軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

807話 教えて、イリス先生

王都の外にある平原。

魔物の姿はなく、野生のヤギやゾウなどがのんびりと歩いている。

と、その時。

ドゴォオオオンッ!!!

強烈な爆音が響いて、野生動物達は慌てて逃げ出した。

爆音の中心にいるのはカナデだ。

覚醒状態で、パチパチと放電している。

「にゃー……とまあ、こんな感じかな?」

少し離れたところにティナとニーナを除く他のメンバーが。

覚醒状態のカナデを見て、イリスはふんふんと頷いている。

「どうやら、カナデさんは覚醒を完全に使いこなしているみたいですわね」

「えへへ、イリスのおかげだよ」

「むう……カナデに先を越されている、っていうのは、なんか悔しいわね」

「うむ。納得できないのだ」

「とても、ものすごく満足いきませんね」

「なんでそんなに反対意見が多いのかな!? かな!?」

覚醒を解いて、カナデは尻尾をぴーんと立てて抗議した。

「焦らなくても、みなさんも覚醒できるようになりますわ。今日は、そのための勉強会なのですから」

イリスを先生に据えて、覚醒の講義、及び練習を行う。

そのための集まりだった。

これから先、さらに戦いは激しくなるだろう。

その時に備えて、乙女達は強くなりたいと願う。

……大好きな主のために。

ちなみに、ニーナはすでに覚醒を習得していて、なおかつお昼寝の時間なので不参加だ。

ティナは、そんなニーナの面倒を見なければならない。

あと、彼女は最強種ではなくて人間の幽霊なので覚醒はできない。

なので、ティナも不参加だ。

「カナデ、どうやって覚醒をするの?」

「んー……しゅばってやって、むむむってなって、んにゃー! っていう感じ?」

「まったくわからない」

「わ、わたしの頭がよくないから理解できないんですね……あうあう、ご、ごめんなひゃい」

「大丈夫! ぼくもわからない!」

「さ、サクラちゃん……ワタシたち、ずっとダメっ子でいようね?」

妙なところで妙な友情が作られていた。

「自分も覚醒はできるけど、教えるのは得意じゃないっす」

「そこで、わたくしの出番というわけですわ。以前も教えたことがあると思いますが、改めて、覚醒についての講義と練習をしようかと」

「しかし、イリスは今、覚醒はできぬのでは?」

「ふふ」

イリスは不敵に笑う。

そして……

「「「おぉ!」」」

イリスの髪が足元に届くほど長くなる。

天使の翼が蝶のような羽に変わる。

「この通り、問題ありませんわ」

「にゃー、いつの間に?」

「まあ、つい先日、完全回復したのです。レインさまのおかげですね」

奪われたイリスの魂の一部はソウルイーターに吸収されていた。

あの後、レインはソウルイーターを悪用されないために完全破壊して……

そして、奪われていたイリスの魂の一部も解放された。

それによってイリスは完全に力を取り戻すことができたのだ。

「なので、今日はたっぷり教えることができますわ」

ふっと、イリスが元に戻る。

「ソラも覚醒できるようになるでしょうか……?」

「我は覚醒したいぞ! そして、ニーナみたく……!」

なにやら別の願望が混ざっている様子だった。

「もちろん、きちんと教えて差し上げますが……とはいえ、簡単にいかないことは理解してくださいませ。それほどまでに覚醒は難しいことなのです」

「カナデができているのに?」

「どういう意味!?」

リファの質問に、当のカナデがショックを受けたように尻尾をがくがくと震わせた。

「覚醒に必要なのは強い想い。愛でも憎しみでも、なんでもいいのですわ。とにかく、ひたすらに強い想いを持つことなのです」

「……イリスさんは、に、憎しみでしょうか?」

「……うんうん、ぼくもそう思う」

「ふふ」

フィーニアとサクラの呟きを気にすることなく、イリスは小さく笑ってみせた。

「あるいは、命の危機に直面することですわね。死を回避するために覚醒に目覚める、というパターンもありますわ」

「あー、自分、そのパターンっすね。西大陸にいた頃、かなり雑な扱いを受けて死にかけたことがあったっす。で、ばばーんと覚醒を」

「き、気楽に言うけど、かなり大変だったのね、ライハって」

「よしよし」

「はわー」

タニアとリファになでなでされて、ライハは幸せそうな顔になった。

魔族の尻尾がぴょこぴょこと揺れている。

尻尾が感情を表現するのは種族を問わないようだ。

「では……カナデさん、ライハさん」

「おっけー」

「おっす!」

カナデとライハはイリスの隣に並ぶ。

そして、それぞれ覚醒状態に移行した。

「では、わたくしも」

最後にイリスも覚醒する。

「講義は前にしました。なので、今回は実戦形式の訓練といきましょう」

「それって……」

「覚醒状態のわたくし達を相手にしてください。全力でこないと、すぐにやられてしまいますよ、ふふ♪」

「スパルタなのだー!?」

「でも、それくらいしないとダメということですね。わかりました、ソラはがんばりますよ」

「ぼくもがんばる!」

「が、がんばりまひゅ!」

「やる気はよし。では……」

……その後、郊外で何度も轟音が響いて問題になったとか、それはまた別の話。