作品タイトル不明
837話 再び西大陸へ
まぶしい光に包まれていたけれど、時間と共にそれが収まる。
白一色だった世界に少しずつ色がついていく。
平衡感覚が怪しくなっていたものの、それも落ち着いてきた。
ほどなくして視界や感覚など、全てのものが安定して……
「……おぉ」
気がつくと見知らぬ場所にいた。
砂と岩が広がる荒野だ。
そんなところでもたくましく生きている動物がちらほらといる。
ただ、突然出現した俺達に驚いた様子で、いずれも逃げ出していた。
「にゃん? 到着したのかな?」
「たぶんね。なんとなくだけど、周囲の雰囲気が違うわ」
「うむ。魔力が満たされているのだ」
「おそらく、この地に住む魔族の影響ですね。魔族は、高い魔力を持つ者が多いですから、自然と周囲に影響を与えているのでしょう」
みんな、キョロキョロと周囲を見る。
サクラは、鼻をすんすんと鳴らしていた。
「おー? おー……初めての匂い!」
「ま、魔物とかいないでしょうか……? あうあう」
「大丈夫! フィーニアは、ぼくが守る!」
「……サクラちゃん……」
「ふむ……あの二人もアリですね」
「我が姉よ。仲間までそういう目で見るのはどうかと思うのだ……」
ソラとルナは、いったいなんの話をしているのだろう?
「レインの旦那、これからどうするん?」
「そうだな……」
少し考えて口を開く。
「四天王のジルオールとコンタクトをとってみようと思う」
「ジルオールって……魔族の街でレインが会った、っていう?」
「あの事件の後で、そんな話を聞いたわね」
「うん。ジルオールは、自分達のことを少数派……つまり、戦争を望まない穏健派と言っていた。魔族との和平を考えるなら、まずは彼女と話をして、情報を集めたい」
「でも、信用できる?」
リファの疑問はもっともだ。
俺を含めて、ここにいる全員がジルオールのことを詳しく知らない。
魔族の四天王の一人。
穏健派と呼ばれていて、争いを望んでいない。
情報はそれだけ。
他はなにも知らない。
もしかしたら、争いは望まないものの、人間のことは強く憎んでいるのかもしれない。
今は穏健派を辞めているかもしれない。
俺達が得た情報は、実は全て嘘かもしれない。
「あれこれ考えるとキリがないけど……信用できるかできないかを含めて、まずは話をしてみるしかないと思う」
どんな人であれ、言葉を交わさずに相手のことを知ることはできない。
理解することはできない。
なら、まずは話をするべきだ。
「ライハさんに仲介してもらう、というのはできませんの?」
「んー……自分で言うのもなんすけど、自分、そこそこ有名人っすよ。四天王候補にまで行ったので」
「見た目によらない、あはは!」
「なんでサクラは笑うっすか!?」
「あわわ、サクラちゃんが、ご、ごめんなひゃい!?」
「まったくもう……とにかく、相手が自分のことを知っていれば、取り次ぐことくらいはできるかもっす。そうでなくても、同じ魔族だから、いきなり襲われることはないと思うっすが……」
「うん、そうだな。じゃあ、最初の交渉というか、とっかかりを作るのはライハに任せてもいいか? 俺達が……というか、人間の俺がやるよりもいいと思うんだ」
「ラジャーっす!」
簡単だけど方針は決まった。
次は、ジルオールと話をする。
彼女がいる場所に多くの心当たりはない。
まずは、ジルオールが治める魔族の街、グンヒルドを目指すべきだろう。
「ただ……現在地がわからないのが難だな」
見覚えのない場所。
目印になるようなものも周囲に見当たらない。
ついでに言うと、西大陸の地図はない。
「まずは野営の準備かな」
適当な場所を見つけて、拠点を確保。
そこから周囲の探索を進めて、現在地と、目的地であるグンヒルドの位置を探る。
そうやって今後の予定を思い描いていると、ふと、強烈なプレッシャーを覚えた。
「これは……」
「レイン!」
「ああ、わかってる」
カナデも険しい表情をしていた。
何者かわからないけど、強い力を持った者が近づいている。
偶然、と考えるのは楽観的すぎるな。
たぶん、転移を感じ取り、こちらにやってきたのだろう。
「おいおい……なんか妙なもんを感じて様子を見に来てみれば、懐かしい顔がいるじゃねえか」
姿を見せたのは……水王ジルオール親衛隊、カシオンだった。