軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

792話 王族の戦い

「ドラグーンハウリング!」

ココロが魔法を唱えて、複数の魔物をまとめて吹き飛ばした。

しかし、それは意味のないように見えた。

十の魔物を魔石に変えたとしても、二十の魔物が新たに現れる。

それが繰り返されていて、城は完全に包囲されていた。

終わりが見えない絶望的な戦いだ。

だとしても、ココロは諦めることなく戦い続ける。

「グングニルツイスター!」

「イグニートランス!」

「サイクロン!」

中級魔法を連発する。

魔力消費はほどほどで、それなりの威力を持つ。

魔物相手ならこれで十分だ。

それに、上級魔法を使えば街を巻き込んでしまう。

避難はほぼほぼ完了していると聞いているが、戦いの後のことを考えると、できることなら被害を出したくない。

「とはいえ、そうも言ってられないな」

魔物の勢いがどんどん増している。

最強種達が力を貸してくれているものの、彼女達は魔族の相手がメインだ。

魔物はこちらでなんとかするしかない。

「……仕方ない」

街に被害が出ることは気にしない。

そう思考を切り替えた。

今、この場で必要な最適な行動を導き出す。

良くも悪くも、ココロ・ヴァン・ロールリーズという女性は大胆な行動を取ることができるのだった。

城門の前に移動して、最前線に立つ。

突然現れたココロに驚いたのは騎士達だ。

王女が最前線で戦うなんて聞いたことがない。

「ココロさま、お下がりください!」

「あなた様の身になにかあっては……」

「それは、今は必要ない議論だ。この戦いを乗り切らなければ、国の未来はない。故に、王女などの身分は関係ない」

「し、しかし……」

「ここが最適なのだ。条件が一番いい」

不敵な笑みを浮かべつつ、ココロは慌てる騎士達を無視して、迫り来る魔物の群れに視線を移動させた。

街中を縦断しつつ、魔物の群れが城に向かう。

それはまるで津波のよう。

全てを飲み込み、全てを奪う。

ただ、それはそれでココロが望む展開ではあった。

「いいぞ。思った通り、こんなにも都合の良い的になってくれている」

ココロは杖を構えて、深く集中した。

魔力を集めて一点に収束。

魔法の構造式を展開。

最後に、奇跡を顕現させる力ある言葉を口にする。

「イクシオンブラスト」

静かに呟いた。

そして……異界の幻獣が召喚される。

紫電をまとう幻獣は高らかに吠えた。

それを合図として、紫電が勢いよく放たれる。

カッ! と、一瞬ではあるが世界が白に染まる。

それはまるで、幻獣の力が世界を塗り替えるかのようだった。

その力に魔物ごときが抗えることはない。

魔物の津波は一瞬で消失していた。

ごっそりと中央が削れている。

全てを殲滅することは敵わないが、一瞬で半数以上を削っていた。

「す、すごい……」

「さすがココロさま!」

「いけるぞ、これならいける!!!」

兵士達が湧き立つ。

それもココロの狙いに含まれていた。

単純に敵を倒すのではなくて、効率よく、効果的に倒すことで味方を鼓舞することができる。

単純な方法ではあるが、しかし、実に効果的でもある。

「ふむ。我が軍はたのもしいな」

「姉さん!」

「お姉さま!」

ふと、男女の声が聞こえてきた。

それはココロにとって、とても懐かしく、そしてなによりも愛しいもの。

「ユウキとサーリャか。無事か?」

「はい、私は問題ありません」

「っていうか、僕がここにいることになんの疑問も持たないんだね」

「外に出ていたユウキがいつの間に戻っていたのか? と言ってほしいのか? それは無駄な質問だ。このような事態になっている以上、一部の部隊を連れて援護に戻る。当たり前の策ではないか」

「心配して駆けつけたのに、なんていうかこう……姉さんは相変わらずだなあ」

「ですが、それがココロお姉さまというものでは?」

「そうなんだけどね」

弟と妹が揃って苦笑した。

そんな二人の反応が理解できず、ココロは小首を傾げる。

「なんの話だ?」

「いいえ、なんでもありません」

「それよりも、僕達も手伝うよ」

ユウキは両手に剣を持つ。

彼の剣技はAランクの冒険者並だ。

サーリャは杖を手にした。

ココロのように超級魔法を使うことはできないが、回復魔法はそれなりに得意だ。

後方でサポートをすることができる。

「ふむ? 味方が増えることは嬉しいが、できるのならお前達には後ろに下がっていてほしいのだが……」

「それは王族だから?」

「それもあるが、大事な家族の心配をするのは当然だろう?」

「ありがとう、姉さん。でも、それはダメだよ」

「身分は関係ないという話、私達のところまで聞こえてきましたよ」

「む」

「それに今は、私達がここに立つことが大事です」

「ここにいるだけで旗となってみんなを鼓舞することができるからね。最前線で戦う……それこそが、今、僕達が果たすべき役目だよ」

「王族としての務めでもありますね」

「……ちなみに、父上は?」

「裏門の方で指揮をとっています」

「やれやれ」

ココロは苦笑した。

どうして私達の一族は、皆、こうもバカなのだろう……と。

でも、それはそれで悪くない。

自然と笑みがこぼれる。

「なら、いくぞ。ユウキは私と前に。サーリャは後方でサポートを」

「うん!」

「はい!」

いざという時、国ではなくて民を守るのが王族の務めだ。

それを果たすため、王子と王女は戦いに身を投じるのだった。