作品タイトル不明
756話 久しぶりの王都
ライハの話を聞いて、その後、旅を再開した。
といっても、その時点でほぼほぼ行程を完了していた。
さらに半日ほど馬車を走らせて、目的地に到着。
それから精霊族の里を経由して王都に移動した。
「到着なのだ!」
「ふぅ……地面が心地いいです」
馬車から降りることができて、途端にルナとソラが元気になった。
よほど嬉しいらしく、笑顔が輝いているかのようだ。
ただ、若干ふらついている。
「レイン、これからどうするの? すぐにお城に行く?」
「いや。まずは宿に行こう」
王都は人が多いから、早くしないと良い宿はすぐに埋まってしまう。
それに、ソラとルナは休憩が必要だ。
「それなら、二手に別れればいいんじゃない?」
考えるような仕草をしつつ、タニアが言う。
「あたしらはソラとルナを連れて宿を探しておくから、レインは城に行ってくるといいわ」
「せやなー。ソラとルナに休憩が必要なのは確かやけど、でも、ラウドネアの話は少しでも早く伝えた方がええで」
「……そうだな、そうしようか」
二人の言う通り、その方が効率がいい。
王都なら滅多なこともないだろうし、分かれて行動しても問題はないはずだ。
「じゃあ……俺、カナデ、ティナ、ライハ。それと……イリス。一緒に城に来てほしい」
「あら、わたくしもですか?」
イリスはかつて村を壊滅させたことがある。
表向きは俺に討伐されたことになっているが、生きていることが知られたら大きな問題になるだろう。
ただ……
いつまでも逃げていられないし、避けて通ることはできない問題だ。
ラウドネアの件と合わせて、ここらで決着をつけておきたい。
あと、イリスは聡明で深い知識を持っている。
ユウキや王と話をするにあたり、その力を貸してほしい、という思いもある。
「わかりましたわ。レインさまがそう仰るのなら、どこへでもついていきましょう」
「助かるよ。ただ、なにがあってもイリスのことは守るから」
「……」
「イリス?」
「い、いえ……不意打ちだったので、少しときめいてしまいました」
イリスは頬を染めて……
そして、他、いくらか数名がジト目に。
「えっと……それでいいかな?」
「ま、あたしはいいわよ。宿をとったら、また連絡するわ」
「ボク、王都は初めて。楽しみ」
「か、観光する時間はあるでしょうか?」
「わくわく、わくわく♪」
……大丈夫かな?
ちょっと不安になるけど、今はタニア達を信じるしかないか。
――――――――――
「んー、どの宿がいいのかしら?」
「あまりパッとしないのだ」
大通りを歩くタニア達は、のんびりと王都を散策しつつ宿を探す。
10人以上の大所帯だ。
複数の部屋が必要になる。
それに、しっかりと休みたいので、安宿は勘弁願いたい。
あそこはどうだろう?
いや、外観が微妙だ。
ここはどうだろう?
いや、おいしい匂いがしない。
そんなこんな、あれこれと意見を交わして……
ほどなくして一軒の宿に辿り着いた。
大きな宿で、外観は花壇で綺麗に飾られている。
外壁が白く塗られているからか、清潔感もあって好印象を抱くことができた。
「き、綺麗なところでしゅね!」
「おいしい匂い、する!」
「お得……発見?」
「とりあえず、見てみましょうか」
タニアが先導して宿に入る。
中は広く、左手に大きな食堂が見えた。
たくさんの人が利用して、賑わっているようだ。
右手は上に続く階段。
そして中央に受付のカウンターが。
「いらっしゃいませー!」
「十二人なんだけど、部屋は空いているかしら?」
「そうですね……はい。問題ありませんよ。ただ、さすがに十二人部屋というのはないので、四人部屋を三つか六人部屋を二つになりますが」
「値段は?」
「このような感じに」
「へえ、悪くないわね」
食事はなし。
ただ、部屋に風呂がついていて、ちょっとした小部屋もセットになっていた。
かなりの好条件なのに、なかなかのお手頃価格だった。
「みんなはどう思う?」
「「「異議なし」」」
「よし。じゃあ、六人部屋を二つで契約するわ。期間は……ひとまず一週間で。後々で延長はできる?」
「はい、大丈夫ですよ」
「ありがと。じゃあ、これはお代ね」
タニアはレインから預かった財布を取り出して、受付嬢に金貨を渡した。
代わりに部屋の鍵を二つ、受け取る。
「部屋割りは後で決めましょう。とりあえず、ソラとルナを休ませて……あら?」
ふと、そこでタニアは左手にある食堂に目をやる。
「……みんなは、ちょっと先に部屋に行っててくれる?」
「タニア、は……どう、するの?」
「知り合いがいたから、ちょっと挨拶してくるわ」