作品タイトル不明
866話 我が子のために
コハネとリースの戦いは続いていた。
コハネは宙に無数の武装を展開。
そこから、絶え間のない射撃を行う。
それは、全てを飲み込む嵐のよう。
普通の人なら、抗うことはできず、一瞬で突き崩されてしまうだろう。
しかし、リースは耐えていた。
嵐のような猛攻の前に崩れることはない。
コハネの攻撃を相殺。
あるいは回避をしてやり過ごして……
どうしても避けられない時は、時を止める能力を使用する。
「まったく……なんて、デタラメな力なんでしょうか。あなたの詳細な情報はないのですが……その力、一体、なんなんですか? まさか、ここまでなんて」
「私も最強種ですよ?」
「規格外すぎますよ」
タイミングを図り、リースは物陰から飛び出して、魔法を放つ。
巨大な火球がコハネに迫るものの……
コハネの周囲に展開されていた無数の武装が一点に集まり、光を放つ盾となる。
キィンッ! という音と共に、火球を霧散させた。
オールレンジ攻撃。
そして、場合によってシールドを展開。
コハネの武装は、まさに攻防一体。
並大抵の力では突破することは叶わない。
ましてや、コハネは今……
「ふぅ……これはもう、早くから勝負を賭けるしかないですね」
リースは覚悟を決めた。
時を止める、という切り札は、なるべくなら、ここぞという時までとっておきたい。
しかし、コハネが相手ではそうも言ってられない。
下手に温存しようとしたら、ここぞという時を迎える前に倒れてしまいそうだ。
呼吸を整えて。
集中して。
時を止める。
「……」
全てが静止した中で、リースは一気にコハネとの距離を詰めた。
彼女の攻撃は脅威ではあるが、接近戦には弱いだろう、と判断してのことだ。
コハネの背後に回り込む。
そして貫手。
コハネの背中を貫く一撃を繰り出して……
そこで時を解除。
「なっ!?」
攻撃が弾かれた。
確かな一撃。
完全に不意を突いたはずなのに……
それでも、貫手がコハネを貫く直前、見えない壁に当たり、弾かれてしまう。
「言い忘れておりましたが……」
コハネがくるりと振り返る。
そして、武装を展開。
「私は、常時、シールドを……結界を展開しておりますので。ただ不意を突くだけではなくて、不意を突きつつ強大な攻撃を撃たないと無理ですよ?」
「このっ……!」
リースは再び時を止めた。
その間に、コハネから距離を取る。
ある程度、離れたところで能力を解除。
物陰に隠れて、戦術を練る。
「はぁっ、はぁっ……あまり能力は連発できないというのに、まったく、厳しいですね」
リースは大きく息を切らしていた。
時を止める。
その能力はとても強力なものだけど、しかし、燃費が悪い。
体力、魔力、共に大幅に食われてしまい、長時間、連続の使用は不可能だ。
しかし、コハネとの戦いで何度も使用してしまっている。
すでに限界を超えていた。
それでも、戦いを止めるわけにはいかない。
意地がある。
そしてなによりも、娘のために、という想いがある。
とはいえ……
「もう、全て手遅れなんですけどね」
仕込みは全て済んでいる。
今更、止めることはできない。
どれだけの力を持つ者だろうと……
コハネであろうと、止めることはできない。
ただ、ここで負けるつもりはない。
成果を見届けて。
それをモニカと一緒に楽しみ、喜ぶつもりだ。
そのためにも、なんとしてもコハネを倒さなくてはならない。
今、ここで自分が倒れたら、コハネはレインの援護に向かうだろう。
そうなるとアウトだ。
モニカでも抵抗はできない。
「倒せないのなら、封印してしまえばいい」
相手の時を止める。
そうして封印してしまえば、リースの能力が続く限り、相手はなにもできない。
コハネは強力な力を持っているが、さすがに、時を止められてしまえば抗うことはできないはずだ。
そのためには、近距離まで接近しなければならないが……
どうにかしてやってやろうではないか。
リースは覚悟を決めて……
しかし、次の瞬間、絶望を覚える。
「主様のため、そろそろ終わりにさせていただきます」
コハネの周囲に展開されていた武装が再び一つに集結した。
それは、巨大な砲身。
十を超える武装が一つに集まり、積み上げられた力。
「終わりにいたします」
「くっ……!?」
瞬間、世界が光に包まれた。