作品タイトル不明
728話 風の四天王
「そこのあなた達は、見ているだけなのですか? わたくしとしては、さっさと帰っていただきたいのですが……だって、雑魚なのでつまらないですし」
イリスはにっこりと笑い、これ以上ないほどに挑発してみせた。
「貴様!」
「我らを侮辱するか!?」
その言葉は看過できないと、複数の魔族がイリスに向かって吠えた。
期待通りの反応。
そう言うかのように、イリスは満足そうに笑う。
そして、ゆっくりと横に移動して……
「イクシオンブラスト!」
「イフリートディザスター!」
「「「!?!?!?」」」
イリスの翼に隠れて、こっそりと魔力を練り上げていたソラとルナが、不意打ちの超級魔法を叩き込んだ。
雷と炎が荒れ狂い、三人の魔族を飲み込む。
「がっ!?」
「こ、この程度で……!!!」
魔族達は魔力で盾を展開して、必死に耐えていた。
超級魔法を叩き込まれたわけだけど、一発で倒れてしまうほどやわではない。
不意打ちを食らった時はひやりとしたが、ある程度のダメージを受けるだけで済むだろう。
攻撃に耐えた後は、反撃に出よう。
二度とふざけたセリフを口にできないように教育してやろう。
そんなことを考えていた魔族達だったけれど……
「あら、わたくしがぼーっと眺めていると思いまして?」
「「「っ!?」」」
魔族の考えていることを読んだかのように、イリスが笑う。
にっこりと笑う。
……とても邪悪な笑みだった。
背中に小悪魔の羽と尻尾が見えるかのようだった。
「打ち砕け、輝きの円環」
ソラとルナの魔法に被せるかのように、イリスが二度目の極大召喚魔法を放つ。
雷と炎。
そして、魔族達。
光がそれらを食らう。
全てを白に塗りつぶしていく。
そして……
「お、おう……」
「すさまじい威力ですね」
魔族は塵となり、消滅していた。
「ふぅ……オフィーリア姉さまの魔法を真似てみましたが、これ、疲れますわね。でも……ふふ、お気に召してもらいまして?」
不敵に笑うイリスは、まさに小悪魔だった。
「ぐっ……よくも仲間を!」
「許せん!」
他の魔族達が憤り、
「止まれ」
しかし、四枚の翼を持つ魔族が彼らを制止した。
「私がやる」
「し、しかし、ゼクシードさまが出るなんて……」
「聞こえなかったのか?」
「い、いえ……!」
「お前達は地上班の援護に回れ」
そう言い放ち、四枚の翼を持つ魔族はイリス達の前に降り立った。
「あなたが大将と考えてよろしいのでしょうか?」
「構わん」
「ふふ。わざわざ、わたくし達の相手をしていただけるなんて、嬉しいですわ」
「ふふん。この我が木端微塵にしてやるのだ!」
「ルナ。戦いの前にそんなことを言うと、悪いフラグになりますよ」
強烈なプレッシャーを放つ魔族を前にしても、ルナはいつも通りだった。
そんな彼女のおかげで、ソラとイリスも笑顔でいることができる。
理想的な関係を目にして、魔族は小さく笑う。
「まずは、敵ながら見事と言っておこう」
「あら。褒めていただけるなんて予想外でしたわ」
「お前達の力と心に敬意を表して、名乗ろう。私は、ゼクシード……四天王が一人、風のゼクシードだ」
「「「……」」」
イリス達の目が険しくなる。
強烈なプレッシャーを放っているため、それなりの力を持つ存在だと予想はしていた。
しかし、四天王が現れるとは……
三人は、それぞれ油断なく構える。
「なぜ、四天王がこのようなところにいるのですか?」
「おかしいのだ。こんなところまで出張するわけがないのだ」
「この村を潰すためだ」
ソラとルナの刺すように鋭い視線を受けても、ゼクシードはまったく怯まない。
淡々と答える。
「昔、確かに潰したはずなのだが……なぜか蘇ったという報告を受けてな。その確認をするため。そして、事実なら改めて潰すため……というわけだ」
「では、あなたがレインの故郷を……!」
ソラ達の目がさらに険しくなる。
レインの故郷が滅んだ話は聞いている。
魔物ではなくて、おそらく魔族が関与していることも予想していた。
「……今の話、本当なのですか?」
「どの部分だ?」
「かつて、あなたがこの村を滅ぼした、という話です」
「事実だ」
「うむ、実に良い話を教えてもらった。感謝するのだ」
感謝すると言いつつ、ルナは怒りの表情でゼクシードを睨みつける。
ソラも怒気を……いや。
それを超えて殺気を放つ。
目の前にいる魔族が、世界で一番愛しい人の故郷を滅ぼした。
そのことで、主がどれだけ悲しみ、心を痛めたか。
「レインに代わり、あなたを叩き潰さないといけませんね」
「潰すのだ」
「えっと……ソラさん? ルナさん? ちょっと、わたくしも引いてしまいそうなほど怖いのですが……」
普段、真面目な人ほど怒らせた時は怖い。
普段、おちゃらけている人ほど、いざという時は怖い。
そんな話を体現するかのように、ソラとルナは怒っていた。