軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

852話 敵地を進む

中央の平原は戦場。

その奥に、ジルオールが構える砦。

平原を挟んだ反対側は森。

その奥に、同じくリースとモニカが拠点とする砦があった。

どちらの砦も、過去の戦争の際に作られたものだ。

人間を相手にしていたものではあるが、強度は抜群だ。

おかげで、長い時が経った今でも問題なく使用することができる。

その砦に繋がる道に、複数の魔族が配置されていた。

ジルオールがいきなりここまで攻めてくるということはない。

それでも、斥候などが潜入する可能性はあるため、それを防ぐための見張りだ。

「……なあ」

「どうした?」

見張りの魔族は、周囲に気を配りつつ話をする。

「この戦い、どう思う?」

「……ちと厳しいかもしれないな。相手は穏健派だけど、最近は力をつけていやがるからな。それに比べて、こっちは……」

「あ、いや。そういうのじゃなくて……この戦いの意味だよ」

「意味?」

「穏健派が唱える人間との停戦なんて飲めるわけないけどさ。でも、こうして魔族同士で争っていていいのかな、って」

「それは、まあ……」

思うところはある。

しかし、現状をより良くするための飛び抜けたアイディアなんてものはない。

「結局、俺らは上の言う通りにするしかないのか」

「下っ端兵士の悲しいところだな」

「ま、この戦いが終わったら一杯やろうぜ。もちろん、勝利の祝杯だ」

「いいな。って、それ、フラグみてえじゃねえか」

「はは、そうかもな」

二人の魔族は楽しそうに話をして……

しかし、気づいていない。

この時、すぐ近くを複数人が通り抜けていったことに。

――――――――――

「成功だな」

無事、俺達は見張りの魔族の目をくぐり抜けることに成功した。

どうやったのか?

わりとシンプルな方法だ。

ソラの魔法で俺達の姿を透明にしてもらう。

実際は透明じゃなくて、背景と同化して光学迷彩に……という説明をされたけど、その辺りはちょっと難しくてよくわからなかった。

続けて、ルナの魔法でふわりと浮かぶ。

透明化。

そして、浮遊。

敵の目に留まることはなくて。

足音を立てることもない。

その状態で堂々と進むことにした、というわけだ。

「まさか、こんな堂々と進むことができるなんてね」

「基本、目に見えるもの、耳に聞こえるものしか信じられませんわ。それを潰されてしまうと、なかなか難しいですわね」

「大胆ですが、しかし、どうしようもない隙をついた素晴らしい策でございます」

「レイン、すごい。いい子、いい子」

「あぁ、アニキが幼子のようになでなでされているっす!?」

みんな元気だ。

その元気に癒やされる。

俺達、遊撃隊の役目はとても大きい。

失敗したら戦況が傾くかもしれない。

責任重大で、プレッシャーもかかるのだけど……

でも、みんなが一緒なら大丈夫。

成功することができる。

たとえ失敗したとしても、すぐにリカバリーができる。

そんなことを思うことができた。

「レイン、この先、しばらくは誰もいないみたい」

「よし。一気に進もう」

「「「おー!」」」

魔族と魔族の戦いを終わらせるために、戦いに向かう。

矛盾した行いだけど、でも、今できることはこれだけだ。

他に道はない。

そう信じて、前に進んでいく。

ほどなくして、木々の隙間に砦が見えてきた。

王都の城の半分くらいの大きさだろうか?

こんなものが利用された過去の戦争……いったい、どれほどの規模だったのだろう?

どれだけの被害が生まれたのだろう?

絶対に、今の時代に再現させるわけにはいかない。

「ここ、さすがに見張りがおるな」

「たくさん……いる」

「こ、ここを潜り抜けないといけないんでしゅか……? ひぃ」

フィーニアが悲鳴をあげてしまう気持ちはよくわかる。

ぱっと見ただけで、数十の魔族の姿が。

それだけじゃなくて、刺すようなプレッシャーが周囲から放たれている。

さらに強い力を持つ魔族が周囲に潜んでいるのだろう。

「さすがに、ここを誰にも気づかれないで通り抜けるのは厳しそうですね……」

「我らの魔法でもごまかすことはできなさそうなのだ」

「どうする、レイン?」

「……」

カナデの視線を受けて考える。

とはいえ、この展開は予想していた。

敵地に近づけば近づくほど防備が厚く固くなるだろうから、いずれ、足が止まる時が来ると。

だから、答えはすぐに出る。

「二手に分かれよう」