軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

731話 拍子抜け

「さあ、いくぞ」

「っ……!?」

物思いに耽っている間にゼクシードが動いた。

四枚の翼を大きく広げると、その全てを同時に動かした。

羽ばたいて、その加速を利用して突撃する。

「お前の力を見せてみろ!!!」

「くっ!?」

速い。

文字通り一瞬で間合いを詰められてしまう。

加速の勢いを剣に乗せて、ゼクシードは巨大な剣を横に振る。

直撃したら、胴体が上下に分かれてしまうだろう。

「この!」

防御を講じている時間はない。

身を低くして、一撃目をやり過ごした。

ただ、それで安心はできない。

ゼクシードの剣は意思を持っているかのように、急激に角度を変えて、再び襲いかかってきた。

今度は斜め上から。

叩き潰すような勢いで刃が落ちてくる。

「物質創造!」

片手を地面について、大地を隆起させて盾にした。

それがどうしたと言うかのように、ゼクシードの剣は盾を一瞬で砕く。

ただ、わずかに威力が落ちる。

そのタイミングでクサナギを抜いて、刃を重ねた。

「奇妙な力を使うな。なんだ、それは?」

「素直に教えるわけないだろう!」

「ならば構わん。今は、戦いを楽しもうではないか!」

「くっ」

ゼクシードは連続で剣を振る。

右から左へ。

上から下、そして再び上に跳ね上がり、斜めに落ちる。

変幻自在という言葉がふさわしくて、ありとあらゆる角度から刃が襲ってきた。

強い。

剣の腕はアリオスよりも上だ。

それでいて、たぶん、まだ本気を出していないだろう。

それなのに、俺は翻弄されてしまっている。

防御に徹するしかない状況だ。

力量差があるというわけじゃなくて、これは……

「来たれ、嘆きの氷弾」

「ブリザードスティンガー!」

「アイシクルランス!」

みんなの声が聞こえたところで、俺は横に大きく跳んだ。

直後、イリスとソラとルナが放った魔法が飛んできて、ゼクシードに食らいつく。

氷が巨体を覆い尽くして、氷像ができあがる。

ただ……

「児戯だな」

氷の牢獄はすぐに破られてしまい、砕け散る。

超級魔法ではないとはいえ、天族や精霊族が放った魔法だ。

それなのに、一瞬でレジストしてしまうなんて……

しかも、魔力で解除したわけではなくて、単なる力技。

とんでもない身体能力だ。

こいつはもしかしたら、カナデと同じパワーファイターなのかもしれない。

「そうか……なるほど」

ゼクシードは戦闘を一時中断して、なにかを見定めるようにこちらを見る。

「もしかして、お前がレイン・シュラウドか」

「だとしたら?」

「拍子抜けだな」

「……」

「アルテラを滅ぼして、コピーのギガブランドも撃破した。リースも警戒する相手……相当な強敵と覚悟していたが、この程度か」

そう言うゼクシードの目には、確かな失望があった。

この程度か……と、落胆していた。

「あら。多少、刃を交わしたくらいでレインさまの全てを知ったとでも?」

「レインが本気を出せば、お前なんてイチコロなのだ!」

「私も本気を出していない。今のは、ただの遊びのようなものだ」

ハッタリではないだろう。

アルテラが炎を自由自在に操ったように……

風の四天王を名乗るのなら、ゼクシードも特殊な能力を使えるはずだ。

でも、その力は欠片も見せていない。

能力をまったく使うことなく、ただの地力で俺達を追いつめていた。

ゼクシードが本気になれば……

正直、あまり想像したくない。

「なによりもつまらないのは、貴様の剣に迷いがあることだ」

「……っ……」

見抜かれている?

「なにを考えているか知らないが、戦いの最中に余計なことを考えていたら死ぬぞ?」

「それは……」

「まあ、私は貴様を殺しに来たわけだから、死んでくれるのはありがたい。ただ、つまらない戦いはごめんだ。もっと力を見せろ。私を楽しませてみせろ」

なんて厄介な性格をしているんだ、こいつは。

「俺は……」

わざわざ指摘されなくても、迷いを抱えていることは理解している。

魔族は本当に敵なのか?

戦わないといけない存在なのか?

わかり合うことはできないのか?

そんなことばかり考えてしまい、どうしても戦闘に集中することができない。

俺は、どうすれば……

「ふん……リースの言葉を信じた私がバカだった。すぐに終わらせてやろう」

ゼクシードは剣を構えて……

「レインくんをいじめるなー!!!」

そんな声と共に、小さな影が割り込んできた。