作品タイトル不明
742話 落ちる風
「っっっ……!!!?」
イリスとソラとルナの攻撃がまともに直撃した。
ゼクシードは悲鳴にならない悲鳴をあげて、地面に落ちる。
そこに飛び出したのがサクラと、人形形態のティナを頭に乗せたフィーニアだ。
「僕、殴る!」
サクラが両拳でゼクシードを殴る。
連打、連打、連打……
嵐のような猛攻を受けて、ゼクシードは退避することができず、防御に徹するしかない様子だ。
そこに、ティナの魔力弾とフィーニアの炎が追撃を加える。
「た、倒れてくらひゃい……!」
「あかんでー。そういう時は、いてこましたるぞわれぇ! って言うんや」
「い、いてこまし……?」
こんな時でも、ティナはいつもと変わらない。
でも、それが頼もしい。
「みんな!」
「ふふ。こちらは片付いたので、お手伝いにまいりましたわ」
イリスがふわりと、隣に舞い降りた。
多数の魔族と戦い、同時に村を守る。
苛烈な戦闘が行われたらしく、あちらこちらが傷ついている。
綺麗なドレスもボロボロだ。
でも、その顔には変わらぬ凛とした笑みが。
他のみんなもボロボロだけど、目は輝いている。
うん。
これで完璧だ。
「足止め、頼む!」
「「「了解!!!」」」
みんなが同時に動いた。
カナデとタニアとサクラは近接戦を挑み。
ソラとルナとイリスは遠距離で、ゼクシードの超速移動を許さない。
ニーナとティナとリファとフィーニアは援護。
そして……
「やるっす!」
トドメとばかりに、ライハが特大の雷撃をお見舞いする。
「ぐっ……!!!」
それでもゼクシードは倒れない。
倒れてたまるものかと歯を食いしばり、みんなの猛攻を跳ね除けて、翼を広げる。
「いいぞいいぞいいぞ! これこそが私が望んでいた戦いだ。己の命を賭けた、真の闘争だ! 今、私は輝いている!!!」
「戦闘狂め」
「なんとでも言うがいい。兵士は、戦場でこそ輝くものだ。だからこそ……最後の最後まで、この命、戦いで燃やしつくそう!!!」
ゼクシードは前かがみになり、超速移動の構えに入った。
俺も、カムイとクサナギを合体させて、サードフォームを作る。
「さあ、決着をつけようではないか!!!」
「ああ、終わりにしよう」
ゼクシードが超速移動に突入した。
その姿を目で追うことができず、ふっと消える。
同時に、俺はジンライを発動させた。
世界から色と音が消えた。
時間がゆっくりと流れる。
そんな状態でも、ゼクシードは俺以上の速度で動いていた。
なんとか視認できるものの、速い。
圧倒的な速度で俺に迫り、その剣を振り下ろそうとする。
でも……
「っ!?」
突然、ヤツの翼が一枚、根本から千切れた。
みんなの攻撃による負荷に耐えきれなかったのだろう。
それを待っていた。
ゼクシードの速度はガクンと落ちて、俺以下になる。
そのタイミングに合わせて、ヤツの懐に潜り込む。
膝を叩き込む。
くるっと回転しつつ、ゼクシードの顎を蹴り上げた。
そうして体勢が崩れたところで、カムイのトリガーを引く。
一回。
二回。
三回。
みんなの力が込められたカートリッジを、三回、連続で使う。
刀身がこれ以上ないほどに輝いて、力が暴れる。
それに指向性を持たせて……
「終わりだ!!!」
一気に叩き込んだ。
同時に時間が元に戻る。
「がっ……あぁ!!!?」
ゼクシードの右肩から左脇腹を刃が切り裂いた。
肉を裂いて骨を断つ。
確かな手応えが伝わってきた。
そして……風の四天王は大地に落ちた。
「……負けたか……」
四肢を放り出すようにしつつ、地面に倒れたゼクシードは小さな声でつぶやいた。
もう指先を動かす力も残っていないのだろう。
視線だけを動かしてこちらを見る。
「素晴らしい戦いだった、礼を言うぞ」
「そんなことで礼を言われてもな……」
「ふむ。やけに冷静だな? 私は、この村を滅ぼした。仇だ。憎くないのか?」
「……憎いさ」
魔族の過去を知った。
人間の業を知った。
それでも……
故郷を奪われたという怒りと憎しみは、そう簡単に消えてくれない。
魔族は全てを奪われたのに、俺は、なんてわがままなのだろう。
ただ……
「憎いけど……でも、憎しみで戦うのはダメだ。それは、同じ過ちを繰り返すことになるから」
「ならば、なんのために戦う?」
「それは、人によって違うだろうな。色々な理由があると思う。その中で俺は……大事な人達を守るためだ。みんなのためなら、仲間のためなら俺は命を賭けられるし……何度でも立ち上がり、剣を手に取る」
「……それもまた、素晴らしい生き方なのだろうな」
ゼクシードは小さく笑う。
それを合図にしたかのように、体がゆっくりと崩壊を始めた。
末端から崩れ、塵となっていく。
憎い仇のはずなのだけど、でも、不思議な寂しさがあった。
俺は、大事な人を守るため。
ゼクシードは、戦いの中で生を感じるため。
戦う理由はまったく違うけど、信念は感じられた。
だから、多少は共感してしまったのかもしれない。
「最後に一つ、いいか?」
「なんだ?」
「改めて名前を聞かせてほしい。私を倒した強者のことを教えてほしい」
「レイン・シュラウド」
「……良い名前だな」
そうつぶやいて、ゼクシードは小さく笑う。
……それが彼の最期だった。