作品タイトル不明
735話 四天王、再戦
翌日。
俺達は村を出て、近くの平原に移動した。
見晴らしの良い場所で、身を隠すようなところはない。
村を離れることに多少の不安はあったものの……
あの魔族は戦いを楽しんでいるようだった。
村を滅ぼすにしても、まず最初に俺達と戦うことを選ぶだろう。
……その予想は正しく、ほどなくしてゼクシードと、その部下である魔族達が姿を見せた。
「逃げずにいたこと、感謝するぞ」
「なんで、あんたが感謝するんだ?」
「雑魚を狩るのはつまらないからな。お前達のような強者と戦う……それこそが私の喜び」
戦闘狂っていうやつか?
アルテラ並に厄介な性格をしているな。
「レイチェルはどこだ? 無事なんだろうな?」
「心配するな。あの娘なら、村の近くで解放しておいた」
「……ずいぶんと紳士的だな?」
「罠を疑っているか? 安心しろ。邪魔をされたくないだけだ。故に、目的を果たした今、さっさと解放しておいた……それだけだ」
嘘は言っていないように見えた。
ゼクシードは、なによりも戦うことを第一に考えているのだろう。
その障害となりそうなものは徹底的に排除する。
そして、その後はまるで関心を示さない。
まったく……
四天王っていうのは、どいつもこいつも性癖が歪んでいるのだろうか?
「さて……時間は与えてやった。これで昨日と同じようなら、貴様と戦う価値はない。すぐに殺してやろう。しかし、昨日と違うというのなら……思う存分に戦いを楽しもうではないか」
「その前に……」
ゼクシードの様子を見る限り、これからする話は無駄かもしれない。
でも、口にせずにはいられなかった。
「一応、聞いておきたいが……戦う以外の方法はないか?」
「なんだと?」
「戦うための戦いなんて、俺はしたくない。できれば話し合い、互いのことを理解して、分かり合いたいと思う。それは……ダメか?」
「……おもしろい人間だ」
ゼクシードはニヤリと笑う。
ただ、その笑みはすぐに消えた。
圧倒的な闘気をまとう。
「私は、私のために戦うのみ。今更、腑抜けたことを言うな」
「……わかった」
残念だけど……でも、こちらも覚悟が決まった。
魔族の事情を知った今、できることなら和解をしたいと思う。
それが無理だとしても、こちらから刃を向けることはしたくない。
でも……
俺の大事なものを傷つけるというのなら。
仲間に害を成すというのなら。
「俺は……戦う!」
クサナギを構える。
みんなも、それぞれ戦闘体勢に移行する。
「いい闘気だ。覚悟は決まったようだな。さあ、私を楽しませてみせろ!」
「俺は、お前を楽しませるつもりなんてない!」
そして、戦闘が開始された。
――――――――――
「「クラスタートルネード!!」」
誰よりも最初に行動したのは、ソラとルナだった。
竜巻を生み出す魔法が炸裂して、ゼクシードと他の魔族達を分断する。
「あなた達の相手は……」
「この我らと、そして愉快な仲間達なのだ!」
「その呼び名、やめてくれません?」
楽しそうに言い放つルナに、イリスは眉をしかめてみせた。
ゼクシードの部下である魔族達と対峙するのは、ソラ、ルナ、イリス。
ニーナ、ティナ、フィーニア、サクラ。
計七人だ。
対する魔族側は、昨日より数が増えていて、五十を超えている。
普通に考えると絶望的な状況だ。
魔族一人で街が一つ滅びる。
それが五十。
常人なら逃げ出すのが当たり前。
歴戦の戦士でも絶望してしまうだろう。
だがしかし。
ここにいる彼女達は数多の修羅場をくぐり抜けてきて……
そして、互いを信頼している。
自分達が力を合わせれば、こんな敵、なんてことはない。
絶対に勝てる。
そうやって心の底から信じて、それぞれ力を行使する。
「来たれ、嘆きの氷弾」
イリスが無数の氷の刃を打ち出した。
それは嵐のごとく魔族達に襲いかかる。
「「ドラグーンハウリング!!」」
「分身魔球や!」
ソラとルナ、ティナの追撃も加わる。
力が荒れ狂い、魔族達を飲み込むのだけど……
「ふんっ。最強種といえど、この程度か。がっかりだな」
「その程度で、ゼクシードさま直属の親衛隊を倒せると思うなよ?」
魔族達は無傷だった。
並の魔物なら一瞬で消滅してしまうような攻撃をまともに受けたのだけど、しかし、平然と立っている。
耐久力が並外れている。
それと、直前に攻撃を防ぐ結界を展開したのだろう。
それくらいできて当然。
彼らは魔族の中のエリートなのだから。
「今度は俺達の番だな」
「簡単に倒れてくれるなよ? 俺達も戦いを少しは楽しみ……ん?」
ふと、魔族達は気がついた。
七人いたはずなのに、二人、足りない。
「レインの敵、倒す!」
突然、魔族達の真上からサクラが降ってきた。
しなやかに着地すると、その場で竜巻のように激しく立ち回り……
三人の魔族を殴り、蹴り、極め飛ばした。
「ご、ごめんなひゃいっ!?」
続けてフィーニアが降ってきて、背中から炎の翼を生やす。
再生ではなくて破壊の炎。
それは天高く舞い上がり、炎の柱となって魔族達を飲み込む。
「なっ……!?」
「ば、ばかな……」
サクラの打撃をまともにうけて、フィーニアの炎に食らいつかれて……
逃げ遅れた魔族が二人、ダウンした。
まだ息はあるものの、立ち上がることはできない様子だった。
「僕、勝った!」
「サクラちゃん、す、すごいでしゅ! あと、に、ニーナさんもありがとうございまひゅ!」
ソラ達が派手な攻撃で敵の目を引いている間に、ニーナの能力でサクラとフィーニアを敵陣に送る。
そこで最高の不意打ちをかます……というのが、彼女達の作戦だった。
事前の打ち合わせはない。
みんなならこうするだろうな……と、なんとなく考えた結果の行動だ。
ただ強いだけじゃない。
最強種ということはあまり関係ない。
この絆こそが彼女達の力なのだった。