作品タイトル不明
813話 遅れて登場
「「「……」」」
アクスを先頭に、操られている人達が無言で突撃してきた。
まるでゾンビのようだ。
どうする?
反撃に出ても、アクスならある程度は耐えられると思う。
でも、一般人はそういうわけにもいかず……
迷いが判断を遅らせてしまう。
操られている人達が目の前に迫る。
「メガボルト!」
瞬間、紫電が疾走した。
雷撃は魔族を狙うものの、あと少しのところで回避されてしまう。
さらに、ふわっと盾が飛んできて、突撃してきた人達をその場に押し留めた。
「シフォン! ショコラ!」
「ごめん、遅れちゃった」
「おー、なんか厄介なことになっている?」
「ものすごく」
簡単に状況を説明した。
二人は顔をしかめる。
「よーし、そういうことなら、全部まとめてなぎ倒せば……」
「いいわけないでしょ!」
「冗談、冗談だぞ?」
たぶん、ショコラは本気だった。
「ふふ、楽しい人間ね。もうちょっと相手をしてあげたいけど、私、戦いたいわけじゃないから。じゃ、後は任せるわ」
「「「……」」」
ショコラの盾で全ての人達を防ぐことは難しい。
再び突撃が始まり、回避や防御に専念させられてしまう。
その間に魔族は撤退の準備に入っていた。
まずい。
ここで逃したら、他で同じような被害が起きてしまう。
ここで捕えるか倒すかしないと。
「とはいえ……くっ、アクス、目を覚ませ!」
「……」
アクスは意識を取り戻すことなく、幽鬼のような表情で斬りかかってきた。
いつもの技術はないけれど、代わりに身体能力が増している。
アイギスなどで攻撃を防いでいるものの、少し手が痺れてきた。
アクス達を傷つける覚悟で挑むしかないか?
でも、それは……
「レイン、レイン!」
一度距離を取ると、サクラがこちらにやってきた。
「名案、ある!」
「名案? えっと……」
「わ、わらひがなんとか時間を稼ぎまひゅ!」
「任せたわよ!」
フィーニアとセルが前に出て、代わりにアクスを抑えてくれる。
シフォンとショコラは、他の人達を止めてくれた。
「サクラ、名案っていうのは?」
「ぼくと契約する!」
「え?」
「そうしたら、レイン、また強くなる! こんな事態、ばばっと解決!」
「うーん、それは……いや、案外アリか?」
あと一歩、決め手に欠けている。
サクラと契約することで、その一歩を埋めることができるかもしれない。
どんな能力を得られるか、それは賭けだけど……
でも、サクラを信じてもいいような気がしてきた。
というか、俺が信じないと。
サクラは仲間なんだから。
「わかった、契約しよう」
「うん! ぼく、今度は間違えない!」
親指を噛み、流れた血で手の平に魔法陣を描く。
「……我が名は、レイン・シュラウド。新たな契約を結び、ここに縁を作る。誓いを胸に、希望を心に、力をこの手に。答えよ。汝の名前は?」
「サクラ!」
元気いっぱいの返事だ。
宙を流れる魔法陣が糸のように解けていく。
それらはサクラの周りをふわふわと飛んで、少しして彼女の手に吸い込まれていった。
「成功?」
「ああ、バッチリだ」
「やった、やった! ぼく、契約できた! わふー!」
ぴょんぴょんと飛んで、サクラは全身で喜びを表現する。
前に一度失敗しているから喜びも倍なんだろう。
俺も一緒になって喜びたいところだけど……
「今は、こっちをなんとかしないとな」