軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

783話 切り札の正体は……

「む……う」

奥で指揮をするジャイルが苦い顔をした。

それもそのはず。

イリスが参戦したことで、一気に戦況がこちらに傾いたからだ。

カナデ、リファ、アクス、セル……そして俺。

どちらかというと物理戦に特化している。

まとめて複数の敵を相手にするのは厳しい。

相手を必要以上に傷つけず無力化するのも大変だ。

でも、魔法を使うことができればその問題は解決する。

一度に広範囲を攻撃して。

しかも、敵の動きを封じるような効果を付与できる。

イリスはそれを見事にこなしてみせて、攻撃をする度に、まとめて複数の騎士を戦闘不能に陥らせていた。

「あら、この程度ですか? つまらないですわね」

押されていく騎士達を見て、イリスはにっこりと笑う。

まさに小悪魔だ。

「敵にした時はとんでもねえが……」

「味方になると、ものすごく頼りになるわね」

アクスとセルが感心するくらい、イリスは活躍していた。

二人の称賛を聞いて、イリスはますます得意そうな顔に。

「とてもいい気分ですわ。さらなる力を見せて、もっと称賛を集めたいですわね」

「にゃ!? ダメだよ、イリス。やりすぎはダメっていうのもあるけど、そんなことをしたら街に被害が出ちゃうから」

「……冗談ですわ」

「あれ、本気だよね?」

「……ノーコメントで」

リファの問いかけに、俺はついつい視線を逸らしてしまうのだった。

なにはともあれ、このチャンスを逃すつもりはない。

一気に攻勢に出て……

そのままジャイルを捕える。

リーダーが落ちたとなれば、この馬鹿げた戦いも終わるだろう。

「イリスはそのまま騎士達を無力化してくれ!」

「かしこまりました」

「カナデとリファはイリスの援護を」

「らにゃー!」

「おっけー」

みんな、こちらの意図を察して迷うことなく動いてくれる。

「なら、俺達はあのバカ貴族を捕まえるか」

「それでいいのよね、レイン?」

「二人も察しがよく助かるよ」

一時期、アクスとセルとパーティーを組んでいた。

その時の名残なのか、こちらの考えていることを正確に、しかも早く理解してくれる。

アクスとセルとの間にある信頼を感じることができて、こんな時だけど少し嬉しかった。

「いくにゃ!」

まず最初にカナデが突撃した。

敵からしたら、真に警戒するべきはカナデではなくて、まとめて味方を行動不能にしてしまうイリスの方だ。

しかし、だからといってカナデを無視することはできない。

彼女を放置したら、それはそれで大きな損害が出てしまう。

突撃して前線をかき乱す。

これがカナデなりの援護なのだろう。

「来たれ、嘆きの氷弾」

「ブラッドシュート」

イリスは氷で騎士達を封じ込めて……

リファは、近づいてくる騎士達を迎撃した。

それを繰り返していると、ほどなくして騎士達の布陣に穴が空いた。

その穴は最奥にいるジャイルに繋がっている。

賢いイリスのことだ。

こうなることを計算して攻撃を続けていたのだろう。

「よっしゃ、いくぜ!」

「道を開けなさい!」

アクスとセルも突撃した。

俺も二人に続いて、敵陣に飛び込んでいく。

狙うはジャイル。

邪魔する騎士達をなぎ倒しつつ、一気に前へ進む。

突撃を繰り返す。

一点突破だ。

これ以上被害を出さないために、ここで、すぐに終わらせてみせる。

そう決意していたのだけど……

「そこまでだ」

ジャイルがニヤリと笑う。

そして彼は……切り札を使う。

「なっ……!?」

戦場に新しい人影が現れた。

その人は……

「サーリャさま!?」