作品タイトル不明
797話 最終決戦・その5
今のアリオスは時間を操ることができる。
幻影も作り出すことができる。
普通に攻撃をしても通用しない。
搦め手でいかないと。
「さあ、どうするレイン!?」
「くっ」
剣戟を繰り広げつつ、もう一つ、意識を外にやる。
素早く周囲の気配を探る。
目的の『アレ』は……いた!
アリオスに気づかれないように仮契約を交わす。
その後、とあることをして……
それから仮契約を交わした蜂に攻撃命令を出した。
アールビー。
猛毒を持つ蜂だ。
魔族となったアリオスに毒は完全に通用しないだろう。
でも、以前、タニアを麻痺させることができた。
ならアリオスも……
「甘いね」
アリオスはふっと笑い、後退。
雷撃を放ち、忍び寄ろうとしていた蜂を追い払ってみせた。
「やれやれ、油断がないね。これだけ激しい戦闘をしつつ、蜂を操ってみせるとは」
「どうして気づいた?」
「忘れたのかい? 以前、一度食らっているじゃないか。同じ手は通じないよ。やれやれ、僕はそこまで軽く見られていたのかな? 悲しいよ」
「軽く見てなんていないさ。性格はともかく、お前の戦闘センスはずっと認めていたよ。だから、今回は避けられるだろうとは思っていた」
「なに?」
蜂は牽制だ。
そして、アリオスの油断を誘うための罠だ。
本命はこちら。
キィンッ!
宙を舞う小瓶をナルカミの針で撃ち抜いた。
仮契約をしたのは蜂だけじゃない。
小鳥も使役しておいた。
そして小瓶を宙に運んでもらい、準備を整えた、というわけだ。
小瓶に入っていたのは同じく毒。
毒々しい紫色の粉塵が舞い散り、一気に広がる。
「くっ」
アリオスは咄嗟にハンカチを取り出して口元に当てるものの、それで完全に防ぐことはできない。
毒の粉塵がアリオスの体を蝕んでいく。
こいつもアールビーと同じ猛毒だ。
毒キノコの胞子を集めたもの。
「やってくれるね……自爆覚悟の攻撃っていうわけかい?」
「悪いが、自爆なんてするつもりはない」
毒の粉塵が舞い踊る中、俺はいつも通りに動いてアリオスに迫る。
『状態異常無効化』。
ルナと契約したことで得た能力が俺の身を守ってくれる。
ありがとう、ルナ。
「なっ……!?」
「ここで差を詰めさせてもらうぞ!」
アリオスの動きは鈍いけど、時間が経てば回復するだろう。
でも、それを待つつもりはない。
「セカンドフォーム!」
クサナギを無数の刃にして、嵐のようにアリオスに叩きつける。
しかし、幻影だ。
ふっと、アリオスの姿が消えた。
「この程度で……」
「そう来ると思った」
「っ!?」
背後から迫るアリオスを蹴りで迎撃した。
魔族になっても。
モニカやリースの能力を借りても。
根本的な戦い方というものはそうそう変わらない。
俺の知る通りにアリオスは戦う。
だから、ここぞという時でその動きを見極めることができた。
俺は、ずっとアリオスの戦い方を見てきた。
パーティーに貢献しようと、一番強いアリオスを参考にして、ずっと彼の動きを見てきた。
だから、わかる。
対するアリオスは、俺のことは見ていなかった。
それこそ道端に転がる石と一緒の扱いだった。
だから、わからない。
俺とアリオスの間にある差が縮まり……
そして今度は、俺が突き放していく。
「まだだっ、まだ終われない!!!」
アリオスが吠えた。
己の魂を書き換えてまでこの戦いを挑んできたのだ。
その執念は想像できないほど深く濃厚で、彼の力を大きく引き出していた。
そこまで、なのか。
どうしても俺に勝ちたいのか。
なら、とことん付き合う。
それが俺の……
「レイン!」
ふと、第三者の声が響いた。