作品タイトル不明
838話 再会と戦闘と、そして……
「よう、レイン」
「……ああ」
カシオンは気さくに挨拶をする。
ただ、彼はいつでも動けるように身構えていた。
カシオンの後ろにいる、彼の部下であろう魔族達はすでに武器を構えている。
まずいな。
一触即発に限りなく近い状態だ。
言葉一つで戦闘に突入してしまうだろう。
「久しぶりだな。まあ、中には知らねえ顔も多いけどよ」
「あの後、色々とあって」
「そっか。本当なら再会を祝して一杯やりたいが……」
「ただ」と間を挟んで、カシオンから放たれる気配が一気に鋭いものに変わる。
「俺は言ったよな? 次に会った時は容赦しねえ、って」
「待った。俺達は戦うためにやってきたわけじゃ……」
「うるせえっ、問答無用だ!」
カシオンが突撃してきた。
同時に、彼の部下の魔族達も動く。
ダメだ、応戦するしかない。
「みんな、やりすぎないように!」
「舐めるんじゃねえ!」
カシオンは、俺をターゲットにしたみたいだ。
脅威的な速度で迫り、右、左と拳を連続で放つ。
速いけど……
でも、しっかり視える。
ステップを踏むようにして拳を回避。
同時にカシオンの腕を掴んで、彼の体を背負うようにしつつ、投げ飛ばす。
「うぉ!?」
カシオンは、己の攻撃が防がれて、さらにカウンターを受けた驚きの声をこぼす。
ただ、親衛隊の名前は伊達じゃない。
宙でくるっと回転して、綺麗に着地。
すぐに攻撃に移る。
「レイン、そっちは……」
「俺は大丈夫だから、みんなは他を頼む!」
「らにゃー!」
相手は複数の魔族。
数は……倍といったところ。
でも、みんななら大丈夫だろう。
伊達に修羅場を潜り抜けていない。
「よそ見してんな!」
再びカシオンが突撃してきた。
今度は真正面からではなくて、左右にステップを踏み、狙いを悟らせないためのフェイントを織り交ぜている。
少し厄介だけど……
「うらぁ!」
拳の連打。
さらに、途中で蹴撃も交じる。
「ちっ……なんで当たらねえ!」
俺は、カシオンの攻撃を全て回避。
あるいは防いでいた。
彼の技術は相当に高い。
格闘技術だけでいうのなら、俺よりも圧倒的に上だ。
そして、身体能力も優れている。
なぜ、そんなカシオンの攻撃を回避できるのか?
答えは簡単。
サクラと契約したことで得た、闘気の力を使っているからだ。
あれから、時間のある時にちょくちょくと練習を重ねていたのだけど……
おかげで、ある程度うまく扱えるようになった。
闘気をまとうことで力が増して、立体的な機動を可能とする。
あるいは、攻撃に転じることもできる。
本当に助かる能力だ。
今の俺は闘気をまとうことで機動力を増していた。
通常では不可能なトリッキーな動きも可能にしていた。
だからこそ、嵐のようなカシオンの攻撃を捌くことができる。
「これならどうだ、うらぁあああああ!!!」
カシオンが吠えて、一際鋭く、強い攻撃が繰り出された。
ゴッ! と風を巻き込むかのような拳撃。
まともに直撃したら大ダメージは確定だ。
かといって、あまりに速いため避けることも難しい。
なら……
「こうするまでだ!」
「なっ!?」
逆に、こちらも攻撃を繰り出して、相殺した。
さすがにこれは想定外だったらしく、カシオンの表情が驚きに歪む。
ガァンッ!
強烈な音が響いた。
俺とカシオンの拳が激突する音だ。
ビリビリと痺れるものの、骨までいくような痛みはない。
よし。
迎撃成功。
「……」
カシオンは呆然として……
「はっはっは、やるじゃねえか!」
突然、笑顔になって、バシバシと俺の肩を叩いてきた。