作品タイトル不明
776話 終わりの始まり
「……ん……」
カーテンの隙間から光が差し込み、それで目が覚めた。
暗闇の底に沈んでいた意識が浮上して、ゆっくりと目を開ける。
「朝か……」
昨夜は遅くまで起きていたせいか、まだ少し眠い。
二度寝したいところだけど、そういうわけにはいかないか。
「よし!」
軽く頬を叩いて気合を入れた。
それから、いつもの服に着替えて装備を身につける。
本来なら城内に装備を持ち込むことは禁止されているのだけど……
俺やシフォンは例外で認められていた。
ユウキやサーリャさまが手を回してくれたみたいだ。
ありがたい。
「確か、会議があるんだよな」
朝食の後、代表者を集めての会議があると聞いている。
そこで今後の方針を決めるらしい。
「貴族の謀反、冒険者狩り、そしてアリオス……どうなるかな」
先が想像できない。
ただ……
どんなことになったとしても、大事なものは絶対に守ると、決意を新たにした。
――――――――――
「久しぶりだ……と挨拶をしたいところだが、のんびりと話をする時間はないのでな。すぐ本題に入らせてもらう」
謁見の間。
アルガス王と顔を合わせるのだけど、彼は以前と変わりのない様子で言う。
壮健なようでなによりだ。
俺の他、シフォンとユウキとサーリャさまがいる。
みんなやアクス達はいない。
全員が揃うと話がごちゃごちゃになってしまいそうなので、俺が代表者として会議に参加することになったのだ。
シフォンは勇者なので同席は当たり前。
ユウキとサーリャさまは言わずもがな。
「現在、この国は二つの危機に瀕している。一部の貴族による謀反の計画と、そして冒険者狩りだ。どちらも放っておいていい問題ではない。そして、後手に回るのではなくて、先手を取らなければならない」
もっともな話だ。
この問題で先手を取られてしまうと、大きな被害が出てしまうだろう。
そうなる前に敵を潰す必要がある。
「謀反についてだが、そなた達が持ち帰った資料で、多くの敵の情報を得ることができた。感謝する」
「いえ」
「敵は数日以内に行動を起こすだろう。その時、連中は終わりとなる。国を揺るがそうとする存在は、国が全力をもって排除しよう」
そこで、王は憂い顔になる。
「ただ……元勇者が関わっているという冒険者狩りについては、未だ情報が少ない。謀反となにかしら関わりがあると思うが、詳細は不明だ。元勇者の動き次第では、もしかしたら状況をひっくり返されるかもしれない。故に、その対処をレイン・シュラウドとシフォン・ノクス達に任せたい」
「「はい」」
「うむ、頼もしい返事だ」
即答すると、王は満足そうに頷いた。
「そして、ユウキ。サーリャよ」
「はい」
「なんでしょう?」
「元勇者は魔族と手を組んでいると聞いた。ならば今回の事件、魔族が絡んでいる可能性もあり……予想外の事態に見舞われるかもしれぬ。ユウキとサーリャは、その時のために待機してほしい」
「わかりました」
ユウキは頷いて、
「……一つ、質問をいいでしょうか?」
サーリャさまは逆に質問を返した。
王が頷くと疑問を投げかける。
「姉さまはどうされたのですか?」
「ココロか……」
ココロ。
それが、サーリャさまの姉の名前なのだろう。
王は苦い顔をする。
「あやつにはいくらかの騎士を預けて、いつでも動けるように待機させている。謀反が起きた場合、最初に動いてもらう予定だ」
「ココロ姉さまが自ら?」
「……あやつを鎖に繋いでおくことは不可能だ。ならば、猟犬として解き放つ方がまだいくらかマシだ」
「そうですね……ココロ姉さまですから」
「うん、ココロ姉さんだからね……」
親子三人、なぜか諦めたような顔をしていた。
この三人にこんな顔をさせるなんて……
ココロという王女は、いったいどんな方なのだろう?
会ってみたいと思う反面、できれば関わりたくないな、と矛盾した感想を抱いてしまうのだった。
「まあ、ココロのことはよい。今は謀反と冒険者狩りに集中する」
「「「はい」」」
「例のものを」
王の近くに控えていた文官から書類を受け取る。
「これは……敵の情報ですね」
「うむ。その内容故、持ち出すことはできぬが……今ここで目を通して、できる限りを記憶してほしい」
「わかりました」
できるだけ早く、そして正確な情報を頭に叩き込んでいく。
謀反を計画する貴族の名前。
それを叩き潰す計画の詳細。
それと、一般には回っていない冒険者狩りの情報。
アリオスの今までの行動パターンや今後の予測などなど。
役に立つ情報がたくさん並んでいた。
ありがたい。
これがあれば、今後、かなり動きやすくなるだろう。
全てに目を通してしっかりと覚えたところで文官に書類を返した。
「せわしなくてすまないな」
「いえ、大丈夫です」
「では、今の情報を元に、今後の予測の精度をさらに高めるとしよう。そのために皆の意見を……」
「失礼します!」
突然、謁見の間の扉が開いて兵士が駆け込んできた。
文官が不快そうな顔をして怒鳴る。
「何事だ、騒々しいぞ!」
「も、申しわけありません! しかし、火急の件にて……」
「なにが起きた?」
王は静かに問いかける。
兵士は顔を青くしつつ、あらん限りの大きな声で報告をした。
「謀反です! 侯爵家を始めとする複数の者が王に対して剣を向けました!!!」