軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

814話 闘気と闘志

サクラと契約したことで、どんな能力を得ることができたのか?

本来なら時間をかけて色々と試したい。

でも、そんな余裕はない。

なので、ぶっつけ本番だ。

幸い、得た能力については予想がついていた。

頼む。

予想が外れていませんように。

祈りつつ、前に出る。

「「「……」」」

アクスを始め、ゾンビのようになった人達が襲いかかってきた。

意思がないため攻撃は単調だけど、全員、身体能力が底上げされている。

組み付かれたりしたらアウトだ。

なので……

「全員、寝ててくれ!」

へその辺りに力を込める感覚。

そして、斬撃と共にそれを一気に放つ。

刃の軌道に沿うようにして、青白いオーラが生み出された。

それは刃の形を取り、襲い来る人達を飲み込む。

「「「っ!!!?」」」

びくんと、アクス達が震えた。

ただ、その体に傷はない。

傷はないのだけど、アクス達はそれ以上動くことができず、操り人形の糸が切れたように次々と倒れていった。

「す、すごいでひゅ!」

「レイン、うまい! 上手!」

「ありがと」

俺が使ったのは、サクラ達、呀狼族が使う『闘気』だ。

呀狼族といえば闘気なので、契約をすれば俺も……と予想していた。

その予想は的中。

まだまだ拙いけれど、どうにかこうにか闘気を攻撃として利用することができた。

闘気は実体がない。

己の体に転じることで身体能力の強化を図り、さらに、立体的な機動を可能とする。

それだけじゃなくて、敵を攻撃することも可能だ。

威力を調整すれば刃のように切り裂くこともできるけど、今の俺は不可能。

でも代わりに、精神を攻撃することはできる。

闘気の刃を叩きつけることで急激な疲労を誘い、まとめて叩き伏せた、というわけだ。

「うそっ、なによその力!? くっ……!」

余裕たっぷりだった魔族の顔は、一気に焦りに変わる。

慌てて逃げようとするが、もう遅い。

「逃さないよ!」

「ねー」

ショコラが先回りして魔族の逃げ道を塞いでいた。

魔族は怒りの形相で「どけぇっ!」と叫び、鋭い爪で切り裂こうとする。

しかし、ショコラを相手に単純な攻撃は悪手でしかない。

「甘いぞ」

漆黒の盾がショコラを覆い、球状に。

全身を守る鉄壁の守備だ。

「ぐっ!?」

魔族の攻撃が勝ることはなくて、鋭い爪は弾かれてしまう。

そこにシフォンが追いついて……

「氷雪剣っ!」

氷をまとう魔法剣が炸裂した。

魔族の羽を切り落として、さらに、その下半身を氷に閉じ込める。

「もいっちょ、ダメ押しだねー」

「ぐううう!?」

ショコラの盾が再び変形して、今度は帯状に変化した。

それらは意思を持っているかのように魔族に絡みついて、ぐるぐる巻きにしてしまう。

魔族は必死に逃げ出そうとするが、しかし、その拘束を解くことはできない。

自由になるのは首から上だけ。

どうすることもできず、ややあって、諦めたように動きを止めてうなだれた。

「勝利の……」

「ブイ!」

シフォンとショコラは横に並び、笑顔で決めポーズ。

意外とノリがいい。

「さてと……」

無事に勝利することができた。

人質も、ほどなくして正気に戻るだろう。

完勝といってもいい。

ただ、一つだけ懸念があった。

それは……

「ねえ、アクス? あなた、私に刃を向けたわね? どういうこと? ねえ、どういうこと? ほら、早く起きてしっかりと丁寧に根気よく説明してちょうだい」

「……うぅ……」

セルは無表情で倒れているアクスを小突いていた。

アクスはいまだ意識が戻っていないものの、悪夢を見ているかのような顔をしている。

……二人のケンカ、あまり派手にならないといいんだけどな。