確率はどれくらいなのですか?」
ジルオールが静かに問いかけてきた。
そんなバカバカしいことは無茶だと、一蹴されないだけありがたい。
「実際に魔王を見たわけじゃないから、なんともいえないけど……相当低いと思います。100回やって、1回成功すれば良い方じゃないかな? いや、それも良く考えすぎか……?」
「1パーセント以下……ですか。相手が魔王様ということを考えたら、その数値でも高いのかもしれませんが……」
普通に考えて、こんな策、実行に移すことはできない。
1パーセントに賭けるなんてバカのすることだ。
ただ……
他に策がないとしたら?
戦う以外、手の打ちようがないとしたら?
「ジルオールさんやカシオンは、なにか考えはありますか?」
「俺は……」
カシオンは気まずそうな顔に。
なにも思い浮かばないのだろう。
ジルオールは表情こそ変えていないものの、言葉を紡ぐことはない。
こちらも打開策はないのだろう。
「……有効な策はありません」
「なら」
「ですが、レインさんに協力することもできません」
まあ……そうなるか。
ジルオールの目的は、平穏だ。
戦争に参加して血を流すのではなくて、ただただ、愛しい者と一緒に同じ時間を過ごす。
そんな平和を望んでいる。
ここで俺に協力しても得られるものはない。
むしろ、マイナスになる可能性が高い。
それならば、グルンヒルドに隠れていた方がいい。
ここならば魔王の影響を受けることはない。
また、魔王側も、わざわざグルンヒルドを標的にすることはないだろう。
魔王が覚醒した今、人間に対する戦争のことを第一に考えているはず。
消極的な同胞を引きずり出すようなことはしない。
「ただ」
まだ続きが?
「レインさんとの同盟を解消したつもりはありません。したいとも思っていません」
「それじゃあ……」
「できる限りではありますが、協力を約束いたしましょう」
「ありがとうございます」
ひとまず、第一の関門は突破だ。
俺も、1パーセントの可能性に賭けるつもりはない。
どうにかして、数値をさらに引き上げていく予定だ。
そのためにはジルオールやカシオン、グルンヒルドの魔族の協力は必要不可欠。
同盟を続けることを目的としていたのだけど、うまくいったみたいでなによりだ。
「なあ。レインは、本当に魔王様を使役するつもりか?」
「現状、それが一番かな、とは思っているよ。他に良い方法が思いついたら、そちらに乗り換えるかもしれないけど……今は、使役する方法をより確実なものにする方法を考えたいかな」
「なるほどな……」
一つ頷いて、カシオンはなにやら思案顔に。
ややあって口を開いた。
「ちと聞きたいんだが、使役の成功の有無って、どこで決まるんだ? 失敗するとしたら、その原因は?」
「にゃん? そういえば、レインが使役に失敗するところ、見たことないよね」
「なんでも使役する、とんでもテイマーなのだ」
「とん、でも」
ニーナの教育に悪いから、適当なことは言わないでほしい。
「まあ、最近はそうかもしれないけど、俺だって、昔はよく失敗していたよ。修行時代とか、当たり前のように失敗して、成功する方が少なかったからな」
「ほー、まったく想像できへんな」
「そんなアニキも可愛い感じっす」
「失敗する要因は色々あるけど……基本は、力不足かな?」
契約を成立させるには、基本、相手より上ということを認識させなければいけない。
戦うことで力を示したり。
あるいは魔力を感じさせたり。
心を通わせることでも問題はない。
昔の俺はそれができておらず、よく失敗していたものだ。
懐かしい。
そんな俺の話を聞いたカシオンは、ニヤリと笑う。
「なら、俺らの魔力をレインに預ける、っていうのはどうだ?」