作品タイトル不明
730話 戦うことこそが……
「……素晴らしい」
ゼクシードはゆっくり立ち上がると、そう呟いた。
ダメージを受けている様子ではあるが、深刻なものではないようだ。
ニヤリと笑い、剣をもう一度構える。
「さすが最強種だ。その力、その魔力……私が戦うにふさわしい相手だ。改めて名乗ろう。私は、風の四天王ゼクシード……良い戦いをしよう」
「な、なんですか、この魔族は……?」
「どうやら、強者と戦うことをなによりの喜びとする方みたいですわね」
「むう……そのような面倒な相手はいらないぞ。面倒なのは、カナデだけで十分なのだ」
「どういうことー!?」という声がどこからともなく聞こえてきた……ような気がした。
「つまらない任務だと思っていたが、このような強敵と戦えるとは……リースに感謝しなければならないな」
「あら? 今、リースさんとおっしゃいまして?」
「さてな。聞きたいことがあるのなら、力を示してみせろ」
「そうしましょう。ただ……力を示すのはわたくしではありませんが」
「なに?」
ヒュンッ!
怪訝そうな顔を作るゼクシードに向けて、どこからともなくワイヤーが飛んできた。
それは意思を持つ蛇のように絡みついて、ゼクシードの動きを封じる。
「ブラッドシュート」
「大回転魔球や!」
血の弾丸と魔力の弾丸が雨あられと降り注ぐ。
「ぐっ」
一撃一撃の威力は小さい。
しかし、塵も積もれば山となる。
全身に攻撃を浴びたゼクシードは苦痛のうめき声を漏らした。
「この攻撃は……」
「ふふん、我らがご主人さまの帰還なのだ」
ルナが得意顔でそう言って……
それに合わせるかのように、とある青年が姿を見せた。
「ごめん、遅れた!」
「「「レイン!」」」
――――――――――
急いでダンジョンを出たけれど、すでに地上は戦場と化していた。
無数の魔物と魔族が姿を見せて、好き勝手に暴れている。
村のあちらこちらで火の手が上がり、悲鳴が聞こえてくる。
「くっ……!」
あの日の惨劇を繰り返しているかのような光景だ。
自然と拳を強く握ってしまう。
でも……ダメだ。
怒りに流されたらダメだ。
今は、とにかく状況を把握することを優先しないと。
目の前の魔族に警戒しつつ、周囲に視線を走らせる。
少し考えて答えを出す。
「……ニーナとリファとライハは、フィーニアとサクラの援護を頼む。村のみんなを……頼む」
「ん」
「任せて」
「アニキのためにがんばるっす!」
ニーナ達はすぐに動いてくれた。
以心伝心、というやつだな。
「カナデとタニアは、俺と一緒に……コイツの相手を頼む」
「うん、任せて!」
「あたしにかかれば、どんなヤツも消し炭よ!」
二人はドヤ顔を見せるものの、
「二人共、気をつけてください。一筋縄ではいかない相手です」
「そいつは、四天王なのだ。風のゼクシードとか、そう名乗っていたのだ」
「それと……」
イリスは迷う素振りを見せつつ、言葉を続ける。
「その方が、レインさまの故郷を滅ぼした……と」
「……っ……」
ざわりと心が揺れた。
こいつが……
四天王がラウドネアを?
「……」
あの日の光景が脳裏に蘇る。
村が燃えた。
いつも優しい笑顔を見せてくれた人達が、物言わぬ骸と化していた。
使役されていた動物達も、皆、死んでいた。
この世の終わりのような光景の中、俺は、必死に生き残りを探した。
でも……
やっとの思いで見つけた幼馴染は、すでに息絶えていた。
涙の跡があって。
とても苦しそうな顔をしていた。
父さんは死んでいたけど、母さんはまだ生きていた。
でも、子供が見てもわかるくらいの致命傷で……
最後まで俺のことを案じて息を引き取った。
「っ……!!!」
惨劇がフラッシュバックする。
息が荒くなる。
心臓が激しく鳴る。
熱い。
熱い。
熱い。
体も心も、なにもかもが熱い。
この魔族がラウドネアを滅ぼした。
村のみんなを……レイチェルを、父さんを、母さんを奪った。
こいつが……!!!
「……でも」
怒りが募る一方で、どこか冷静な俺もいた。
俺は、魔族によって故郷を奪われた。
ただ……過去のラインハルトの言葉を信じるのなら、それは魔族も同じだ。
人間が魔族の全てを奪った。
だとしたら、これは正当な復讐なのではないか?
過去の人間の行いとはいえ、その行いがあるからこそ今がある。
なら、罪は継がれていくべきだ。
そもそも、魔族は倒すべき敵なのか?
非は俺達人間にある。
なら、どうにかして和解を目指すことが一番の道では?
戦うことを繰り返していたら、なにも生まれることはない。
俺は……