作品タイトル不明
858話 復讐のための復讐
「これで、もう話すことはありませんね」
モニカが剣を抜いた。
リースがパチンを指を鳴らして合図をすると、他の魔族達が身構える。
「後は、力で証明してみせましょう。どちらが正しいのか、を」
「もちろん、それは私とモニカになるでしょうけどね」
「いいや」
モニカの憎しみは理解できる。
それに寄り添うリースのことも、理解できる。
でも、それを許すつもりはない。
二人を放置したら、また悲しみが生まれる。
過去に行われた惨劇が繰り返されるだけで、それは永遠に終わらない地獄になる。
それだけは認められない。
だから……
モニカとリースの想いを踏みにじることになったとしても。
俺は……
「決着をつける」
――――――――――
モニカは理不尽に全てを奪われた。
だから、全てを奪おうとした。
わからないでもない。
理解もできる。
今までなら、それを許容していたかもしれない。
でも。
俺は、人間と魔族の戦争を止めると決めた。
血で血を洗うような戦いをなくしたいと思った。
だから、そのための行動に移る。
今までと違う行動をとったとしても。
心変わりと取られたとしても。
結局のところ、俺のわがままだ。
その場、その場でやりたいことをやる。
望むことを手放したくなくて、前に突き進む。
それだけ。
わがまますぎる。
エゴもいいところだ。
だけど……
最後まで貫き通そう。
途中で諦めるとか、考え直すとか。
そういう中途半端なことはしないで、せめて、やろうと決めたことはやり遂げよう。
俺の中で筋を通そう。
――――――――――
人間なんて嫌いだ。
私から全てを奪い、それでもなお、平然とした顔でなにもしていませんと言うことができる。
なんて厚かましい。
そして……
私は、私が嫌いだ。
人間だから。
リースさまのように、魔族に生まれたらよかったのに。
あるいは、動物でもよかった。
人間になんて生まれたくなかった……
この身が呪われているように感じる。
体に流れている血が、とても疎ましく思う時がある。
そんな時。
家族の夢を見る。
友達の、村人の夢を見る。
みんな、笑顔で。
楽しく過ごしていて……
でも、突然、血の雨が降り、全てが炎に包まれていく。
やめて。
私から大切な人を奪わないで。
なんでもするから、お願い、もうやめて。
そう何度も叫んでも止まることはない。
だって、夢だから。
そして、現実に起きたこと……過去の出来事だから、変えることはできない。
失ったものを取り戻すことはできない。
なら、この怒りはどうすればいい?
悲しみと憎しみを、どう昇華したらいい?
なにをしても満たされることはない。
心が晴れることはない。
なら……
胸に抱いた感情を刃にして、人間を斬るしかないではないか。
その時だけは、とても晴れやかな気持ちになる。
嬉しくなる。
復讐は虚しい、と言う者がいた。
意味がない、と言う者がいた。
なにも得ることはない、と言う者がいた。
それらは正しいだろう。
真理だ。
でも、そのようなことは知らない。
知るものか。
私は……
「この身を焦がすような復讐をやり遂げたい。そして、最後は私も……」