作品タイトル不明
736話 ゼクシードの本気
「……情けない者が多いな。ああも翻弄されてしまうとは」
ソラ達の戦いを見て、ゼクシードはため息をこぼした。
一方で、俺は笑みを浮かべる。
さすが、みんなだ。
大丈夫かな? と、ちょっと心配していたのだけど……
余計なお世話だったらしい。
俺は、俺の戦いに集中しよう。
「あんた達は強いさ」
「ふむ」
「ただ……みんなの方がさらに強い。それだけの話だ」
「なるほど、わかりやすい話だな」
ゼクシードが笑う。
力こそが絶対の真理。
そう考えているらしく、俺の答えに満足しているようだ。
「では、我々も始めるとしようか。どちらが強者か、どちらが弱者か……今、決めようではないか」
「……その前に、一つだけ質問をいいか?」
「なんだ?」
「昔、この村を襲ったのはお前か?」
「……」
しばらくの沈黙の後、
「そうだ」
ゼクシードは小さく頷いた。
「この村を滅ぼせ。そういう命令を受けたのでな。多少、戦える者はいたが……私の敵となる強者はいなかった。つまらない任務だったな」
「……そうか」
俺もまた、小さく頷いた。
そして……クサナギを構える。
「あんたを倒す理由が一つ増えた」
「やる気になるのは良いことだ」
ゼクシードがニヤリと笑い、俺も唇の端を吊り上げる。
そして……
「「っ!!!」」
ほぼ同時に地面を蹴る。
急加速。
互いに正面から激突するように、それぞれの得物を振る。
ギィンッ!
刃と刃が交差して、甲高い音が響いた。
空気が震えて、衝撃が散る。
「おおおおおぉっ!」
「オオオオオォッ!」
刃を叩き込んで、弾いて、撃ち、落として、薙ぐ。
それの繰り返しで、嵐のごとく演武のごとく切り結ぶ。
一撃一撃がとんでもなく重い。
それでいて速い。
しかし、それ以上に脅威なのは『技』だ。
ヤツの剣はとても鋭い。
俺にはないキレがあって、巧みにこちらの隙を突いて、死角を狙ってくる。
全て『技』がなせるもの。
悔しいけど、剣技はヤツの方が上だ。
剣を専門としているものとそうでない者……その差がハッキリと浮かび出ていた。
でも……
「うにゃー……にゃん!!!」
「あたしらを忘れないでもらいたいわねっ!」
俺は一人じゃない。
俺の死角をカバーするかのように、カナデとタニアが飛び出した。
右と左から……ゼクシードを挟むように突撃をして、それぞれ拳を叩きつける。
「にゃ!?」
二人の拳は翼によって防がれた。
空を飛ぶためのものではなくて、盾としても機能するみたいだ。
芸が細かい。
「穿て、ブラッドシュート」
俺は、一歩横に動いて……
その後ろにいたリファが、血で生成した弾丸を放つ。
「ほう」
横殴りの嵐のような猛攻がゼクシードを襲うが、ヤツは余裕を消さない。
むしろ楽しそうにしていた。
翼を勢いよく開いて、その風圧でカナデとタニアを吹き飛ばす。
それと同時に空に飛んで、リファの攻撃を避けた。
一つ一つの動きにまったく無駄がない。
数手先まで考えているようだ。
……でも、それはこちらも同じ。
「やるっす!」
「なっ」
ゼクシードの真下にライハが回り込んでいた。
俺達がヤツの気を引いて……
その間に、誰かがヤツに接近して、痛い一撃を与える。
そんな即興の作戦。
打ち合わせはしていないし、俺が勝手に思い描いていたこと。
でも、みんなはそれに応えてくれた。
「これが自分の武器っす!」
ライハは強く叫んで、以前そうしたように影を操る。
ただ、今度は影をぶつけるわけじゃない。
自らの体に影をまとわせて、翼と尻尾を大きくしてみせた。
「でりゃあああああっ!」
突撃。
身体能力は変わらない。
ただ、影をまとう翼と尻尾が武器となっていた。
それぞれが意思を持っているかのように独立して動く。
翼は剣のように踊り、鋭い刃を叩きつける。
尻尾は槍のように駆け抜けて、鋭い矛先で貫こうとする。
ゼクシードの翼に傷がつく。
小さなものだけど、確かにダメージを与えることができた。
「ぐっ、これは……!?」
「ふっふっふ。自分の武器は、ちょっと凶暴っすよ?」
「小賢しい真似を!」
ゼクシードは怒りに吠えて、四枚の翼を大きく広げた。
そして、風のごとく突撃を開始する。