作品タイトル不明
739話 疾風
ゼクシードから放たれているプレッシャーが格段に増した。
息をするのも苦しいくらいで、ビリビリと肌が震える。
今までは様子見。
そして……
これからは本気、ということか。
「期待に応えてくれ」
ゼクシードは再び剣を構えて……
「……え?」
そして、消えた。
「にゃ、にゃんですと!?」
「あいつ、いったいどこに……?」
「逃げた?」
リファが小首を傾げるけど、それはないと断言できる。
少し言葉を交わしただけだけど、意味もなく退くようなヤツじゃない。
狙った獲物は絶対に逃さない。
狩人だ。
だからこそ、これはなにか手品の種があるはずで……
「アニキ!」
「うわっ」
突然、ライハが抱きついてきた。
勢いに押されて、よろめいてしまう。
「あーっ、なにしてるの!?」
「待ちなさい、カナデ。これは……」
一瞬遅れて、ザァッ! とさきほどまで立っていた場所をなにかが通り過ぎた。
いや、通り過ぎるだけじゃない。
地面に深い裂傷が刻まれている。
石が粉々に砕けているところを見ると、相当な威力であることがうかがえる。
「これは、もしかして……」
「アニキ、やばいっす!」
「ああ、今、理解した」
ゼクシードは逃げたわけじゃない。
ただ単に……
「ヤツは……視認できないほどの速度で動き回っている」
速く、速く、速く。
ひたすらにスピードを重ねて飛ぶことで、目で追いかけることができないほどの速度を生み出している。
そうした中で攻撃を繰り出してきているのだろう。
「ウソ!? そんなバカなこと、ありえるの?」
「わ、私にも見えないんだけど……あ、ううん」
カナデはじっと目を凝らす。
「なんか、時折、ちらっと影のようなものが……うにゃー、追いきれない!」
「それがゼクシードなんだろうな」
風よりも速く。
音に近い速度で。
これがゼクシードの本気、というわけか。
風の四天王とはよく言ったものだ。
「うー……うにゃ!?」
身構えるカナデが、急に吹き飛ばされた。
数メートルを横に飛んで……
途中でくるくると回転して着地する。
よかった、深手というわけじゃなさそうだ。
「あんた、攻撃を受ける瞬間、ガードしてたわよね? どうやって反応したの?」
「ただの勘だよ」
「アホの子にできるという、アレね……あたしには無理そうだわ」
「なんか私の扱いがひどい!?」
「いつものこと」
こんな時でも、みんなはマイペースだ。
おかげで余裕を失わないで済む。
たぶん、それを狙ってやって……いや。
ただの天然のような気もするな。
「アニキ! これ、けっこうやばいっす」
「にゃー、連続で攻撃は来ないみたいだけど……」
「いつまで防ぎ続けられるか」
「反撃ができない」
「くっ……!」
敵を視認することができない。
攻撃の予兆はほぼほぼなくて、勘で避けるか防ぐしかない。
今は幸運が続いているようなもので、いつまでも保つことはない。
対処法はいくつかある。
ソラやルナなどに頼んで、広範囲を爆撃してもらう。
見えないのなら、空間ごと叩き潰せばいいのだけど……
この場合、村を巻き込むことになってしまう。
村のみんなはすでに死んでいるはずなのだけど……
だからといって、気にしないなんて無理だ。
あるいは、ジンライで対抗する。
あの技ならゼクシードの超加速に追いつくことができるはずだ。
ただ……
発動時間は、もって十秒。
連続発動は不可能。
タイミングを間違えるとアウトだ。
「……どれもダメだな」
もっと安全で。
もっと確実な方法が必要だ。
どうする? どうすればいい?