作品タイトル不明
727話 二度目の襲撃
昼だというのに暗い。
空を見上げると、翼を持つ魔物の群れで埋め尽くされていた。
それだけではない。
多種多様の魔物がぐるりと村を囲んでいる。
ネズミ一匹逃さないという勢いだ。
それらの奥に、いくらかの魔族が見えた。
その中でも一際存在感を放っているのが、翼を持つ魔族だ。
天族のものと似た翼だけど、しかし、その大きさはまるで違う。
己の体よりも大きく、威圧感を兼ね備えていた。
四枚の翼。
白と黒で、左右で色が異なっている。
翼を持つ魔族は腕を組み、滞空する。
村を見下ろして……
「行け」
一言、短く命令した。
合わせて、一斉に魔物が突撃する。
お預けをくらっていた犬のように、人間という名の餌に飛びかかる。
……ただ、その蛮行を許さない者がいた。
「「ドラグーンハウリング!!」」
ソラとルナの放つ魔法が、村の入り口に迫る魔物をまとめて吹き飛ばした。
十数匹の魔物が吹き飛ばされて、空に打ち上げられる。
とんでもない光景に他の魔物達は、一瞬、足を止めた。
「グルァッ!」
その隙を見逃すことなく、獣型に戻ったサクラが突撃した。
突進して、踏みつけて、蹴り飛ばして、噛みついて……
全身を使い、勢いよく暴れ回る。
闘牛よりもパワーがあり、勢いもある。
サクラを止めることは不可能で、次々と魔物が魔石に変わっていく。
「ウチは、乗りこなしてみせるでー!」
そんなサクラの頭の上にティナが乗っていた。
暴れ回るサクラに乗っているのだけど、振り落とされることはない。
しっかりと乗りこなしていて、それでいて、魔力で生成した球をビシバシと投げる。
サクラの上に乗っているため、コントロールはメチャクチャだ。
光の球は明後日の方向へ飛ぶけれど……
「そこ、右や!」
そんなティナの声に反応して、光の球が円を描いて右に曲がる。
そのまま魔物の頭部に直撃した。
「一歩たりとも村には入れへんよ!」
「オンッ!」
ティナとサクラの迫力に押され、魔物達は再び足を止めてしまう。
……ただ、空を飛ぶ魔物は別だ。
地上がダメなら空から攻めればいい。
空を埋め尽くすほどの魔物の群れが一斉に急降下した。
この数に抗える者なんていない。
魔物達はそう思っていたのだけど……
「こ、ここから先は、だ、ダメでしゅっ!」
フィーニアが炎の翼を広げた。
ゴォッ! という音と共に、紅蓮の翼が大きく大きく展開される。
それは瞬く間に村を覆い、結界となる。
「グギャ!?」
「ガアアア!?」
フィーニアの炎の翼は、大事な人を優しく包み込む。
しかし、敵対する者は容赦なく焼く。
急降下した魔物達は停止することができず、炎の翼に飛び込んでしまう。
超高熱の炎に焼かれ、炭となり……そして、魔石に。
誰もフィーニアの結界を突破することはできない。
攻防一体の必殺技だ。
「ふふ。では、わたくしも……」
イリスは微笑み、フィーニアに目で合図を送る。
フィーニアは、あわあわと慌てつつも、一部、炎の翼による結界を解除した。
「ギギッ!」
「ギャウッ!!!」
フィーニアの力が切れたと勘違いしたのか、魔物達が一斉に穴に殺到した。
そんな魔物達を見て、イリスはやれやれとため息をこぼす。
それから、妖艶に笑う。
「ふふ、お馬鹿さん♪」
イリスは魔力を練り上げて、
「来たれ、終焉の白撃」
全力全開の一撃を叩き込む。
大地から空へ光が放たれる。
巨大な光の柱が顕現したかのようで、それに魔物達が飲み込まれていく。
光の中で魔物達が存在することは許されない。
その体は一瞬で崩壊して無に帰る。
「ちょろい、ですわね」
百に近い魔物の群れを一撃で消し飛ばしたイリスは、いたずらっ子のように笑うのだった。