作品タイトル不明
738話 存在意義
物心ついた頃、ゼクシードは戦場にいた。
人間との戦い。
あるいは、同族との戦い。
親が傭兵だったため、ありとあらゆる戦場を移動して……
戦いが日常となり、その中で過ごした。
故に、それは必然だったのだろう。
ゼクシードは、自然と戦う力と知識を身に着けた。
両親と同じように傭兵になって、数多もの戦場を駆け抜けることになった。
戦い。
戦い。
戦い。
血で血を洗うような日がずっと続いた。
安息の時間なんてない。
戦いのない日なんてない。
毎日が闘争だ。
ただ、ゼクシードは自分を不幸と思うことはなかった。
強くなることは好きだ。
己の成長をこれ以上ないほどに実感できる。
それと、戦いを繰り返す中で周囲から認められて、重宝されるようになるのも助かる。
最初は、ただの傭兵。
しかし戦いを繰り返す中で、両親の跡を継いで、傭兵団の団長に。
さらに、魔族の上層部に目が止まり、大きな権限を与えられた部隊へ成長して……
ついには、四天王の一角に登りつめた。
ただの傭兵から四天王へ。
誰もが驚くような出世が。
そして、それを成し遂げてしまうだけの力がゼクシードにはあった。
権力。
地位。
富。
彼は全てを手に入れたのだけど……
しかし、満たされてはいない。
逆に飢えていた。
「つまらないな」
ゼクシードにとって、戦いは当たり前の日常だ。
常に隣にあって、空気のようにそこに存在していた。
しかし、四天王になったことで戦いから遠ざかることになった。
自身が前線へ赴くこともあるが……
その機会は少なく、10日に一度あればいい方だ。
つまらない。
つまらない。
つまらない。
初めて得た平穏を感じて、ゼクシードはそんな感想を抱いた。
戦うことはなくて、何事もなく一日が過ぎていく。
なんて退屈なのだろう。
それに比べて、戦場はとても楽しい。
命を賭ける高揚感。
逆に、命を奪われるかもしれないという緊張感。
それらは人生のスパイスとなり、ゼクシードの人生を輝かせていた。
「闘争こそ私の望みだ」
戦場で育ったからこそ、戦場で生きることしかできない。
それは悲しいことなのかもしれないが……
ゼクシードは不幸を感じていない。
彼にとって、闘争は当たり前のことなのだ。
弱者を潰す任務はつまらない。
それは、ただの作業だ。
そんなものよりも、強者とぶつかる方が楽しい。
その瞬間は、最高に命が輝いている。
ギリギリの闘争をすることで、自分はここにいるぞ、と世界に示しているような気がしたのだ。
そうすることで、兵士としての存在意義を示していたのだ。
心が躍るような闘争を。
血が舞い上がるような闘争を。
剣戟が響き続ける闘争を。
「そうだ」
風の四天王ゼクシードは……
「俺は……なによりも誰よりも闘争を望む」
戦いの中でしか生きる意味を見いだせない、とても不器用な男だった。