軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

791話 勇者の戦い

「メガボルト!」

雷が落ちて、シフォンが持つ剣に落ちる。

そのまま彼女を焼く……なんてことはない。

紫電は剣に留まり、その輝きが増していく。

「雷鳴剣!」

シフォンの魔法剣が魔族を一刀両断した。

魔族は両手でガードしようとしたものの、それもまとめて叩き切っている。

魔族は高い生命力を持つが、体を両断されてはどうしようもない。

動きが止まり、瞳から命の輝きが消えて……ほどなくしてその体は塵となる。

「ふぅ」

戦いはまだ続いている。

休んでいるヒマなんてない。

それでも呼吸を整えなければ動き続けることは叶わない。

数秒だけ動きを止めて、その短時間で呼吸を整えた。

「よし」

自身を整えたシフォンは剣を強く握る。

「今ので十を超えたかな? さすがに、ちょっと大変だけど……でも、まだまだこれからだよ」

騎士団の活躍で、民の大半を城に避難させることができた。

これで人的被害を気にすることなく戦うことができる。

建物は壊してしまうものの……

そこはもう見逃してほしい。

魔族を相手にそこまで気にしていたら戦いにならないのだ。

「次は……どこ?」

シフォンは剣を構えつつ、慎重に街中を移動する。

彼女は遊撃隊だ。

城の守りはカナデ達に任せた。

逆にシフォンは街に出て、敵を減らしつつ、その動き、策を探る。

故に、一人で戦闘を繰り返していた。

一歩間違えれば多くの敵に囲まれてしまう。

少しの油断が死に繋がる、誰よりも危険な場所に立っている。

それでも、シフォンは怯むことなく戦う。

迷うことなく、勇気を持って前に進んでいく。

勇者だから。

「って……ちょっとまって。あれはなに?」

戦い続ける中、ふと、シフォンは気になるものを発見した。

空き家から妙な魔力を感じて調べてみると、床に魔法陣が描かれていて、その上に暗い色を放つ宝石が置かれていた。

見たことのない魔法陣と宝石。

ただ、そこから放たれる魔力には覚えがあった。

「これ……アルトリウスの零式監獄……?」

とある予想をして、シフォンはゾッと背中を震わせる。

魔物と魔族に国を襲わせる。

これが敵の本命ではなくて、第一歩だとしたら?

さらに零式監獄を発動させて、徹底的に追い詰めることが本当の目的だとしたら?

「まずいまずいまずい……」

シフォンは剣を振り、魔法陣と宝石を砕く。

それでも嫌な感じは消えてくれない。

きっと、これと同じものが街中の至るところに設置されているのだろう。

一つや二つ破壊したところで今更止めることはできない。

人を使って解除して回るか。

あるいは、対抗するための結界を展開するか。

どちらにしても一人ではどうすることもできない。

今すぐに城へ戻り報告を……

「死……ネ」

「しまっ……!?」

考え事をしていたせいで魔族が忍び寄っていたことに気づくのが遅れた。

獣の頭部を持つ魔族はシフォンの背後から接近して、鋭い爪を振り下ろす。

シフォンは強引に体を捻り、回避しようとして……

ガッ!!!

それよりも先に黒の盾が彼女を守る。

「ホーリーアロー!」

同時に光の矢が飛んできて、魔族の足を撃つ。

その好機を逃すことなく、シフォンは回避から攻撃行動に転換。

大きく踏み込んで、同時に剣を振る。

勇者のために作られた彗星の剣は主の期待に応えて、魔族を一刀両断した。

「はぁっ、はぁっ……今のは……」

「ダメですよぉー、油断したらぁー」

「まったくだ。シフォンは私達がいないとダメだなあ」

「……あ……」

誰よりも聞き慣れた声。

大好きな人達の声。

ゆっくりと振り返ると……

ニヤリと不敵に笑い、完全武装したショコラとミルフィーユの姿があった。

「ショコラ! ミルフィーユ!」

シフォンは我慢できず、涙をこぼしつつ二人に抱きついた。

「ふふ、シフォンは甘えん坊さんですねぇー」

「うぅ、だって……だって……」

「私達なら、見ての通り大丈夫だぞ。小動物みたいな最強種が治してくれたからな」

フィーニアのことだろうか? とシフォンは頭の中で考えた。

だとしても、小動物みたいな、はなかなか酷い評価ではないか。

でも、それはそれでショコラらしい感想で……

本当に二人が治ったのだということを実感して、また泣けてきた。

「よしよし」

「うぅ、子供扱いしないで……」

「でも、今のシフォンは子供っぽいぞ?」

「……ふんだ」

シフォンは涙を拭い、心を落ち着ける。

二人が回復したことは心底嬉しい。

でも、今は喜びを分かち合うのではなくて、やらなくてはいけないことがある。

「ショコラ、ミルフィーユ……力を貸して」

「もちろんですー」

「おー!」