軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

812話 意外なピンチ

「……」

アクスはなにも言わず、剣を手に突撃してきた。

「って……速い!?」

予想の倍以上の速度だ。

カウンター狙いを捨てて、回避に専念する。

わりと際どいところで攻撃を避けて、大きく跳んで距離を取る。

おかしい。

以前、アクスと戦ったことがある。

その後、何度か共闘した。

その経験から、アクスの大体の実力は把握していたんだけど……

今は、その経験則が通用しないくらいの実力を見せていた。

予想よりも圧倒的に上だ。

本当の実力を隠していた?

「アクス、目を覚ませ!」

「これ以上ふざけた真似をするのなら、パーティーを解散するわよ!」

「……」

普段なら絶対に反応するであろうセルの言葉でもアクスは止まらない。

脅威的な速度で俺達に迫り、鋭く剣を振る。

やばい。

本当に速い。

少しでも気を抜いたら、そのままバッサリとやられてしまいそうだ。

ただ……

不思議と大きな焦りはない。

確かに速いが、でも、技術を感じられない。

アクスならもっと剣をうまく操るはずだけど、今は、力任せに強引に振っている感じだ。

「うー……わんっ!」

我慢できないといった様子で、サクラが前に出た。

地面を滑るようにしてアクスの横に回り込み、下から上に蹴り上げる。

アクスは剣で防ぐが、サクラは止まらない。

残りの足も蹴り上げて、逆さ立ちのような体勢に。

地面についた両手を捻り、体ごと回転させる。

自身を独楽のようにしつつ蹴撃を連続で繰り出した。

「ナイスだ、サクラ!」

アクスの動きが止まったところで、アイギスのワイヤーを放つ。

ワイヤーはアクスの両手を縛る形で体に絡みついて、その動きを封じた。

「ふう。よし、これで……」

「う……おおおおおぉっ!」

「嘘だろ!?」

アクスは力任せにワイヤーを引きちぎる。

人の力で解けないはずなのに……

「ふふ」

奥で様子を見る魔族は満足そうに笑う。

「いいでしょう、彼? 私のためにこんなにがんばってくれるなんて、嬉しいわ。このまま飼ってあげないと」

「やっぱり、お前が操っているのか!?」

「それだけじゃないけどね」

他にもなにかある?

……アクスの異常な身体能力に関することか?

「レイン、気をつけて」

セルがそっと言葉をかけてくる。

「たぶん、今のアクスは限界を超えた力を引き出しているわ」

「限界を?」

「洗脳されているから、普段、無意識にかけられているリミッターを外しているんだと思う」

人間の体は、30パーセントくらいしか能力を発揮できないらしい。

それ以上は体が耐えられず自壊してしまうからだ。

でも、洗脳されていることで、そのリミッターを外しているとしたら?

アクスが異常な身体能力を発揮していることも納得だ。

「でも……だとしたら、早く正気に戻さないと大変なことになる」

戦いが長引けば長引くほどアクスが傷ついていく。

手遅れになる前に、どうにかして無力化しないと。

「わ、ワタシもがんばりまひゅ!」

「やる! 悪い人間、倒す!」

二人はやる気たっぷり。

うん。

この人数差なら、なんとか……

「悪いけど、お気に入りは彼一人じゃないの」

「なっ……」

さらに奥から複数の男女が姿を見せた。

盗賊という感じはしない。

おそらく、捕まっていた人達だろう。

こちらもアクスと同じく虚ろな表情をしている。

「いざっていう時のために、コツコツと仕込んでおいたんだけど、まさか、こんなに早く役に立つなんてね」

「くっ……」

まずいな。

アクス一人で手こずっていたのに、増援が加わると手加減が難しくなる。

でも、相手は一般人だ。

盗賊なら遠慮することなく、やりすぎても気にしないんだけど……

さすがに、一般人を相手にそれはできない。

アクスも無事に取り戻したい。

どうする?