作品タイトル不明
781話 なぜ?
奮闘するレイン達を見て、ジャイルは疑問を抱いた。
なぜ、彼らは戦うのか?
命を賭けてまで戦うのか?
犠牲を許せないと言う。
1万を救うために100を犠牲にするのは認められないと言う。
なんて甘い考えなのだろう。
戦場で犠牲をなくすことなんてできない。
必ず犠牲が生じる。
ジャイルとて、それを良しとしたことはない。
失われる命がないのならそれに越したことはない。
ただ……
大義を成し遂げるために犠牲はつきものなのだ。
改革に痛みは必要だ。
対価を払わずに望んだものを得るなんて、そんな夢物語はない。
必ず血を流さなくてはいけない。
それを理解しているからこそ、ジャイルは革命という強硬手段に出た。
多くの者が賛同してくれた。
支持者、協力者も得た。
だからこそ、こうして剣を取ることができた。
立ち上がることができた。
それなのに……
どうして英雄は邪魔をするのか?
そして、どうして騎士達の動きが鈍くなっていくのか?
「あんた達は、本当にそれでいいのか!?」
戦場でレインが叫ぶ。
剣を振りつつ、騎士達の攻撃を防ぎながら想いをぶつける。
「犠牲は仕方ないとか言うが、される方はたまったものじゃないだろう!? 納得なんて、できるわけがないだろう!? それを仕方ないと、押しつけるのか!!!」
「くっ」
「上に立つ者が命の選別なんてしたらいけないんだよ。犠牲を認めたらダメだろう。なによりも……」
レインが剣を振る。
騎士が怯む。
「痛みが必要とか言うが、その痛みをまったく感じていないようなヤツの話、従えるわけないだろう!!!」
その言葉は、わずかにジャイルの胸に刺さった。
国の未来のため革命を起こした。
犠牲は仕方ない。
血が流れるのは仕方ない。
ただ、実際に痛みを感じるのは民だ。
最前線で戦う騎士達だ。
ジャイルが血を流すことはない。
それは仕方ないことだ。
ジャイルは次の指導者として立たなくてはならない。
命を次に繋げなくてはいけない。
だから、ここで死ぬようなことは許されない。
それが義務であり責務なのだ。
しかし。
それは言い訳ではないか?
実際、レインが言うようにジャイルが血を流すことはない。
痛みを感じることはない。
彼は安全な場所にいる。
その事実が、わずかにジャイルの心をざわつかせる。
「……だが」
ジャイルは唇をわずかに噛んで、その痛みで心を治めた。
すでに戦いは開始された。
今更引き返すことはできない。
彼にできることは、当初の計画を成し遂げて、自分を慕う者達の期待に応えることだ。
戦う。
邪魔をする者がいるのなら、英雄であろうと斬る。
それだけの覚悟をしていた。
……ただ、それはジャイルだけだ。
騎士達はレインの言葉に動揺して、乱れる感情をうまくコントロールすることができていない。
それは動きに如実に現れ、鈍く、遅くなっていく。
本当に正しいのか? 間違っていないのか?
そういった疑問が枷となり、騎士達の剣を迷わせていく。