軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

811話 取り残された者

作戦は順調に進んでいた。

シフォンとショコラは陽動以上に役割を果たして、集まってきた盗賊達を次々と吹き飛ばしている。

援護をする必要がない。

というか、援護をする隙間がない。

アジトの裏手を見ると、捕まっていたと思われる人々が見えた。

セルが誘導して、安全な場所に誘導している。

「うん、向こうもうまくいったみたいだ」

「悪いやつ、いない? ぼく、戦う必要ない?」

「サクラちゃん、な、なんで残念そうなの……?」

「きゅーん」

サクラは寂しそうに鳴いた。

たぶんだけど……

戦いたいわけじゃなくて、いっぱい活躍して俺にいいところを見せたかったんだろう。

小さい頃、故郷で飼っていた犬がこんな感じだったのでよくわかる。

「「「キュイ」」」

偵察に放っていたうさぎ達が戻ってきた。

伏兵はいないようだ。

逃げようとする盗賊もいない。

「ありがとな」

「「「キュイ!」」」

お礼の野菜を与えて仮契約を解除する。

「この分なら、本当に俺達の仕事はないな」

表は問題ないから、アクスとセルの手伝いをするか。

人質は無事に解放されたみたいだけど、怪我をしている人がいるかもしれない。

治療をするとなると手が足りないだろう。

裏手に回ると、解放された人質達がいた。

まだ安心できないらしく、怯えた様子で身を寄せ合っている。

中には手足を鎖で繋がれた人もいた。

擦れ、血が滲んでいる姿が痛々しい。

「大丈夫ですか? 安心してください。俺達は冒険者です、みなさんを助けに来ました」

そっと声をかけて、敵ではないとアピールした。

「ほ、本当に助けてくれるんですか……? このまま、逃げられるんですか……?」

「はい、大丈夫です。ただ、他に捕まっている人がいるかもしれないのと、まだ戦闘が続いているので、ちょっと待ってください。それと、その間に治療をしましょう。フィーニア、頼めるか?」

「ま、任せてくらひゃい!」

こんな時まで緊張しなくても。

「治療しまひゅね……?」

「っ!?」

フィーニアが炎の翼を広げると、人質になっていた女性はびくりと震えた。

でも、傷が治っていくと、みるみるうちに顔を明るくする。

「すごい……あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

「えへへ」

誰かの役に立つことができて嬉しい。

そんな感じで、フィーニアはふにゃりと笑う。

「ぼくも怪我、治す!」

「サクラ、そんな能力持っていたっけ?」

「ない……がっくり」

「俺と一緒に見張りをしていようか。周辺の調査は完了しているけど、もしかしたら見逃しがあるかもしれないからな」

「がんばる! レインと一緒!」

サクラは尻尾をぶんぶんと振る。

嬉しい時だけじゃなくて、やる気を出す時も振られるみたいだ。

「アクスとセルは中かな?」

森の中に建てられた小屋を見る。

これだけの人が捕まっていたところを見ると、たぶん、地下室があるのだろう。

そのため、探索に時間がかかっているのかもしれない。

応援に行きたいけど、でも、ここで人質を守っておいた方がいいか。

サクラにも言ったけど、敵が来ないとは断言できない。

と、その時。

「……」

セルが険しい表情で外に出てきた。

視線は中に向けたまま、ゆっくりと後退する。

「セル?」

「……レイン、気をつけて。とんでもないものがいたわ」

セルの声は硬い

顔もこわばっている。

その視線を追いかけてみると……

「なっ!?」

アクスが現れた。

ただし、その剣をセルに向けている。

さらに、その後ろから一人の女性が現れた。

彼女は……魔族だ。

ライハに似た翼と尻尾……それと角を持っている。

「どうして魔族がこんなところに……いや、そういうことか」

先の事件で大量の魔族が召喚された。

この魔族はその中の一体なのだろう。

生き延びることができたものの、西大陸に帰る術を失い、盗賊達を従えて潜伏していた……こんなところだろう。

「あーあ、せっかくのんびり過ごしていたのに、まさか人間に見つかっちゃうなんて。また場所を変えないと」

「させると思うか?」

「レイン、ダメよ。今はアクスが……」

そういえばアクスの様子がおかしい。

こんな状況でも一言も喋らず、しかも、剣をこちらに向けていた。

目の焦点が合っていない。

生気が抜かれているような感じだ。

もしかして……あの魔族に操られている?