軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

843話 とある魔族の昔話

リースとモニカは強硬派のトップに君臨した。

魔族と和平を結ぶためには、彼女達をなんとかしなければいけない。

力で排除することになるのか。

それとも、言葉を尽くして手を取り合うことになるのか。

どうなるか、それはわからない。

俺としては、できれば後者の展開を望んているけど……

それがとても厳しい道ということは理解している。

それでも、難しいから、という理由で諦めたくない。

あがいて、あがいて、あがいて……

できる限りのことをしたい。

自分を納得させるために。

そして、たくさんの笑顔を掴むために。

「俺達が加わったことで、本格的に作戦が進むみたいだけど……それでも、1週間は待機か」

魔族と魔族が激突する。

今までにない大事件で……

そして、大規模な戦闘に発展するだろう。

そのための準備となれば時間がかかってしまうのは当然だ。

それまでの間、俺達は客人としてグルンヒルドに滞在することになった。

一つの宿を貸し切ってもらい、そこを拠点としている。

「まあ、のんびり過ごすわけにはいかないし、作戦までの間、できることをしておくか」

リースとモニカの情報を集めたり。

作戦の準備を手伝ったり。

あるいは、グルンヒルドで困っている魔族がいたら、なにか力になりたい。

「ん?」

ふと、コンコンと扉をノックする音が響いた。

今いるところは、宿の個室。

俺の部屋だ。

みんなかな?

そんなことを思いつつ、扉を開けると……

「よう」

カシオンがいた。

――――――――――

カシオンに誘われて夜の散歩に出る。

「悪かったな、こんな時間に散歩に誘って」

「構わないさ。まだ寝ていなかったし、それに、すぐ眠れそうになかったし」

「そう言ってもらえると助かるぜ」

「なにか話が?」

カシオンが足を止めて、こちらを振り返る。

その顔はとても真剣だった。

「悪かったな」

「え?」

「いきなり襲いかかったことだよ。もしかしたら、ジルオールさまの敵かもしれねえからな。ああするしかなかったんだが、まあ、ちとやりすぎだったような気もしてな……わりい」

「いいよ。気にしてないから」

驚いたものの、こうして、最終的に和解することができた。

なら、それでいい。

そう伝えると、カシオンは笑顔になる。

「サンキュー。前に会った時も思ってたが、レイン、お前はいいヤツだな。人間とは思えねえ」

「それ、褒め言葉なのか?」

「最大級のな」

「なら、素直に受け取っておくよ」

カシオンが笑い、空を見上げる。

俺も空を見上げると、星が輝いているのが見えた。

魔族が暮らす西大陸だとしても、空は変わらない。

俺達の場所とまったく同じだ。

「……俺は」

カシオンはぽつりと呟いて、語り始めた。

「実は、強硬派の家の生まれなんだよ」

「カシオンが?」

意外な話だった。

ジルオールの親衛隊というから、家も穏健派なのだと思っていた。

「人間は下等な存在で、絶対に滅ぼさないといけない。そのために、何年でも何十年でも何百年でも戦争をして、徹底的に戦わないといけない。そう教えられて、その教えに疑いを持つことはなかった」

「それは……」

「今思うと、洗脳みたいなもんだよな。ま、実際、そうだったんだろうな。俺の両親は、人間に酷い目に遭わされたみたいでな。それはもう、ひどく憎んでいたさ」

「……ごめん」

「レインが謝ることじゃねえよ。確かに人間はむかつくが……でも、魔族にもむかつくヤツはいるからな。種族がどうこうっていうよりも、個人の問題だろ」

それは、魔族にしてはとても割り切った考えだろう。

誰もがカシオンのように考えることができたのなら、争いはなくなるのかもしれない。

でも、それは無理だ。

殴った方は、そのことを簡単に忘れてしまう。

でも、殴られた方はずっと忘れない。

恨みを募らせていくことが多い。

そして殴り返して……

終わりのない連鎖だ。

どうしようもないこと。

果てしなく難しいこと。

でも、諦めずに立ち向かいたい。

その先にあるものを夢見て、前に進んでいきたい。

俺のために。

みんなのために。

そして、人々の笑顔のために。