軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

817話 時が消えた大地

「あ、そういえば……」

ノキアさんなら十番目の最強種のことを知っているかもしれない。

そう考えて尋ねてみた。

「十番目の最強種ですか……」

「なにか知っていることはありませんか?」

「北大陸の果て……そこをさらに越えた、『世界の終わり』という場所にいると聞いています」

「『世界の終わり』……?」

文献などでも得られなかった情報だ。

「それは、どんなところなんですか?」

「伝承を伝え聞いたもので、確かなことは言えないのですが……時が止まった場所、だと」

「時間が……?」

どういう場所なんだろう?

想像しようとして……しかし、失敗してしまう。

時間が止まった場所なんて、うまく想像することができない。

「最強種については、私も詳しくは知らなくて……申しわけありません」

「あ、いえ。謝ることなんてないですよ」

「そう言ってもらえると助かります」

「ノキアさんは、アルさんになにか用があるんですか?」

気にしないでもらいたくて、話題を変えてみた。

ただ、それはミスだったのか、ノキアさんはちょっと深刻そうな顔に。

「そう、ですね……レインさんなら。ただ、ニーナや他のみなさんには内緒にしてもらえますか?」

「はい、それは大丈夫ですけど……」

みんなに内緒にするようなこと。

いったい、ノキアさんはなにをしようとしているんだろう?

「私は、アルに力を貸してもらい、いざという時のための避難路を作ろうと思っています」

「避難路?」

「もうすぐ、戦争が始まるみたいですね」

「……っ……」

王が決めたことをどうやって知ったのか?

疑問に思うものの、考えても仕方ないという結論に。

ノキアさんなら色々な伝手を持っているだろうから、どこからか情報を手に入れたのだろう。

それくらいは簡単にやってのけそうだ。

「半年後に開戦。まだ休眠期にある魔王を討ち取り、人間が勝利を収める……という構図を思い描いているのでしょうね、あの人間の王は」

「……それじゃあ、なにも変わらないのに。変えないといけないのに」

「そうですね、レインさんの言う通りです」

ノキアさんは優しく笑い……

でも、寂しそうに首を横に振る。

「でも、それは理想論です」

とても痛い一言が。

矢のように心に突き刺さる。

「私は、いざという時に備えて行動しなければなりません。大事な我が子を助けるために……それと、この手に収まる少しの人を助けるために」

「そのために、アルさんに協力を?」

「スズやミルア。レゾナにも協力をお願いしようと思っています。できれば、シグレやエルフィンにも」

各最強種のトップクラスが勢ぞろいだ。

なんでもできそうな気がする。

「そして、戦争が始まる前に避難をしようと思っています。でないと、私達の力が戦争に利用されかねないので」

「それは……」

ありえるかもしれない。

最強種の力は絶大だ。

魔王を相手にした戦争を起こすのなら、絶対に欠かせないだろう。

協力要請は来るだろう。

無理矢理に従えるなんてことは、王ならしないと思うが……

でも、要請が来たら断れない人はいるだろう。

クリオスで暮らす鬼族の人達なんかが特にそうだ。

人間と一緒に暮らしているからこそ、人間を見捨てることはできない。

「そんな事態になる前に、できる限りの同胞を連れて隠れようと思います。そのための準備です」

「そう……ですね。それが一番かもしれないですね」

「止めないのですか?」

「そんな権利、どこにもありませんよ」

戦火から逃れようとすることが間違いなんてこと、あるわけがない。

「ただ」

ノキアさんの雰囲気が柔らかいものに戻る。

「私は、それほど心配はしていませんけどね」

「え?」

「レインさんが、なんとかしてくれるのでしょう?」

「いえ、その……どうにか戦争は止めたいと思っていますけど、できるかどうか」

まずは十番目の最強種を探して、話を聞く。

それから、改めて魔族との和平の方法を探して……

やることは多く、難易度は高い。

しかし時間は足りない。

圧倒的に厳しい状況だ。

でも、諦めるつもりはない。

理想を理想論で終わらせないために。

今を生きる者として、負の連鎖を止める義務があるから……

だから、全力で前に突き進んでいくだけだ。

「期待させてくださいね?」

「はい!」

最善を掴んでみせる。

絶対に。

「あ」

ふと、思い出した様子でノキアさんが小さな声をあげた。

「そういえば、十番目の最強種について思い出したことがあります」

「なんですか?」

「十番目の最強種は世界の終わりにいると聞いていますが、それだけではなくて、強固な結界が展開されていて、完全に外と隔絶されているとか」

「中に入ることはできない?」

「はい。ただ、資格を持つ者ならば問題はない、とも聞いています」

「資格……ですか」

「その資格がどういったものなのか、わかりませんが……申しわけありません」

「いえ、貴重な話をありがとうございます」

やっぱりノキアさんに話を聞いて正解だった。

いくらかの情報を新たに得ることができた。

世界の終わりという、果ての果てにいるであろう十番目の最強種。

彼、あるいは彼女に会う資格を得て、言葉を交わすことはできるのだろうか?

いや。

絶対に話をしてみせる。

俺は、新たに決意を固めるのだった。