作品タイトル不明
810話 陽動。そして、その裏で……
作戦開始。
シフォンとショコラは姿を隠すことなく、真正面から盗賊団のアジトに向かう。
あまりに堂々としているものだから、見張り台に立つ盗賊は困惑して、仲間にどう報告すればいいか迷ってしまう。
そうしている間に、二人は門の前に到着した。
シフォンは剣を抜いて、
「メガボルト! そして……雷鳴剣っ!」
問答無用で魔法剣を放つ。
警告?
降伏勧告?
そんなものはいらない。
相手は盗賊。
善良な民の敵。
手加減する必要も慈悲をかける必要もない。
というわけで……
シフォンは初っ端から全力を叩き込んだ。
門が木端微塵に吹き飛んで、ついでに見張り台も崩壊する。
盗賊も悲鳴をあげながら吹き飛んでいった。
「おー。シフォン、いきなりやるな。ストレスでも溜まっていたのか?」
「常識ないなー、っていう顔をショコラにされるのは、ちょっと納得いかないんだけど……」
「なにを言っているんだ? ショコラは世界で一番の常識人だぞ」
ドヤ顔で語るショコラに、シフォンはため息をこぼす。
長い付き合いだけど、未だにショコラについてわからないことがある。
とてもマイペースだけど、とても調子のいい性格はどういうことなのだろうか?
一度、真剣に話し合った方がいいのだろうか?
「なんだ、敵襲か!?」
「おいおい、門が吹き飛んでいるぞ……」
「敵はかなりの手練だ! 全員、呼んでこい!」
奥からわらわらと盗賊が出てきた。
「陽動、成功みたいだぞ」
「なら、このまま粘らないとね。ショコラ、大丈夫?」
「おー、やってやるぞ」
「ふふ」
「どうしたんだ?」
「ううん、なんでもない。ただ……」
ちょっとおかしいけど、でも、とても頼りになる。
それが私の大事な仲間。
シフォンは心の中でそう呟いて、ショコラと一緒に盗賊達と戦闘を開始した。
――――――――――
「援護は……必要ないかな」
アジトの側面に回り、シフォンとショコラの戦闘を見る。
二人は大暴れ。
襲いかかる盗賊達をちぎっては投げてちぎっては投げて……
ぽーんぽーんと吹き飛んでいく盗賊を見ていると爽快な気分になる。
「わ、ワタシ達はここで様子を見ていましょう。そうしましょう」
「むー……ぼく、戦いたい! 悪、倒す!」
「や、やめよ? こ、怖いから……」
「むーん!」
「あうあう、なんでサクラちゃんは、そんなに好戦的なの? タニアさんみたいになっちゃったの?」
前に出ようとするサクラをフィーニアが必死に抑えていた。
身内贔屓ではなくて、彼女なら盗賊なんて敵じゃないはず。
それでもためらってしまうのは性格によるところが大きい。
まあ、とても慎重で盗賊にも情けをかけてしまうのはフィーニアらしい。
無理に矯正するつもりはない。
「こっちは問題なさそうだけど……アクスとセルはうまくやっているかな?」
――――――――――
「大丈夫ですか、お嬢さん。あぁ、なんていうことだ。可憐なあなたにこのような酷い仕打ちをする者がいるなんて……許せることではありません。大丈夫。この私が必ず敵を打倒してぐはぁっ!?」
人質になっていた女性にキラキラ笑顔で語りかけるアクスを、セルの裏拳が沈めた。
「気持ち悪いことをしていないで、早くしてちょうだい」
「リラックスしてもらうための冗談だろ? おっ、もしかして嫉妬をぐはぁ!?」
「殴るわよ?」
「もう殴っているからな……しくしく」
アクスは涙しつつ、しかし、仕事は丁寧で人質を次々と解放していく。
女性が多い。
ただ、若い男性や子供もいる。
どちらも奴隷商人に売るつもりだったのだろう。
「ったく、女子供ばかり狙いやがって。ここの盗賊、かなり悪質だな」
「……」
「どうしたんだ、セル?」
「ちょっと違和感があって」
女子供は奴隷商人に高く売ることができる。
しかし、若い男性はあまり高値にならない。
若い男性が欲しいという者は少なく、需要がないのだ。
それなのに、どうして捕らえていた?
セルは不思議に思い……
しかし、考えるのは後にしようと思考を切り替えた。
今は捕まっていた人々の安全が最優先だ。
とにかく解放を優先する。
「よし、あんたで最後だ。もう安心していいぜ」
アクスは牢に残った最後の女性に手を差し伸べた。
そして、にっこりと笑う。
そんな彼の笑顔につられるように、女性も微笑み……
「あなた、素敵ね」
「なっ……」
瞬間、アクスの意識は暗転した。