軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

826話 悲しみ

世界は順調に育っていた。

その中で暮らす命もすくすくと育っていた。

人間と最強種は手を取り合い、仲良く過ごしていた。

見た目が似てて、言葉が通じる。

親しい存在のため、手を取り合うことができたのだろう。

そして、最強種の存在が人間の心を穏やかにしていた。

自分達が生命の頂点だと思っていたが、実は違う。

上には上がいた。

でも、その頂点の存在は優しく、自分達に手を差し伸べてくれる。

その行動に感銘を受けて、人間達もまた優しくなったのだ。

嬉しい。

少女はにっこりと笑う。

ただ、新しい命を創造することは思っていたよりも大変だった。

しかも一つではなくて、九を生み出した。

少女は力の半分以上を使うことになり、ずっと世界を見守ることができなくなっていた。

ある程度の休みを必要とするようになった。

そうして目を離した間に、魔物が生まれてしまった。

人間だけではなくて、全ての命の天敵だ。

最強種を生み出す過程で、色々と実験を行い……

その影響だった。

自分のせいだ。

責任を取らなくてはならない。

でも……

少女は魔物を排除しなかった。

どうしてもできなかった。

魔物もまた、星に生まれた命なのだ。

自分の子供と同じようなものなのだ。

人間や動物達の天敵だとしても、どうしても排除することはできなかった。

だから、最強種を新たに一つ、作り出すことにした。

人間や動物達を守ることを目的とした最強種……天族だ。

天族のおかげで世界のバランスが保たれた。

魔物による被害はゼロにはならないけれど、しかし、激減させることができた。

人間と最強種はさらに絆を深くした。

笑顔のあふれる世界になった。

それを見た少女も笑顔になった。

心が温かい。

嬉しいという気持ちでいっぱいになる。

こんな優しい時間がいつまでも続いてほしい。

ずっと。

……ただ、その願いは叶わない。

彼女は万能ではあったものの、しかし、全能ではなかった。

とんでもない力を持っていたものの、無条件でなんでもできるわけではないのだ。

一部の人間が魔族を迫害するという、暴走を始めたのだ。

どうして?

どうして?

どうして?

あんなに仲良くしていたはずなのに、なぜ、刃を向けるの?

少女は理解できなかった。

とても混乱した。

それは、ある意味で仕方ないことだ。

少女は万能の力を持っていたものの、しかし、その世界には自分一人だけ。

他の人と接したことがない。

故に、嫉妬や嫌悪という負の感情を知らない。

そんな感情は持たないし、向けられたこともない。

だから、人間達の行動を理解できず、魔族の迫害を始めるなんていう事態をまったく予想できなかった。

少女はどうにかして戦争を止めようとした。

しかし、一度火が点いてしまった以上、簡単に鎮めることはできない。

憎しみの炎は燃え上がり、互いに怨嗟をこぼすようになる。

やがて、魔王という存在が生まれた。

人間による魔族の大量虐殺の結果だ。

なんて愚かな。

少女は悲しんだ。

そして、怒りという感情を初めて知った。

それでも。

どうしても、人間を見捨てることはできない。

彼らは自分の愛し子なのだ。

誤った道を進んだとしても、でも、子供を殺すことなんてできない。

どうしても……できない。

だから、少女は人間に力を貸すことにした。

自分の血を分けて、魔王を封印するための力を与えた。

倒すのではなくて封印だ。

それならば、魔族もまた、生き延びることができる。

とはいえ、これが少女の限界でもあった。

色々なところで力を使い、大きく消耗していたため、憎しみの概念となった魔王をどうにかすることはできなかったのだ。

封印が精一杯。

そして……

血を分け与えた初代勇者、ラインハルトが魔王を封印することに成功した。

さらに、ラインハルトは人間と魔族間の戦争を停止させた。

終戦ではなくて一時停戦。

それでも、十分に大きな成果だ。

そして……

ラインハルトは魔王の問題を解決する方法を探して、少女に声をかけた。

その声に応えて、少女は世界に降り立つことにした。

これ以上、愛し子達が争うところを見たくない。

止めたい。

だから、ラインハルトの呼びかけに応じて世界に顕現することにした。

少女は、神と呼ばれている。

その名前は……

ゼロ。