作品タイトル不明
790話 仲間達の戦い
「うー……にゃん!!!」
カナデは大きく拳を振りかぶり、気合と共に前に突き出した。
彼女の数倍の大きさを持つ魔物が吹き飛ばされた。
悲鳴をあげつつ、何度もバウンドして地面を転がる。
そのまま、ほどなくして絶命して魔石に変わった。
「ああもうっ、キリがないよ!」
「泣き言なら後にしなさい」
「うむ。今は戦うことに集中するのだ」
カナデ達は仲間と合流して、一箇所に集まっていた。
というのも、敵である魔物や魔族が一斉に王城を目指してきたからだ。
カナデ達は最強種。
人間の国に所属していないため、ぶっちゃけたところ、国がどうなろうと気にしない。
困ったなあ、くらいしか考えていない。
ただ、王城は避難所になっていた。
王都中の人が逃げ込んでいる。
国はどうでもいいけど、人間を見捨てることはできない。
どうしようもない人間もいるけど、でも、優しい人間もたくさんいる。
一緒に戦ったことがある。
おいしいものをくれたことがある。
優しい笑顔を見せてくれたことがある。
そんな彼ら、彼女らを見捨てることはできない。
故に、カナデ達は戦う。
本当はレインを探しに行きたいけど、それをぐっと我慢して……
仲間達と協力して、人間を守るために戦う。
「レインは大丈夫かな?」
とはいえ、やっぱり気になってしまう。
主と使い魔だから、ではなくて。
恋する乙女とその想い人、だから。
どうしても大好きな人のことを考えてしまう。
「カナデ、レインのことを信じられない?」
リファは血の鎌を振りつつ、そう問いかけた。
カナデは微妙な顔に。
「もちろん信じているよ? でもでも、それとこれは別で、気になっちゃうのー」
「ボクは気にしない」
「えぇ」
「女は帰るところを守るもの。お母さんがそう言っていた」
「にゃん?」
「惚れた男を信じるのも女の仕事」
「にゃ!?」
リファの想いを知らない……というか、まったく気づいていなかったカナデは、突然の発言に驚いてしまう。
尻尾がピーンと立つ。
一方で、タニア、ソラとルナは落ち着いたものだった。
タニアは直接相談されていて……
ソラとルナは聡く、最近のリファの言動を見て、なんとなくではあるものの察していた。
それはイリスも同じ。
ニーナは察していないものの、同じ『好き』仲間と思っていて、特に驚かない。
「い、いつの間に……またライバルが」
「あはは、大変やなー」
「笑い事じゃないよ!?」
「うちにとっては笑い事やな。まあ、みんな大変やろうけど……」
「い、今はここを、の、乗り切らにゃいとダメでひゅ!」
「私の語尾!?」
「か、噛んでしまっただけでしゅ!?」
魔物をぶん殴りつつ、カナデは思う。
とても濃いメンバーが集まった。
その中では、自分は薄味なのでは?
珍しい猫霊族というアドバンテージはなくなり、レイン争奪レースに思い切り出遅れてしまったのでは?
「が、がんばらないと!」
この一大事に妙な危機感を燃やして、不純な動機で戦うカナデ。
でも、それはそれで彼女らしい。
大義のために戦うことはない。
正義のためでもない。
自分が望むことのために、大事な人の笑顔のために。
戦う理由はそれで十分。
それ以外はいらない。
カナデは……彼女達の行動原理は、たったそれだけなのだ。
だからこそ強く、尊い。
「くんくん! 嫌な匂い、魔族、来る!」
サクラが皆に警戒を促した。
「よーし! もっともっとがんばるよ!」
「わたし、も……がんばる」
カナデとニーナは気合を入れて……
「「んっ!!!」」
覚醒状態に移行した。
残りのメンバーも身構えて、魔力や力を溜める。
敵がなにを企んでいるか、そんなものは関係ない。
大事な主にケンカを売ったこと、とことん後悔させてやろう。
そして……
乙女達は戦い続ける。