軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

754話 竜と吸血鬼のガールズトーク

湖で起きた小さなトラブルの後、リファは野営地に戻った。

ただ、眠気はない。

胸がドキドキする。

頬が熱い。

とにかく落ち着かなくて、そして……レインのことばかり考えてしまう。

「リファ」

声をかけられて振り返ると、タニアの姿があった。

「こんな時間にどうしたの? 寝ないの?」

「……眠れないから水浴びをしてた」

「なにか考え事?」

「うん」

膝を抱えるリファの隣にタニアが座る。

そうやって一緒に焚き火で温まりつつ、空を見上げた。

「綺麗な夜空ね。星が宝石みたいだわ」

「うん」

タニアに言われて、リファも空を見上げた。

視界を埋め尽くすほどの星。

色々な形の星が輝いていて、見る者の心を奪う。

「……」

「……」

二人は言葉もなく、しばし星空を眺めて……

「考え事っていうのは、レインのこと?」

ふと、タニアがそんな問いを投げかけた。

「……ん」

リファは頬を染めて頷いた。

その様子を見て、タニアは全てを理解する。

リファは、ようやく自分の想いを自覚したみたいだ。

きっかけはラウドネアの一件だろうが……

それ以前からリファはレインに好意を寄せていた。

タニアはそう考えている。

自分達が暮らす街を救ってもらい。

家族の仇を取る手助けをしてもらい。

そして、兄のように優しく温かく接してくれた。

家族以外の異性に向ける想いは、通常、愛となる。

本人は、レインのことを兄のように感じていたかもしれないが、それは錯覚。

ずっとずっと想い続けていたのだけど、しかし、それに気づかないのがリファという、とても不器用な少女なのだった。

「……ボク」

「ええ」

「タニアが言ってたみたいに、レインが好きみたい」

「そ」

そこで言葉が途切れる。

沈黙。

でも、嫌な感じはしない。

タニアは、あくまでもゆっくりと待つスタンスだ。

リファを急かすようなことはなく、考えをまとめる時間を与えている。

「タニアは怒らない?」

「え? なんで、あたしが怒るのよ」

「だって、タニアの方が先にレインを好きになったのに。後からボクが好きになって……」

「はぁ……」

やれやれ、とタニアはため息をこぼす。

「すでに付き合ってるとかならともかく、まあ、残念ながらそういうわけじゃないし。好きになる順番なんて気にしなくていいの」

「そうなの?」

「そうよ。第一、先に好きになった方が勝ちっていうのなら、あのお気楽極楽能天気猫が勝っているもの。好きな人が誰のものでもないなら、好きになっていいの。っていうか、誰かのものだとしても、好きになることは悪いことじゃないわ」

「そうなんだ」

リファは膝を抱えて、その間に頭を埋めた。

「でも……ボク、どうすればいいのかな?」

ドキドキして、顔が勝手に熱くなる。

それと同時に、胸がきゅーっと痛む。

レインを前にしたら、どうしていいかわからない。

でも、一緒にいたいと思う。

しかし、一緒にいると慌ててしまい、混乱して、パニックに陥ってしまう。

その繰り返し。

初めて抱いた恋心を処理することができず、リファは悩んでいた。

そんな彼女に寄り添い、タニアは優しく言う。

「想いを伝えてもいいし、様子を見てもいいんだけど……リファの場合、まずは自分の気持ちと向き合うことが大事みたいね」

「向き合う?」

リファは顔を上げてタニアを見る。

「その様子だと、うまく処理できていないでしょう?」

「うん」

「初めてなのかしら?」

「うん」

「なら、それで混乱しているのよ。まずは落ち着いて、自分の気持ちをしっかりと見て……そして、それを大事に育てていくといいんじゃないかしら?」

「……育てる……」

「勢いに任せて突っ走るよりは、まずは一度立ち止まり、自分や周りを見てみることは大事よ? まあ、あたしが言えたことじゃないけど……」

たはは、とタニアが苦笑した。

それから優しい顔になり、そっとリファの頭を撫でる。

「ん」

「がんばりなさい。あたしは応援するわ」

「タニアもレインのことが好きなのに?」

「確かにライバルだけどね。でも……」

にっこりと笑いつつ言う。

「あたし達、仲間でしょう?」

「……あ……」

「それに、リファは妹みたいなものだもの。ライバルだとしても、恋の相談くらい、いくらでも乗るわ」

「……タニア……」

こてんと、リファはタニアの肩に頭を乗せた。

そのまま甘えるように言う。

「ありがとう……お姉ちゃん」