軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

840話 会談は順調に、しかし不穏に

ジルオールは笑顔で俺達を迎えてくれた。

仮面のような笑顔……というわけじゃない。

声は優しく、顔も柔らかい。

心から俺達を歓迎しているように見える。

「はじめまして」

「あら。私達は、一度、顔を合わせているでしょう?」

「覚えていたんですか?」

「ええ、もちろんです」

だとしたら、前回、顔を合わせた時、すでに俺が人間だということを見抜いていたのだろうか?

それでも正体に触れることなく、黙っていた?

「じゃあ……改めて。俺は、レイン・シュラウド……人間です」

軽く頭を下げて……

他のみんなも続けて自己紹介をした。

「ようこそ。私達は、レイン・シュラウドとその仲間を歓迎いたしましょう。どうぞ、こちらへ」

ジルオールの案内で、教会の奥にある客間へ移動した。

たぶん、会議室としても使われているのだろう。

広く開放的で、俺達全員が入ってもなお余裕があった。

俺とジルオールは、テーブルを挟んで。

他のみんなは、それぞれ代表者の後ろの席に座る。

「ほら、茶だ」

「……ありがとう」

「なんだ、その間は?」

「えっと……」

「お茶を淹れるなんて器用なことができるんだ、とボクは驚いている」

「リファ!?」

正直すぎる!

いや、まあ。

俺も同じことを思ったけどさ。

「ったく、お前らも仲間と似たような反応しやがって。俺が茶を淹れるのが、そんなに似合わねえか?」

「「「うん」」」

「うぐっ」

みんなが揃って同意して、カシオンがうめいた。

ちょっと傷ついているかもしれない。

後で謝っておこう。

「ふふ」

「あ、すみません。いきなりやってきて、失礼を……」

「いいえ、構いませんよ。このようなカシオンは初めて見るので、つい、私も……彼は、あなた達を気に入っているようですね」

「そうなんですか?」

「カシオンがお茶を淹れることについては、私達も似たようなことを思ってしまうので。だから、普段はお茶を淹れることはないのですよ。今回、お茶を淹れたのは、あなた達のことを好ましく思っているからでしょう」

「ち、違いますぜ!? 非公式とはいえ人間との会談で、今は周囲にバラすわけにもいかないから人がいないから、仕方なく俺が……」

「ツンデレだにゃー」

「ツンデレね」

「タニアがそれを言うん?」

会談というよりは、世間話をしているような感じだ。

ただ、つかみとしてはアリだろう。

こうして良い雰囲気を作り、話も良い方向に進めていく。

それが理想だけど……

果たしてどうなるか。

「さて……簡単な話はカシオンから聞いていますが、改めて聞かせていただきますか? あなた達は、なんのためにこの西大陸へ?」

「あなた達、魔族と和平を結びたく」

「ふむ……失礼を承知でお尋ねしますが、あなたは王族なのですか? そのようには見えないのですが」

「俺は普通の冒険者で……」

「レインは普通ではないぞ?」

「うんうん」

「主さまは普通ではないのですね」

そこ、茶々を入れない。

「冒険者っていうのは、なんでも屋みたいなものです。ただ、色々とあって人間の王から和平に関する事柄を一任されています」

「なるほど。では、あなたを人間の王と見て、考えて、話を進めればいいわけですね?」

「はい」

なんだろう。

普通に話をしているだけなのに、動悸が激しくなってきた。

緊張する。

こういう会談に慣れていないから?

責任重大だから?

いや。

相手がジルオールだからだろう。

彼女の持つ静かなプレッシャーが俺の心を飲み込もうとしていた。

ここで負けたらいけない。

かといって、無意味に張り合うこともダメだ。

しっかりと自分を持ち、その上で、建設的な話を進めていかないと。

「なぜ、私達のところにこの話を?」

「あなた達、穏健派なら話を聞いてくれると思いました。考えてくれることも、してくれるだろうと思いました」

「ふむ」

「とても難しい話ということは理解しているつもりです。あなた達、魔族の歴史についても……争いの発端についても、自分なりにですが理解しています」

全ての責は人間にある。

今更、戦いを止めよう、というのは都合が良い話だ。

それでも。

このまま泥沼の争いを続けるよりはマシだと、そう信じる。

「それと、私の紹介でもあります」

「あなたは……」

コハネに気づいて、ジルオールが驚きの顔になる。

「どうか、私の顔に免じて話を聞いていただけませんか?」

「……聞きましょう」

続けて、と目で促される。

「殺して、殺されて。殺されて、殺して。それを繰り返すだけの歴史は、もう終わりにしませんか? 都合のいい話というのは理解しています。それでも、これ以上はもう……次の世代に血と涙を繋げたくないんです。ここで終わりにしないといけないんです」

「……」

ジルオールの反応はない。

静かに……とても静かにこちらを見ている。

ややあって、

「わかりました」

小さく頷いた。