作品タイトル不明
793話 最終決戦・その1
「ファイアーボール!」
「メガボルト!」
炎と雷が真正面から激突して、爆発した。
その衝撃波の中を進み、アリオスに剣を叩き込む。
前の刃で斬りつけて、柄を中心に回転。
連続で後ろの刃を放つ。
ただ、簡単にはいかない。
アリオスは巧みに魔剣を操り、連続攻撃を防いでみせた。
剣と剣で競り合う形になり、至近距離で睨み合う。
「やるね。前に戦った時よりも、格段に強くなっているじゃないか」
「お前に褒められても嬉しくない」
「やれやれ、つれないな。こうして、僕は君のことを好敵手と認めているのに」
「なにもかも、全部勝手なんだよ、アリオスは!」
俺と決着をつけたいのなら、個人で連絡をとってくればいい。
これだけの事件を起こして、たくさんの人を巻き込む必要なんてない。
「他の人を巻き込むな! 今回のことで、どれだけの人が傷ついたと思っているんだ!?」
今もまた、傷ついている。
たくさんの人が涙して、血を流している。
そのことが、どうしようもなく許せない。
「悪いね。僕にも都合があるのさ」
「どんな都合だ?」
「彼女達には色々とよくしてもらった。なら、その恩を返すべきだと思わないかい?」
「そんなこと気にしないと思っていたけどな」
「そこまで恥知らずじゃないさ。それに……」
アリオスは一度後ろに引いて、素早く足元の石を土と一緒に拾う。
それをこちらに投げてきた。
「くっ」
石飛礫を叩き落としても、砂は無理だ。
下手をすれば目をやられてしまう。
横に跳んで避ける。
しかし、そこにアリオスが先回りしていた。
右手で魔剣を操り、左手で魔法を放つ。
「ギガボルト!」
「物質創造! 重力反転!」
咄嗟に土の壁を作り出した。
雷撃によって簡単に砕かれてしまうものの、時間は稼いだ。
その間に地面を蹴り、重力から解放された身を高く踊らせる。
「セカンドフォーム、いけ!」
クサナギの刃を複数に分離させて、アリオスに向けて飛ばした。
360度から襲い来る刃の嵐。
初見のはずなのだけど……
「面白い技を使うね」
アリオスはしっかりと対処してみせた。
避けて、受け止めて、流して……
その全てを回避してみせる。
一度刃を戻して、ファーストフォームに戻す。
「いい、いいね。これでこそ、君と全力で戦うという僕の願いが叶う」
「アリオス、お前は……!」
「これだけのことをして、たくさんの人を巻き込んだ。そのおかげで、君は全力を出すことができる。僕のことを確かな『敵』と認識して、倒すべき『敵』と認識した。そう……そのためにこれだけのことをしたんだよ」
俺を本気にさせるために事件を起こした。
最低すぎる動機にさらなる怒りが湧いてきた。
同時に、少しだけアリオスのことを理解した。
アリオスは、それだけ俺と決着をつけたかったのだろう。
なによりもそれを最優先にして、魔族になってでも生きてきたのだろう。
俺が、どんなことをしても仲間を守りたいと願うように……
アリオスもまた、どんなことをしても俺と決着をつけたいと願っていたのだろう。
想いの内容に差はあるものの、でも、少しだけアリオスの気持ちを理解することができた。
「今日、僕は君を超える」
アリオスは笑う。
「君を超えることで、僕という存在を世界に認めさせる。そしてまた、僕自身も自分を認めることができる」
「そこまで……」
「さあ、決着をつけよう。どちらが上なのか、今日、ハッキリと決着をつけようじゃないか!」
「……ああ、わかった」
アリオスのことを少しは理解したものの、彼の行いを認めることはない。
絶対に。
でも……
最後まで付き合うことにした。
アリオスが望む決着をつけることにした。
それが今、俺がやるべき定めだ。
「ギガボルト!」
「なっ……!?」
雷撃魔法を放つと、アリオスが動揺を見せた。
勇者にしか扱うことができない魔法。
それを使うことで、うまくアリオスの動揺を誘うことができた。
「おぉおおおっ!」
「ちっ」
一気に距離を詰めて、アリオスの懐に潜り込む。
その勢いを乗せて、腹部に膝を叩き込んだ。