軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

794話 最終決戦・その2

相手が人間なら、これで勝負が決していたかもしれない。

猫霊族に近い力を得た状態で放つ膝蹴り。

そんなものを腹部に受けたら、普通は立っていることはできない。

しかし……今のアリオスは魔族だ。

「やるね」

分厚いゴムを蹴ったような感触。

膝蹴りを受けてもアリオスは怯まない。

わずかに体勢を崩しただけだ。

すぐにクサナギで斬りかかるけど、魔剣で防がれてしまう。

「まさか、レインが雷撃魔法を使うなんて。驚いたよ。君は勇者になったのかい?」

「いいや。色々とあって使えるようになったんだ」

「寂しいな、詳細は教えてくれないのか」

「そんな間柄でもない……だろう!」

刃を踊らせて、そして、合間にもう一度アリオスを蹴りつけた。

ただ、ダメージを与えることを目的にしていない。

蹴った反動で距離を取り、安全圏に退避する。

「ギガボルト……マルチショット!!!」

複数の雷撃が宙を翔ける。

ソラと契約したことで得た、複数詠唱の力だ。

ファイアーボールを複数放つことができるのなら、雷撃魔法も同じ。

試したことはなかったのでぶっつけ本番になったけど、うまくいったみたいだ。

「ちっ」

さすがにこれはまずいと思ったらしく、アリオスは回避、あるいは防御に専念する。

雨のように降り注ぐ雷撃の中を駆けて、時に、魔剣で迎撃した。

このまま押し込む。

俺は前に出て、ポーチから小瓶を取り出した。

それを頭上に放り、ナルカミから針を射出して割る。

小瓶が割れると煙が周囲に広がる。

「これは……」

「単純だけど効果はあるだろう?」

目隠しの中に突撃。

再びアリオスに接近した。

クサナギの斬撃と蹴撃を織り交ぜて、連続攻撃を叩き込む。

致命傷は遠い。

しかし、小さなダメージを与えることは成功している。

塵も積もれば山となる。

アリオスが倒れるまで攻撃を続ければいい。

「ふふ」

どちらかというとアリオスが劣勢なのに、ヤツは笑みを浮かべていた。

楽しそうに。

嬉しそうに。

満足そうに笑っている。

「さすがレインだ。やるね」

「お前に褒められても嬉しくないな」

「そう言わないでくれよ。本心なんだ。今は、君のことをちゃんと認めているのさ。そう……僕が全力で、なにもかも振り絞り倒すのにふさわしい強敵だ、とね」

「っ!?」

瞬間、ゾクリと悪寒を覚えた。

以前、ホライズンの領主と戦った時。

死神をぶつけられる魔法を受けた時と似た感覚。

死がすぐ隣に迫る恐怖。

まずい。

本能が警告をしてきた。

それに従い、俺は急いでアリオスから離れる。

「さすがだね。あのまま攻撃を続けたら、コレを食らわせることができたんだけど」

「それは……」

アリオスの魔剣に異変が起きていた。

暗い暗い、黒い光を放っている。

それだけじゃなくて、黒い炎も揺らめいている。

それはまるで太陽だ。

全てを飲み込む欲望の太陽。

「君が色々な最強種と契約して力を得たように、僕も力を得たんだよ。魔族になって、魔剣を得て……その力を今、見せようじゃないか」

アリオスは……笑う。