作品タイトル不明
749話 滂沱
「……」
父さんと母さんが天国へ旅立った。
きちんとお別れを済ませることができたから、たぶん、心残りはないと思う。
天国で二人仲良くやると思う。
俺もいつか、旅立つことになるだろうけど……
今はまだ無理だ。
やらないといけないことがたくさんある。
「だから……それまで見守っていてほしい」
空を見上げた。
空は青く澄んでいて、雲一つない。
太陽が綺麗に輝いていて、父さんと母さん……レイチェルや村のみんなのこれからを示しているかのようだった。
「うわぁあああああんっ、レイイイイイィンッ!!!」
「えっ」
聞き覚えのある声がして、振り返るとカナデがこちらに駆けてきた。
カナデだけじゃない。
タニアやソラやルナ……みんながいた。
がしっ、という感じでカナデが抱きついてきて、みんながそれに続く。
「レイン、あんばごとになっでぇえええええ、わ、わらひ、どうびていいがわがらな、ひっく……うわぁあああああんっ!!!」
「えっと……」
カナデは号泣していた。
滝のように涙を流している。
他のみんなも泣いていた。
カナデほどではないけど、ぽろぽろと涙をこぼしている。
「もしかして……みんな、今の見ていた?」
「ごべんなざい、ぬずみぎぎずるつもりはなぐでぇ……」
いや、ごめん。
なんて言っているのかさっぱりわからない。
「落ち着いてくれ」
俺は苦笑しつつ、そっとカナデや他のみんなを引き離した。
それから順々にハンカチで涙を拭いていく。
「むう……なんだか、レインがやけに冷静なのだ」
「空元気……という感じはしませんね」
「だい……じょうぶ?」
俺がいないことを心配して、探して……
偶然、俺とレイチェル、父さんと母さんとのやりとりを見てしまった、というところか。
それで、自分のことのように悲しんで、涙を流してくれた。
こんな感想を抱くのは、ちょっとどうかもしれないけど……
嬉しかった。
みんなが俺のためにここまでしてくれるのは、ただただ嬉しい。
優しさや温かい想いが伝わってくる。
「ごめん、心配させたよな」
「うん、心配した」
「れ、レインさんになにかあったら、って思うと、ワタシ、あわわわっ」
「でも、大丈夫だから」
しっかりと、ハッキリと言う。
そんな俺の反応に、みんなは目を大きくして驚いた。
「ねえ……大丈夫なの? 無理をしているんじゃない?」
「レインさまのことですから、タニアさんの言うように、我慢をしている可能性はありますわね」
「レインの旦那、そういうところあるからなー」
「レイン、辛い? 僕、慰める?」
「アニキ、自分にできることがあれば、なんでも言ってくださいっす!」
次々と優しい言葉をかけられる。
それは心の薬だ。
みんなの言葉が心に染み渡り、傷ついたところを優しく癒やしてくれる。
父さんと母さんの言う通りだ。
俺は一人じゃない。
だから平気なんだ。
「本当に大丈夫だよ。無理はしていないし、空元気とか、そういうのでもないから」
「にゃー……でも、レイチェルの時は泣いてて……」
「うん、そうだな……すごく辛かった。父さんと母さんの時も、本当は辛かった」
「なら……」
「でもさ」
みんなを見る。
カナデ達の顔を見ているだけで、自然と元気が湧いてくる。
「俺は、一人じゃないから」
「「「……」」」
「こうして、みんながいてくれる。傍にいてくれる。だから……大丈夫だ。ありがとう、一緒にいてくれて」
「「「っ……!!!」」」
なぜか、みんなの方が泣きそうな顔になって、
「「「レインっ!!!」」」
「うわっ」
再び、一斉に抱きついてきた。
今度は支えることができず、そのまま地面に押し倒されてしまう。
「私、私……ずっとレインのことを支えるからね! ずっとずっと一緒だよ!?」
「あたしだって、レインのこと……もうっ、こんなこと言われたら、どうしていいかわからないじゃない!」
「ソラは大したことはできませんが、これからもレインの隣にいさせてください」
「うむ。我ら姉妹が、レインのことをいくらでも甘やかして、とろけさせてくれようぞ」
「わたし……一緒」
「ウチ、たくさんご奉仕するでー」
「ボクの血を吸う?」
「あわわわ、ワタシなんかでよければ、なにかさせていただけると!」
「僕とレイン、一緒!」
「ふふ、わたくしのことを置いていくことは許しませんわよ?」
「アニキのためにがんばるっす!」
「えっと……」
みんなの想いが、優しさが、温もりが……
たくさんたくさん伝わってきた。
悲しみとは別の感情で泣いてしまいそうになる。
でも、涙は我慢した。
父さんと母さんを心配させてしまうかもしれない。
レイチェルが安心して眠れないかもしれない。
だから、今は我慢だ。
「……父さん、母さん……レイチェル……村のみんな……」
小さくつぶやきながら、空を見る。
「……俺、がんばるよ。みんなと一緒に、前に進んでいくよ。だから……」
どうか、見守っていてください。