作品タイトル不明
842話 分かり合えない者
人間との徹底抗戦を訴える過激派は、ジルオール以外の四天王が中核となっている。
ただ、ギガブランド、アルテラ、ゼクシードはすでにいない。
過激派の戦力は大幅に削がれているのだけど……
しかし、勢いは消えていない。
彼らの後釜にリースが収まったのだ。
彼女は時を操るという、非常に強力な力を持っている。
四天王に匹敵するだろう。
それだけではなくて、カリスマ性もある。
彼女に付き従う魔族は多い。
過激派の戦力は削られたものの、しかし、瓦解するほどではない。
どうにかこうにか、穏健派が食らいついている……というのが現状らしい。
「と……現状はこのようなところですね」
「なるほど」
一通りの説明を受けて、考える。
やっぱりというか……リースの名前が出てきたか。
たぶん、表に出ていないだけでモニカも絡んでいるだろう。
いったい、彼女達はなにを目的にしているのか?
「幸いといっていいのか……過激派の中枢はリースのみです。彼女を倒したのならば、私達穏健派が上に立つことも可能でしょう。その後、多少の時間はかかるでしょうが、私が頂点に立ち、魔族を正しい道へ導くことができます」
「それは、つまり……リースを倒す、っていうことですよね?」
「はい」
即答だ。
この件については、ジルオールは完全に答えを決めているらしい。
ただ、俺は……
「その結論、少しだけ待ってもらえませんか?」
「ソラ?」
「中枢を叩けば敵を壊滅させて、従えることができる。それは戦略としては正しいですが、ソラ達の主は、その前にやりたいことがあるようです。ですよね、レイン?」
ソラがこちらを見る。
その視線は、これで間違いないだろう、という確信があって……
うん。
ここまで信頼されていること。
そして、俺のことをわかってもらっていることを、すごく嬉しく思う。
「やりたいことというのは、なんでしょうか?」
「……まず、話し合うことはできませんか?」
リースのことはよくわからないが……
モニカは、人間でありながら人間に深い恨みを抱いている様子だった。
先の王都で起きた事件も、彼女が関わっていたという。
どうして、そこまでするのか?
人間なのに人間を滅ぼそうとする理由は?
まずはそれを確かめたい。
そして、わかり合えるのなら妥協点を探して。
それが無理なら……その時は、刃を交えるしかないだろう。
「それは、ただの自己満足では?」
「そうですね。その通りです」
「相手が素直に話に応じるかわかりません。罠を仕掛けられるかもしれません。そんな危険を犯してでも、実行する必要性が?」
「ありません」
ジルオールの言葉は全て正しい。
俺がやろうとしていることは、不合理の塊でしかない。
そうだとしても。
正しいことが正しいとは限らないと思うのだ。
時に、ちょっと横道に逸れることが正解かもしれない。
「もしかしたら、っていう可能性はあると思うんです。ダメだったとしても、ある程度は、相手のことを理解できると思うんです。それが、次の『なにか』に繋がるかもしれない。前に進むことは大事です。でも、前だけじゃなくて、時々でいいから、横を見てもいいのかな……って」
「……ふふ」
ジルオールが小さく笑う。
子供のように、くすりと。
それはとても自然な反応で……
計算された演技ではなくて、素の反応であることが伺えた。
「そのような話は不利益にしかなりませんよ? やはり協力を止めた、と私が言い出してもおかしくありません。それなのに……まったく、あなたはなにを考えているのですか?」
「えっと……すみません?」
なんだか親に怒られているような感じだ。
でも、ジルオールは笑みを浮かべている。
「汚い言葉になりますが、あなたは『バカ正直』なのですね」
「えっと……」
思わぬ言葉に怯んで、その一方で、
「「「うんうん」」」
みんなが、よくわかる、という感じで頷いた。
その反応、微妙に困るんだけど。
「ですが、その方が逆に信じられるかもしれませんね。あなたの言う通りにしてみよう、と思うような、不思議な力が言葉に宿っています。それは、あなたが心からそう思い、誠実に話をしているからでしょう」
「それじゃあ……」
「戦闘の準備は進めます。ただ、話し合いの場を設けることも検討します。絶対、とは言い切れませんが……なるべく実現できるように努力いたしましょう。これでどうでしょうか?」
「はい、ありがとうございます」